103話 お金稼ぎ
それから何事もなく、2年近くが経過し、リアは15歳になろうとしていた。
リーンがアンにだけ事情を説明してくれたおかげでアンを介して依頼を受けたりダンジョンに潜ったりできるようになった。そしてリアは、時によっては何日もダンジョンにこもって戦い続けたり、自身を鍛え続けたが、全くレベルが上がることもなく、強くなることができなかった。
魔王となったことで基礎ステータスや、その他のすべての基準が大幅に上昇したことで、この世界の存在をいくら倒してもレベルが上がることはないというのがリアの結論だった。
スキル{魔王}の効果で他の世界に渡ることはできるが、リーンや両親に心配をかけることになるのでそれは避けたい。それにほかの世界に渡るといってもその方法がいまだにわからない。何度か方法を探ろうとはしたのだが、スキルを発動させても魔物が寄ってきてひれ伏したのみで何も起こらなかった。
スキルの存在以外にヒントがないのでどうすることもできなかったが、とりあえず、自立したことの証明と、これまでの両親への恩返し、魔王になったことのお報告はまだしていなかったのでそれもしようかと、資金をためていた。レベルは上がらずとも素材やアイテムは獲得できるのでお金は溜めることができたのだ。
スキル{賭博}で金貨を出すこともできるのだが、苦労せずに稼いだお金で、というのは何か違う気がしたので地道に安い素材を集めて稼いでいる。
リアの力なら高額な素材も簡単に手に入るのだが、それで一攫千金というのも何か違う気がするし、自身の体を慣れさせることもかねて弱いモンスターを中心に買っていた。
これまで稼いだお金もあるのだが、それらはすべて寄付をした。
半分はキルスの町にある孤児院に、半分はキルスの冒険者ギルドに。
どちらからもとても喜ばれた。何か見返りが欲しかったわけではなく、人間だったころの自分、そして前世の自分と決別したかったのだ。
自分はこれまでの自分とは違う、そう言い聞かせながらリアは生活していた。
そしてあと3日でリアの誕生日という日になった。リアは誕生日を実家で過ごすと決めていたのでこの日は普段よりも頑張って素材集めをした。
そしてこの日の買取の分を含めてついに目標金額に達したのだった。
このお金の使い道はすでに決めてある。きちんと今後の生活費も少し残るようにしてあるので困ることもないだろう。
そしてそのお金を携えてリアはキルスの町へ繰り出していったのだった。




