123話 【アンデッドゴッド】カイン
カインは悩んだ。もちろん死にかけ、というか死んでいた自分を救ってくれたリアには感謝しても仕切れないくらいである。それでも悩む。
リアのところに行くメリットとこの街に残るメリットそれぞれある。
しかし仲間たちがいないのにこの街に残ってどうしろというんだ。これ以上この街にいても虚しくなってしまうだけだ。
リアの元へと行きさらに強くなる。そしてあのグリフォンに敵討ちをする。それが終わったらアンデッドという人間の敵対種族である以上、魔王様に使える身として生きていくのが最良だと感じる。
「リアに着いて行きます。そこで自分自身を鍛えてあのグリフォンを倒しに行きます。」
「そう、Aランク冒険者を手放すのは惜しいけど仕方がなさそうね。それでは餞別をあげるからついてきてちょうだい。」
そうリーンに言われて教会の外に出ると冒険者ギルドに向かった。
そして奥の部屋に通された。そこには何とも形容し難い見た目の鏡のようなものが置かれていた。鏡は靄がかかっているようで何も映らない。
使ったことはないが話には聞いたことがある。{神の鏡}と呼ばれるもので強大なものの力を知るために使われる、世界で3枚しかない鏡だ。
そしてカインはリーンの指示通りに鏡の前に立ち、1枚の紙を受け取った。
「1度死んだってことは冒険者カードは無効になっているからね。スキルやステータスを確認するのに使いなさいな。それがあればいつでも依頼を受けられるけど種族がアンデッドになってるから受けるならこのギルドだけにしておきなさい。他のギルドではそんな融通は効かないと思うから。」
「ありがとうございます。大切に使わせていただきます。リア様と共に時々リーンさんにも会いにきたいと思いますのでまた会いましょう。」
「そうね、また会いましょう、カイン。その時には魔王としてのリアに着いても教えてちょうだいね。」
「はい。それでは失礼いたします。」
リーンの優しさに触れたカインは自分は幸せ者だと実感する。生き返らせてもらっただけでなく、こんなにも優しい人がいる街で冒険者として暮らせていたこと、そして自分が最も尊敬している冒険者のもとにつけること。全てに幸せを感じながらカインはリアの待つ宿屋へと歩いて行った。
宿屋に入った途端、カインがアンデッドだと気付いたレイに止められたが、事情を説明したら通してもらうことができた。そしてリアの部屋の前にたちドアをノックした。
「リア様、カインです。」
「入って」
その部屋の扉を開くと同時に、かつてAランク冒険者パーティ『獅子の牙』のリーダーとして名を馳せたカイン。その第二の人生が幕を開けたのだった。




