110話 呪いをかけた悪魔
それから3人はそれぞれ自室に戻った。
リアは自室に戻るとすぐにカルストに連絡を取った。アランに呪いをかけた悪魔について気になったからだ。
(カルスト、聞こえる?)
(リア様、何でございましょう。)
(赤っぽい肌の人型に近い悪魔って知ってる?力量自体はあなたと大差ないくらいだと思うんだけど。)
(そりゃ多分アンチデューンですね。あいつとは馬が合わないものでこれまでも小競り合いを繰り返してるんですよ。しかも、自身によく似た分身体を作ることができて、そいつは本体よりも弱いのですが、数で不利になるので厄介なのですよ。奴と俺は兄弟みたいな存在なのでお互いにどこにいるかは分かりますが、なんでリア様がそんなことを気にするんですか?)
(私の父に呪いをかけたのがそいつらしいのよ。まぁ、解呪が間に合ったからよかったけど。少し気になっただけだから。また連絡するわね。それまでは魔王城で待機しておくように。)
(かしこまりました。)
カルストのおかげでアランに呪いをかけた悪魔が分かった。分身体を作れるとなると、リーンに呪いをかけたのもこの悪魔の可能性がありそうだ。とりあえず情報が確定しないので一度キルスに戻る必要がありそうだ。
もうしばらくはニケ村にいたかったが呪いを振りまく悪魔が好き放題やっているとなると、勇者としても、魔王としても放っておくわけにはいかない。できるだけすぐに片づけてまた戻ってくることにした。
すでに日も登っていたので自室から出たリアはリリスとアランそれぞれに急用で出かけること、そして今日中には戻ってくることを伝えるとすぐに村を出た。
いつも通り透明化の魔法を使用し、キルスに転移する。今回は急いでいるのでそのまま冒険者ギルドの近くまで行き路地裏で魔法を解除し冒険者ギルドに入り、リーンのところへ行く。
部屋の前まで行くと、
「リーンさん、リアです。聞きたいことがあるのですがお時間よろしいでしょうか。」
「リア?ニケ村に帰ったんじゃなかったの?とりあえずは言って。」
そう驚きながらも言われたので中に入る。そして、村に戻ったら父が凶悪な呪いにかかっていたこと、魔王になったということを両親に伝えたことを簡潔に話した。
「事情は分かったけど、私に聞きたいことっていうのは何?」
「はい、リーンさんが先日かけられていた呪いをかけた悪魔はどのような見た目だったのか気になって。父も悪魔に呪いをかけられたと言っていたので。その悪魔を知る私の知人によると分身能力を持っているとのことなので。」
「分身能力ね・・・・・・。私が戦った悪魔は赤みがかった肌で、普通の悪魔よりも人に近かったわ。でもアランが戦ったのが同じ悪魔なのなら苦戦しないと思うのだけれど……」
「分身体の方は本体よりも弱いそうなのでそれを考えると父は本体の方と戦闘になったのでしょう。」
「それもそうね。なんにしてもアランが無事でよかったわ。それであなたはこれからどうするの?」
「その悪魔を倒しに行きます。その知人が場所が分かると言っていたので。」
「そう、あなたなら余裕でしょうね。でも気を付けていってきなさいよ。」
「はい。では行ってきます。討伐した後はそのままニケ村に戻るので1週間は帰ってこないと思っていてください。」
「分かったわ。行ってらっしゃい。」
リーンに見送られたリアは討伐へと動き出す。呪いを振りまいているだけなのなら少し懲らしめて配下にしてもいいのだが、自分の愛する家族を傷つけられたとなればそうもいかない。
これ以上ないほどの苦痛を与えて殺す、そう決めたリアはある魔法を生み出し、カルストに連絡したのだった。




