魔王です。捕まった勇者が話を聞いてくれません。どうしたら良いでしょう?
取り敢えずリハビリも兼ねて書いてみました
そしたらなんか出来たのでよろしければどうぞ(笑)
「勝負だ、魔王!!」
魔王城の玉座に、麗しい声が響き渡る。
その相貌は美しさと可愛らしさを兼ね揃えながらも、輝かしく凄絶な雰囲気を纏う剣を構えた少女は既に一級の剣士である空気を放ちつつ、自らの横に揃った仲間を供にしながら城の主へと向けて気炎を吐いて見せていた。
そんな少女達に対し、玉座に腰掛ける異形は唇の端を吊り上げる。
これまで、各地にて自らの軍勢に対して攻撃を仕掛けてくれていた一行が、俗に言う処の『勇者パーティー』がこうして本拠地の最奥に在るこの『魔王城』へと到達し、自らへと挑んで来たのだ。
本能的に戦闘へと喜悦を見出だす種族である魔王にとって、自らへと挑んでくる者は何人たりとも歓迎するべき『客』であり、それが以前から注目していた勇者パーティーであると言うのならば、沸き起こる愉悦も一塩と言うモノであろう。
かつて在った四天王がその場にいれば参戦させたかもしれないが、この場に居るのは魔王本人と側近たる参謀のみ。
であるのならば、勇者が指名し、かつ城の主でもある魔王たる自身がその挑戦を受けなくてどうするのか、と玉座から立ち上がり虚空より喚び出した得物を手にして、その身に蓄えた魔力を解放する。
「よかろう!噂に聞く五人目は居らぬ様だが、それでも我に挑むと言うのならば面白い!
さぁ、掛かって来るが良い!勇者よ!」
「……もちろんだ!
行くよ、皆!」
「あぁ、行こう!」「もちろんよ!」「は~い~」
魔王の言葉に、一瞬だけ怪訝そうな表情を浮かべたものの、リーダーたる勇者の掛け声に、仲間達が声を連ねる。
キリリとした目元が凛々しい騎士が大楯と槍を構え、生意気そうな雰囲気を纏う魔術師が呪文を詠唱し始め、おっとりとした言葉遣いで豊満な僧侶が支援の為か道具袋を漁り始めた。
それらの様子から、間も無く開戦である、との空気を読み取った魔王は勇者達を煽る様に手招きし、先手は譲ってやるから掛かって来い!と態度にて示す。
ソレを目の当たりにした勇者パーティーは、特に憤る事も無く、各々の得物と役割を以て立ち向かうべくそれまで立っていた場所から大きく一歩踏み出す━━━━
「そぉいっ!!!」
バキンッ!!!!
「はぁっ!!!」
グシャッ!!!
「あっ、詠唱間違えちゃったぁ~(棒読み)」
ドゴンッ!!!
「あ~れ~♪」
カランッ、カランッ、ペタンッ、ポヨンッ♥️
━━━━事はせず、何故か勇者は自ら構えていた聖剣を膝にて叩き割り、騎士は両手に携えていた盾と槍をそれぞれ破壊し、魔術師は自分達の至近距離にて魔術を暴発させて鎧やローブと言った防具を破壊し、僧侶は道具袋から取り出した板をそれぞれの首もとへと掛けて行く。
そして、あまりにも唐突な状況に呆気に取られていた魔王が反応を返すよりも先に、それぞれ首もとに
『肉○器志望(乱暴にするのも可)』
『メ○豚と罵って下さい♥️』
『孕まされックス希望』
『でもたまにはイチャイチャラブラブも大歓迎♥️』
と書かれた板を下げた勇者パーティーは、非常に卑猥で、かつそれでいて大事な部分が一切見えていない、と言う絶妙にチラリズムを撒き散らす状態にて元衣服だったモノを両手にて抱き、その上で床へと直接女の子座りにて座り込みながら
「「「「僕達(私達)はお前になんて屈しない!決してだ!
だが、どうしてもと言うのなら……くっ、殺せ!!」」」」
と、言葉とは裏腹な上気した頬と潤んだ瞳にて敵たる魔王を見詰めながら、さながら意中の相手を褥へと誘おうとしてなけなしの努力をはたいている乙女の様に告げるのであった…………。
「…………え?何これ、我どうすれば良いの……?」
******
「………………さて、ではそろそろご説明頂こうか、勇者殿?
何故、この様な事をしたのか、をな……」
重々しい溜め息を吐きながら、頭痛をこらえて頭を抑える魔王こと『我』の問い掛けに、きょとん、とした表情にて首を傾げて見せる勇者殿。
その手首には、先程我と側近とで結んだ縄が巻き付いており、容易には抵抗できない状態となっている。
場所自体は、先程までのやり取りを行っていた玉座の間のままであり、特に移動等はしていない為に絨毯は引いてあるものの石造りの床へと直接座らせている、と言うのが彼女らの端的な姿であると言えるだろう。
あまり、個人的には女性相手にしていたい扱い方では無いのだが、ほんの寸前までの彼女達の態度とようやく拘束を終えた、と言う疲労感から部屋を移す事すらもせずに本題に入ろうとしていると言う訳なのだ。
…………いや、言葉を変えよう。
彼女らは、我に対しては良くも悪くも至極従順であったが、側近に対しては非常に非協力的な振る舞いを見せていたのだ。
例えば、今彼女らを拘束している縄にしても、流石に侵入者相手に掛けない事は……と言う訳で側近が縛ろうとしていた。
流石に女性相手であり、かつ装備はボロボロで武器も持っていないのだから、と手首だけ拘束して形だけでも整えようとしたのだが、それに猛反発されたのだ。
…………それはもう、まるで怒り狂った猛獣が命を掛けて暴れまわっている、と言っても表現的には間違いが無かったであろう程の勢いであり、素手でかつ魔術も使わずに側近を圧倒する程の大立回りを見せる程であった、と言えばどれだけの事であったのかは理解出来よう。
魔王である我の側近であるが故に、参謀と言う地位にありながらも当然その腕前は並みの者では足元にも及ばない猛者である側近が、四対一とは言え押される場面に、思わず我も下ろしていた腰を上げざるを得なくなってしまっていた程だ。
が、そうして我が前に出た途端に勇者達は態度を豹変させ、即座に大人しくなったばかりでなく、何故か手首だけを拘束しようとしているこちらの動きを誘導して、自身の身体を如何わしく卑猥な状態へと縛り上げさせようとまでしてきたのだ。
流石に、元々衣服がはだけていたり破れてしまっていたりと言う状況にあった為にそのまま従う事はせず、当初の目的通りに手首だけ縛るに留めておいたのだが、ソレを為すだけでとてつもない疲労感を覚えさせられる羽目になってしまった、と言う訳なのだ。
そんな我の姿を、不満そうな様子を隠そうともせずに勇者達が見詰めて来る。
新たに服を着せようとしても拒否されてしまった為にまだ肌も露であり、かつ先程まで揉み合いになっていたので軽く汗ばみ、血色も良くなっているので非常に艶かしい。
魔王とは言え生物学上の性別は『雄』であり、かつ魔族は人とも普通に交配可能な種族である。
それに加え、とある事情から彼女らについてそれなりに詳しい我は、そんな彼女らの艶姿を直視する事は様々な理由にて憚られた為に向けていた視線を反らす。
すると、その反応が全員の琴線に何故か触れてしまったのか、それとも先に投げ掛けておいた問い掛けに対して漸く返答するつもりになったのかは定かでは無いが、これまた何故か嬉しそうな様子にて勇者が代表して口を開く。
「はいっ!
今回は、僕達皆で魔王様に挑みに来ました!」
「…………うむ、元気が良いのは大変よろしい。
でも、わざわざ挑みに来た相手に対して敬称を着けて話すのは如何なものか?少なくとも我には違和感が凄いのだが?それと、聖剣どうするつもりなのかね?自分でへし折っておったが、確か国宝の類いでは無かったか?」
「それで、こうして魔王城にまで乗り込んで来たは良いものの、こうして魔王様に挑んで返り討ちに遇った訳です!」
「我は一切戦っておらぬがな。
と言うか、そなた人の話を聞かぬ、と良く言われぬか?ん?」
「なので、こうして敗北した僕達は、魔王様の慰み者としてあれやこれやと無理矢理だったりノリノリだったりしながら色々とされて、最終的には大きくなったお腹を抱えながら幸せに微笑む姿を故郷に送る事になる訳です!
ご理解頂けましたか?」
「………………ごめん、全く解らない」
思わず頭痛を覚えつつ、雑な口調にて返してしまう。
が、どうやら彼女の言葉が理解の範疇から超越してしまっていたのは我だけでは無かったらしく、隣に居た側近も似たような反応を見せていたのだからやはり我の思い違い、と言う事では無かったのだろう。
…………確かに、先に述べた通りに、我は魔族であるが故に他種族である勇者相手に『そう言う行為』が出来ない訳でも『そう言う相手』として見れない訳でも無い。
むしろ、活発そうな雰囲気や輝かんばかりの相貌は見ていて素直に『美しい』とも思うし、そのしなやかな肢体を獣欲の赴くままに蹂躙したい、と欠片も思いはしないと言えば、正直な話雄として嘘にはなる。
が、それはそれとしてとある事情にて我には彼女をそう言う目では見ていないし、この後もそう見る予定もつもりも無いので、ハッキリ言って彼女の言葉の数々は見当違いも甚だしいモノである。
それに、我は一言も『そう言う事がしたい』だの『その相手として貴様(勇者)を指名してやろう!』だのと口にした事は無いし、思った事も無いのだからやはり彼女の口にした言葉は妄想以外の何物でも無い、と言えるだろう。
と、言うよりも、一体彼女は何を以てこんな事を言い出したのだろうか?どこかで何かを吹き込まれた、と言う事だろうか?
我の知る勇者とは、この様な事を言い出す様な人物でも無かったハズだし、そもそもこの様な事をするハズもして良い人物でも無かったハズなのだが……?
等と考えながら、自分で言っていた妄想にてアレコレと空想を広げすぎたのか、年若い女性がしても良いのか判断に困る表情を浮かべながら身体をくねらせている勇者から視線を外し、残る面子へと向けて行く。
その先には当然の様に、先程勇者と共にこの城へと乗り込んで来て、我の手でノリノリで縛られていた勇者の仲間達が居り、我は視線にて『どう言う事なのか?』と訊ねてみる。
すると、流石に話が進んでいない、と判断したのか、それとも予め事態がこうなった場合に対する取り決めをしていたのか、凛々しい騎士が表情を引き締めながら口を開く。
「なんだ、貴様!その様な、舐め回す様なネットリとした視線を向けて来て!興奮して仕方無いぞ!」「いや、我そんなつもりは欠片も無いのだが?寧ろ、説明して欲しいだけなのだが?」
「そんなに、私のこの身体を貪りたいと言うつもりか!その外見通りの欲望を、私の身体の隅々にまでぶちまけるつもりなのだろう!おのれ、なんと言うテクニシャンなのだ!触れられてもいないのに濡れて来たぞ!」「ねぇ?我の話聞いて貰っても良い?ねぇ?」
「だが、私の騎士道は決して折れはしない!
例え、胸だけを数時間掛けて嬲られたとしても、身体中に酷い言葉で落書きされたとしても、尻を鞭で折檻されたとしても、決して折れる事は無いだろう!因みに私個人のオススメは鞭だ!」「ダメだ、こいつも人の話聞かないヤツだわ」
自分達の自爆によって艶かしく破れた衣服から覗く、可愛らしい下着とそれに包まれた形の良い尻をこちらに向けて振って見せる騎士に対し、より我の頭痛は強さを増してみせる。
よもや、我をストレスや疲労感にて討ち取る作戦なのでは無いだろうか?との疑念を憶えなくは無いが、流石にこれ以上の天丼は無いだろう、と判断して祈る様な気持ちにて残る二人に視線を向ける。
すると、幼児体型の魔術師が自信満々に無い胸を張りながら応えようとした時に、咄嗟に僧侶がその豊満な胸元へと魔術師を頭を抱き込んで言葉を封じ、そのまま器用に道具袋を漁って中から何かを取り出して見せた。
「ごめんなさいね~二人が先走っちゃって~」
「…………その、先走った、と言う単語に引っ掛かりを覚えないでも無いが、取り敢えずまともに話をするつもりがある相手が居てくれて助かった心持ちよ。
それで?何故に斯様な事をしでかしたのか?」
「はい~。
それに関しましては~魔王様もご存知だとは思いますが~私達は魔王様が戦っていらっしゃる『帝国』の者では無く~『王国』に所属する勇者です~」
「…………うむ、それはこちらとしても承知している。
我ら魔王国に対して敵対的であり、かつ実際に戦争を仕掛けて来おった帝国とは、現在も継戦中であり我の直轄軍もそちらに割いておる。
そして、そなたらが我らと帝国と国境を隣接させ、かつては紛争に近しい関係性でもあった、と言う事も当然把握しておる」
「かつて~魔王様の配下として暴れまわっていた四天王が~その配下を使っての独断専行であった、との事で決着が付いておりますね~」
「そうだな。
こちらとしても、かつて部下であった者による暴走を止められなかった事と、暴走した本人共がそなたらに討ち取られていたり、何時の間にやら殺されていたりとで当事者も居らぬ故な。
我としては、そなたらがかつて四天王軍であった残党共に対して我が国内にて追撃を仕掛ける事を、盗賊退治の体を取って黙認する事で謝罪となしていたつもりであったのだが、王国としてはそれだけでは足らぬと我の首を狙ってきた、と言う事であろう?」
「いえ、そう言う訳では無いですよ~」「え?違うのか?」
思っていた返答とは異なり、思わず変な回答が我の口から溢れ落ちる。
てっきり、その辺の賠償やら何やらを有耶無耶にした(せざるを得なかった)せいで恨みを買ってのこの事態、なのかと思っていただけに正直拍子抜け、と言える。
ならば、何故?と思いながら僧侶を見詰めていると、先程まで探していたモノが漸く道具袋の中から見付かったのか、手紙らしきモノを取り出しながら先の二人の様に頬を桜色に染めて身を捩らせて見せる。
「そ、その~そんなに熱い視線を向けられてしまうと~私としても困ってしまうのですよ~?
幾ら殿方が大きな胸を好まれるとは言え~他の方の目が在る内にその様に凝視されますと~流石に私としても照れると言うか~」「…………いや、別段そちらを見ていた訳でも無いのだが……」
「あ、いえ~?別に見られて嫌だ、と言う訳では無いのですよ~?寧ろ魔王様であれば~幾らでも、お好きなだけ見ていただいて構わないのですよ~?それは本心ですからね~?」「…………ねぇ?我の話、ちゃんと聞いて?」
「ですが~私としましては~あの二人の様に乱暴に、と言うのも魔王様相手であれば吝かでは無いですが~どちらかと言うと初夜は熱く甘い愛の囁きから始めて~深く甘い口付けと共に二人キリでの愛の交わりを…………キャ~♪♥️」「あ、ダメだこいつも人の話聞かんタイプだ」
その聖職に見合わぬ豊満な身体を捻らせ、自らが口にしたアレコレを妄想して一人で頬を抑えつつキャーキャー言いながら頬を染めている僧侶に絶望の呟きを溢す我だったが、そこで一条の希望の光が差し込んで来た。
それは、つい先程まで僧侶によって抱き込まれ、その豊満な胸元にて窒息しかけていた魔術師が、未だに荒い吐息と青ざめた顔色のままに、僧侶が妄想に夢中になって取り落としたと思われる手紙らしきモノを、我へと向けて弾いて寄越して来たのだ。
比較的まともな行動に、思わず魔術師へと向ける視線に感謝と好意が多分に混じる。
そんな我に対して魔術師は、僧侶によって振り回されながらも、自身が弾き飛ばしたソレを指差して言葉を伝える。
「…………そこに、大体の事情と、わたし達がなんで、来たのか書いてる、から……取り敢えず、読んで……」
「…………うむ、良かろう。
まともな説明、感謝する」
「別に、良いわよ……わたしも、後で孕ませて貰う予定、なんだから……気に、しないでよ、ね……!」
最後の最後で何やら口走っていた様子だが、取り敢えず気にしない方向で思考を切り替え、側近に拾わせたソレを手に取り封を開く。
すると、それはやはり彼女達が所属する王国の後継者であり、同時に彼女達の婚約者でもある王太子の名前から始まる手紙であった。
その内容を要約すると、対帝国に於ける軍事的同盟の締結並びに先の紛争の完全終結を呼び掛けるモノであると同時に、その特使として『魔王にとって縁深き者』である自国の勇者達を指名して送り出した、と記して一枚目が終えられていた。
かつて争いの在った相手であれど、敵の敵は味方、と言う事を言いたいのだろうか?
同じ人間同士であればその理念も通じたのだろうが、我は異種にしてかつてそちらに対して一方的に攻め込んだ過去を持つ側であると言うのに、何故それが通じるのだと思えたのだろうか?
そんな考えが視線に滲んでいたのか、未だにトリップして戻って来ない勇者と尻を向け続けている騎士を除いた二人が、どこか呆れる様な、それでいて『だからこそ良い』とでも言う様な視線にて返しながら口を開く。
「そりゃ、確かに魔王様の言いたい事は分かるわよ?
かつて争っていた相手をそんなに簡単に信用する様な真似をして良いのか、って事でしょう?」
「ですが~私達にとっては~魔王様は何よりも~誰よりも信頼するに値する~そんなお方なのですよ~♪」
「そうそう。
何せわたし達、何度も助けられたし、何度も一緒に戦いもした間柄なんだから、当然他の有象無象よりかは断然信じられるしね!」
「………………そなたら、一体何を言っておるのだ?
我を、他の誰かと勘違いしてはおらぬか……?」
「何をって」「そんなの~決まってるじゃないですか~」
二人から返ってきた言葉に、思わず顔がひきつりそうになり、言葉まで震えそうになる。
…………何故、その様な言葉が出る?『あの事』はバレてはいないハズなのに?一体どうして!?
そんな言葉が我の胸中を駆け巡るが、取り敢えず否定の言葉を返しておくと、魔術師と僧侶の二人は不思議そうな表情を浮かべながら、我へと向けて決定的な言葉を放って来た。
「だって、いつもわたし達を助けてくれた『マーオ仮面』って魔王様でしょう?」
「人間に偽装していた様子でしたが~割りと早い段階で『人間じゃないな~』って気付いてましたよ~♪」
「そうそう。
それに、出てくるのが決まって四天王だとか、その直属の上級幹部とかのヤバい連中が相手の時だけだったから、結構隠せて無かったわよね」
「アレだけの戦闘力を持っていて~それでいて四天王達の動向を正確に把握しているとなれば~必然的に正体は絞られますからね~」
「………………」
「無言、って事は肯定って事で良いのよね?
と言うか、名乗った名前からして安直に過ぎるわよ?」
「一周回って~逆に違うのかとも思いましたが~やっぱり合っていた様で良かったです~♪」
我の内心へと向けてグサグサと突き刺さってくる数々の言葉に、思わず顔を覆いながら天を見上げてしまう。
が、そうしても事態が好転するハズも無く、同時に誰かが解決してくれる訳でも無いのは理解していた為に改めて言葉を連ねて行く。
「……取り敢えず、そなたらが我をどこぞの不審者として誤認しているのだろう、と言う事は認識した」
「あ、不審者だとは思ってるんだ」「まぁ、確かに仮面を着けて乱入してきた時はどうかと思ったが」「さっきも言ったけどちょっと『マーオ仮面』って安直過ぎるわよね」「その方が~意外と結び付けられない~と思ってたんじゃないかしら~?」
「…………それと、先の手紙でこちらにそなたらが赴いた理由も理解した。まぁ、何故討ち入り染みた真似をしたのか、は理解出来んがな」
「あ、誤魔化した!」「誤魔化したな」「誤魔化したわね」「誤魔化しましたね~」
「………………更に言えば、そなたらは謎の好意(?)の様なモノを我に抱き、ソレを成就させんとしているのも理解はした」
「あんな風にピンチに颯爽と助けられたら、女の子なら惚れちゃうよね~♥️」「四天王に対して向けていた冷酷な視線を向けられたら、と言う想像でずぶ濡れになったのは認めてやる」「そ、それなら、ちゃんと赤ちゃん作ってくれるなら許して上げるわ!」「なら私は~一対一でイチャラブチュッチュしてくれればそれで良いですよ~♥️」
「……………………が!そなたらは全員、王国の王太子殿の婚約者であろうが!
その様な立場に在る者が、この様な行動に出る等と言語道断!想いが在ろうが無かろうが、その関係の中で情を育もうともせぬそなたらの言葉に、信を置く事なぞ出来ようハズも無いわ!!」
「「「「ええっ!?男の人って、そう言うのが大好きなんじゃないの!?」」」」
「愚か者め!!!我は、その様な事は大嫌いだ!!!
多妻も良かろう、それが互いに想い合っておるのならば。身分が違おうと、種族が違おうと、そこに想いが在るのならばソレを貫き通す事すらも応援しよう。
が!そなたらの様に、既に在る関係を大事にせず、清算すらもせずに容易く次へと乗り換えようとする様な者など、吐き気がするわ!」
「え?」「ん?」「あれ?」「もしかして~手紙最後まで読んでらっしゃいませんか~?」
「………………なに?」
我の激発に対し、何故か『恐怖』でも『驚愕』でも無く『疑問』を浮かべた四人から促されるままに、未だに手に持っていた手紙へと視線を落とす。
確かに、未だに二枚あった内の二枚目には目を通していない。
しかし、重要だと思われる内容は一枚目にて説明が終えられており、文脈的にも残されているのはあくまでも追伸程度のモノであるハズだ。
その様な状態で何かしらの重要な情報など書き残しておくものだろうか……?
そんな考えと共に一枚目を捲り、二枚目へと視線を向けた我の脳髄へと稲妻が走り抜けた。
『追伸
我らが王国と魔王国との同盟を本気で提示した証として、婚約者と言う名目を以て保護していた勇者達を先んじて送り出しました。彼女らが望むのであれば、どうか魔王様の『お情け』を恵んで下さると有難い。
なお、実際に締結された暁には、『王太子』としてその方が都合が良いから、と男として育てられていた自分も魔王様へと同盟の証として輿入れし、最終的に両国の統治をお任せする予定となっております。
良い返事を期待すると同時に、勇者達に先駆けされない事を祈っております。
『王太子』改め『姫』より』
「……………………なん、だと……!?」
あまりの驚愕に何時の間にか呟きが口から溢れ落ちていたが、正直な話をすれば心臓が肛門から飛び出るかと思う程の衝撃を受けてもいた。
何せ、この事態、つい先程我自身が口にした言葉がそっくりそのまま当てはまる状態となっており、ソレを盾にされた場合、けっして逃れる事は出来ない状況へと陥ってしまっていたからだ。
自ら望んで就いた訳では無いとは言え、既に『魔王』として放ってしまったその言葉。
嘘偽り無く、完璧に正直に心からの言葉である為に否定はしないが、『魔王』と言う立場に在るが故に既に口にした言葉を否定する事は出来ない。
内心にて冷や汗を滝のように流しながら我が視線を上げると、その先には当然の様に勇者達四人の姿。
相も変わらずに肌をさらけ出した様な格好をしたまま手首を縛られている彼女達であったが、その瞳にはこれまで我が認識しようとしていなかった、餓えた肉食獣の様な剣呑な光が灯っている事が容易に見てとれてしまった。
…………これは、逃げられんな……。
自らの言葉によって先んじて逃げ道を潰してしまっていた我は、そのまま視線を真上に向けて両手で顔を覆う事となるのであった……。
「「「「さて、これで私(僕)達が本気だって事は理解して貰えましたよね?魔・王・様♥️」」」」
━━━━なお、コレより暫くの後、王太子改め姫が合流したり、四天王の娘達が両方の意味で襲い掛かって来たり、帝国の精鋭部隊(ハニトラ要員兼)の来襲によって女性陣がバーサークしたりするのだが、それはまた別のお話……。
設定の様な何か?
魔王
自身で望んだ訳では無いが周囲から望まれる形で玉座に就いた経歴を持つ
外見は黒い毛並みの狼男(身長2m半前後)に角と翼を生やした様な感じ
想いが通じているのならばハーレムも容認するし元カレ・元カノが居ようと今付き合っているのならばそれで良くない?と言う純愛至上主義者であると同時にNTRダメ絶対&昏睡・無理矢理許すまじ!な過激派の面もある為に、力を持っていたが故に仕方無しで地位に着け続けていた四天王とは反りが合わずに反目し合う関係となっていた
半分位はそう言った私情の面にて四天王を粛清していたのだがそれはここだけのお話
因みに魔族としての姿ではAPP換算で『18』相当の絶世の美青年だが人の姿に化けている時はAPPが『14』近くまで下落する事となる(それでも十分美青年だが)
勇者パーティー
勇者(黒髪ショートの元気娘)を中心とした女性だけで組まれた四人パーティー
公的には王国の王太子と全員が婚約を結んでおり、それも相まって王国内部では下に置けない扱いを受けていた
その関係性に目を付けた四天王達によってあの手この手でイロイロとされそうになったが、その悉くを魔王扮する『マーオ仮面』の活躍により、時に直接、時に間接的に助けられる形で今日まで無事でいられる事が出来た
そうして直接的に力強く助けられる事が頻発した事もあり、白馬の王子様、では無いが強烈に印象つけられた為に感情に火を付けられる事となり現在へと至る
そんな経緯もあってか王国内部では四人組に『マーオ仮面』を加えた五人組にて『勇者パーティー』として数える、とする派閥が一定数存在し勇者達四人もソレを支持している
四天王
魔王が魔族を統一した際に指揮系統に組み込まれた実力者
と言うのが表向きな発表だが実は『今潰したら後が面倒だから』と残されていた地方権力者、と言うのが実態としては正しいかもしれない
四天王の名前の通りに四人居るがそれぞれがNTRや薬物や催眠を使用したモノ、強姦等々と言った行為が大好きだ!と言って憚らない変態にして外道であった為に魔王からは嫌われていた
魔王国が帝国と本格的に事を構え、国内の兵力は少しでも欲しい、と言う状態にて私兵を勝手に動かして王国との小競り合いを起こしてソレを発展させた為に魔王の逆鱗に触れて粛清される事となる
なお、勇者が倒したのが一人
勇者パーティー(+マーオ仮面)で倒したのが一人
残りは魔王が影でひっそりと粛清した