1話 リアの日常
ここはニケ村。そこに一人の10歳の少女がいた。彼女の名前はリア。ニケ村には彼女と同年代の子供は一人もおらず、いつも一人で過ごしていた。
そんな彼女の日課は、村の近くにある小高い丘の上で魔法の練習をすること。ニケ村付近にはモンスターがほとんど出没することがない。なので村の大人たちもリアに何も言うことなく見守っている。
魔法の練習に使っている母からもらった魔法の書。2年ほど前にもらったものだが、まだ7割ほどしか使えない。しかし、リアにとって魔法の練習はこれ以上ないほどに楽しいものであり、このように一つのことを極めることへの達成感は幼いリアにとってとてもうれしく感じるものだった。
リアは、いつも朝8時ごろには出かけ、お昼ご飯を食べるために戻ってきて、食べ終わるとまたすぐに出かけていく。そして、夕方になってから帰ってくる。
「ただいまー!」
「おかえり、リア」
彼女を出迎えるのはいつも決まって彼女の母親だ。名前はリリス。元は冒険者で凄腕の魔法使いとして名をはせていたらしい。
リアが帰ってきてから1時間ほどたつと父親が帰ってくる。
「ただいま」
「おかえり!パパ!」
彼を出迎えるのはもちろんリアだ。
「おっ、リア。いい子にしてたか?」
「うん!」
これがいつもの彼女の家庭の日常だ。ちなみに父親の名前はアラン。元は母と同じパーティの冒険者だったが、結婚を機に引退し、いまは狩人を生業としている。
父は働き、母は家と子を守り、子は無邪気に遊ぶ。そのような理想の家庭ともいえるであろう家族の形がそこにはあった。
あくる日の朝。リアはいつも通り丘までやってきた。しかし、今日は魔法の練習のために来たのではないのだ。
(まさか、私が転生者だったなんて……)