123話 理想への第1歩
カインがリーンとの話を終え、部屋へとやってきた。とりあえず住居兼拠点として魔王城に案内することにする。
「あなたとは脳内で魔力の回路を繋いでるから離れていてもそれを通じて話すことができるから、何か用があったらそれで言ってもらえたらすぐに動くから。あと、転移の魔法陣は自由に使ってもらって構わないけれど、当分はココと魔王城の魔法陣しか使用しないでね。とりあえず好きな部屋を使ってもらって構わないし、欲しいものがあれば私の部屋に転移して町で買ってもらってもいいから。しばらくは肉体が変わったのを自覚するのとなれるのが大変だと思うけど頑張ってね。」
魔王城の中を案内しながらそんなふうに色々と説明して行く。そしてアンチデューンの部屋の前にきた。
「そしてここが私の1人目の配下アンチデューンの部屋よ。今は進化のための眠りについているわ。後4、5日で一回目覚めると思うけどまた眠りにつくと思うからそっとしてあげてちょうだい。」
「はい、かしこまりました。それで私は何をすればいいですか?」
「アンチデューンが目覚めるまでは魔王城の警備と管理をお願い。2度目の眠りは1ヶ月くらいで覚めるみたいだからそれまでお願い。それまでに今の体に精神を慣れさせておきなさい。警備とは言ったけど、ここには私と契約している存在しか入ることができない結界を張ってるから大丈夫でしょうけど。」
「かしこまりました。」
「その期間中も別に自由にしてもらっていいから。とにかく城に問題がないようにしてもらえるだけでいいからね。ただし、自分が襲われた時と非常時、私が許可を出した時以外で人間との戦闘を禁じます。私は魔王だけど人間との共存を目指してるからね。と、こんなところかな。何かわからないことがあったら聞いてちょうだい。私はキルスに戻るから。」
「かしこまりました。行ってらっしゃいませ。」
「いってきます。」
これまでのカインとの関係とは違うし態度も変わってしまったが、お互いに今でなお変化していない部分があったのだが2人ともそれには気がついていない。
お互いに尊敬しあっているということに。
リアは冒険者としてカインに出会った際にその優しさや人間性を尊敬している。それもってしたたかさも兼ね備えているので非の打ち所がない。
それに対してカインはリアの圧倒的な強さに対して敬意を抱いている。格付け試験の際に見た圧倒的な魔法とその戦闘センス。それに魅了され、それ以降、リアとはフレンドリーに話してはいたが、心の奥底では深い敬意を抱いていた。
お互いに敬意を払う上司と部下。他人行儀でもなくフレンドリーに接する上司に各々好きなように応対する配下達。
そんな理想の魔王軍を作ることを目標にしているリアにとって、カインを配下として受け入れたことで、知らず知らずのうちに一歩踏み出していたのだった。




