トイレ3
トイレ3です。
なだらかな陽射しが差し込む昼ごろ。
高校生程の見た目の男の子が2人、並んでゲームをしていた。
1人は艶やかな髪を肩ほどまでに伸ばした、少し華奢な男の子。
もう1人は、重力に逆らい天を衝くような髪型をした。同じ年代の子の平均より少しガタイのいい男の子。
彼らは親友同士で、いつも一緒だった。
「あー、やばい」
「ん?どした?」
ガタイのいい男の子が唐突に話し始める。
彼らは集中してゲームをしていたため、口数が少なくなっていた。
「いや、トイレ」
「あーね。 済ませてこなかったんだ」
「いやー、出る前にしてきてはいたんだけど。 ぶり返してきたね」
そう話す彼らはお互いの顔も見ずにモニターを見つめる。
ゲームに集中しているので、実は何も考えずに会話している。
「これ終わったら行くわ。 アレどこにやったっけ?」
「あー、アイマスク? あれ捨てた」
「あ? なんでだよ」
「なんていうか、使う意味が無くなってた」
「?」
ガタイのいい男の子は、華奢な男の子が話している内容をイマイチ理解できなかった。
要領を得ない返答に困惑していると、ようやくゲームが一区切りついた。
「よくわかんないけど、何も持っていかなくていいのか?」
「いや、これ持ってって」
そう言って手渡されたのは、頭全体を覆うように作られた金属製の板だった。
「あ、これ、気になってた」
「ちょうど1週間くらい前から使い始めてる。お父さんのツテで作ってもらったんだー。 オーダーメイドだよ」
「オーダーメイド? これが?」
その金属の板は、まるで壺のようだった。
細長く丸い楕円形のオブジェクトの上方はスッパリと水平に切られ、ヤスリがけが十分にされたツルツルの縁から目線を外して見えるのは、ただただ黒く塗りつぶされた"黒"だった。
「これ……光が反射してないんだけど、アレ塗ってあるの?」
「そ、アレ」
アレとは、世界一黒い物質のことである。
「へぇー。前のは目だけだったけど、顔全体を覆い隠さないとダメなんだ」
「そうなんだよ。 これを被って入らないと失明する」
「なんで住んでるの?」
ガタイのいい男の子はただただ疑問だった。
「この家にも思い入れが沢山あるんだよー。そんな簡単に変えられないって」
「大切な思い出を打ち消すほどのデメリットだと思うけどなぁ」
話を早々に切り上げ、華奢な男の子が持ち上げている金属製の壺を受け取る。
予想していた通りの重さが腕にかかり、少し体の重心が下がる。
「あ、あとこれ首に巻いておいて、壺はこれの上から被る感じで」
「これも真っ黒だな。 了解」
「汚さないようにねー」
「善処するー」
ガタイのいい男の子はそう言って「トイレ」へと向かった。
△
「どうだった?」
「遠すぎて漏れそうになった」
「そういえば伸ばしたんだった。 言うの忘れてたね」
華奢な男の子の家は伸びる。
「外から見ても外観変わってなかったから分かんなかったわ。 やっぱこの家おかしいって」
「そうかな? トイレ以外は普通じゃない?」
「トイレ含めて全部不思議だわ。 まぁいいや。
続きやろう」
「了解。 じゃあ次こいつ行こ」
2人の男の子は再びコントローラーを握り、ゲームを再開した。
知られざるトイレの秘密
・人がトイレのドアを開けると照明が自動で灯く
・掃除は必要ない
・生活圏から一定距離離さないといけない
・使わなければならない
・日に日に光量は強くなっている
・いずれ地球にある物質だけでは光を遮れずに貫通する
・家主が居なくなると光量はリセットされる
・全部嘘




