105話 リーンと呪い
明後日はリアの誕生日である。今年の誕生日は帰省しようと思っているのでリーンに報告しておくことにする。今回はテレポートを使わずに走って帰るつもりなので明日には出発しなければならない。なので早めに報告に来たのだが、
「リーンさん、リアです。入ってもいいですか?」
ドアの外からリアがそう声をかけるが返答はない。受付嬢は中にいると言っていたので間違いなくいるだろう。もう一度声をかけてみる。
「リーンさん、開けますよ」
そう言いながらリアは少しだけ扉を開ける。そこには自身の机に突っ伏しているリーンの姿があった。しかし、リアは少し驚きはしたが、慌てなかった。なぜなら彼女は常に鑑定魔法を発動させているのでそのものの状態を知ることができる。それによると、睡眠中だそうだ。
リアにはそんなことは関係ないので近づいて揺さぶりながら起こす。
「リーンさん、仕事中ですよね。起きてください。」
揺さぶりながら近くで声をかけると目を覚ます。
「あらリアじゃない。ごめんなさいね。最近妙に疲れが抜けないのよね。」
「少し聞きたいのですが、最近悪魔か何かと戦いました?」
「よくわかったわね。この間調査でダンジョンに入った時にそのダンジョンにいないはずの悪魔がいたから戦って倒してきたのよ。状態異常でもなさそうだからただ疲れているだけと思って放置していたのだけれど。」
「普通の鑑定ではわからないほど高度な呪いをかけられていますよ。おそらく上位悪魔によってかけられたのでしょうが、ここまで高度なものは私も見たことがないです。」
「えっ、呪いにかかっているの?それってどんな呪い?もう何だか気力がなくて驚く余裕もないのだけれど。」
「徐々に衰弱させて殺す系のやつですね。少し待っててください。すぐに解呪しますので。」
そういうとリアは、魔の存在とその効果や影響の存在を許さない結界の魔法を作り出し発動させる。この中にリア以外の魔の存在がいると浄化されてしまう。もちろん呪いもだ。リアは自身に効果がないように別種の結界を張っているので問題ない。
「【天界の庭】」
リアがそう唱えるとリーンの表情が明るくなった気がした。
それに続けて衰弱しているリーンの肉体自体を回復させる。
「【時間逆行】」
これは時間を巻き戻し元の状態に戻す魔法だ。もちろんではあるが記憶などは失われない。
「一気に体が楽になったわ。ありがとうリア。それで、ここに来たってことは何か用事があったのでしょう?」
「はい。明日、ニケ村に向かおう思ってるので一時的にキルスを離れることの報告をしに来ました。」
「そう、わざわざ報告ありがとうね。あとさっきのことだけど戻ってきたら何かお礼をさせてちょうだい。」
「はい、期待してます。あまり強い敵や呪いを駆使してくるとは戦わないように気をつけてくださいよ。私がいれば助けれますけど今ければそれも叶わないんですから。」
「心配してくれてありがとう。それじゃ、久しぶりの家族みんな揃っての誕生日楽しんでらっしゃい。」
「はい、行ってきます」
そう言ってリアはリーンの部屋から出た。リアからすればリーンも家族の一員のようなものだが、それは内緒である。