120話 レイ
今すべきことを済ませたリアは転移の魔法陣で宿屋の自室に戻った。そろそろ戻らないと、宿屋の主人であるレイが食事を持ってきてくれる時間である。
部屋に戻ったリアは少し後悔した。いつもより少し早く食事を持ってきてくれていたようで転移した時に部屋の中にレイがいたのだ。
少し驚いた様子を見せたレイだが、落ち着いた様子だった。
「おう、リアおかえり。その魔法陣はなんだ?」
「転移の魔法が組み込まれた魔法陣です。勝手に描いたことは謝りますが消そうと思えばすぐに消せるものなので見逃していただけると嬉しいです。」
なんとなく怒られそうな気がしたので先に謝っておく。
「ったく、しょうがねぇな。それともう一つだ。前々から思ってたんだがお前って人間なのか?ここ2年くらいお前から変な気配がするんだよ。元冒険者としての俺の勘がお前は人間じゃないって言ってるんだよ。」
「ご飯食べながらお話ししますね。冷めてしまうと勿体無いので。」
そう言ってリアはレイから食事を受け取りそれを食べ始める。そしてこれまでにあったことをかいつまんで説明する。
この街を離れ各国を魔王の軍勢から救って回ったこと、国王に懇願してとある目的のために魔王を倒しに行ったこと、魔王を倒してそこに封じられた禁呪を利用し魔王になったこと。
あまり人に言わない方がいいのだが、リアは信頼がおけると思った人には話すことにしている。この町でリアが話しても良いと思えるのはレイとあと1人だけだ。
それはともかく、この話を聞いたレイは、
「お前さん魔王だったのかよ。魔王なら配下とかたくさんいるんじゃないか?そいつらのところにいてやらなくていいのかよ。」
「配下は1人しかいませんよ。強い魔族やモンスターを見つけたら配下にしたいとは思いますけどあまり増やしたくはないですね。一度裏切られましたし。」
「そうか。聞かせてくれてありがとな。まぁ、キルスにいる間はここにいてくれてかまわねぇから自由に使ってくれよ。」
そう言いながらレイは出て行った。やはり、アランやリリスの仲間だっただけあって相当強いようだ。
今のリアは人間と大差ないように魔族が放つオーラを抑えている。それなのに違和感に気がつくということは、相当高い探知能力を持つのか、今のリアと互角に戦えるほどに強いのかどちらかと考えるのが自然だろう。
それはともかく、レイには魔王になったことを話したので、明日はもう1人話そうと思っていた人の元へ向かうことにした。




