107話 ニケ村
カルストと別れたリアはニケ村を目指して歩いていた。今のペースで歩いていたらお昼過ぎくらいには到着するだろう。
おそらく両親には相当の心配をかけてしまっている。歴代の勇者は魔王を倒したあと、必ず魔王になっている。おそらくニケ村にもおよそ2年前にリアが魔王を倒したことは伝わっているだろう。
リーン経由で安心するよう伝えはしたが実際に会って話もしたかったので今回は帰郷することにしたのだ。
途中でお昼ご飯を食べ、食べている途中にカルストに試しにメッセージを送ってみることにした。
(カルスト、聞こえますか?リアです。聞こえたら応答してください。)
魔力に思念を乗せてそう伝えた。するとすぐに
(魔王様、いかがなさいましたか?)
そう返答があった。急に連絡したものだから何かあったのではないかという心配が見てとれた。この方法で会話すると、相手の魔力に合わせて相手の声も聞こえるので、電話をしているような感覚だった。
(繋げた回路でちゃんと会話ができるのか試したかっただけよ)
(そうでしたか。何かございましたらいつでも応えますし、どこであろうと駆けつけますのでいつでも連絡してください。)
(ありがとう。それじゃまた今度。)
(はい。失礼致します。)
動作の確認を終えたので会話を終えると、昼食を済ませ、再びニケ村へ向かって歩き始めた。
ニケ村に近づくにつれて自然と歩く速度が速くなる。現実時間では2年ぶり、しかしリアは時間停止の中で10年過ごしていたので体感12年ぶりのニケ村、そして両親との再会である。楽しみでないわけがない。
そして、1時間ほど歩いてリアはニケ村に到着したのだった。
両親に早く会いたい気持ちもあるが、前回来た時に村の様子を見ていなかったので先に村を見て回ることにした。
村の人たちはリアを見ると少し気まずそうな雰囲気ではあるが、笑顔を作って挨拶をしてくれた。
皆がそのような様子だったが、その理由が思い浮かばなかったリアはとりあえず実家に向かった。
魔王を倒した存在は忌み嫌われるらしいが今のところどこに行ってもそんな様子はないのでそれが原因とは考えづらい。しかし、それ以外に何も心当たりがない。
そんなことを考えながら歩いているうちに実家の前に着いた。
そしてそこで村人たちの態度の理由を知ることとなる。




