みっちゃんとは
こちら、プロローグです。
どちらのルートも、必ず見て欲しいです。この後から、本格的に始まります。
NLとBLの区別はサブタイトルで出来るようにしますので、よろしくお願いします。
自分には[みっちゃん]という、親戚がいる。
[みっちゃん]は母の弟にあたるが、若い。
親戚の集まりではよく「結婚しないのか」「彼女は作らないのか」「モテるんだろ?」と、質問攻めにあっている場面に遭遇する。
実際[みっちゃん]はモテるだろう。
綺麗で少しタレ目の甘いマスク。優しくて、料理だって美味しいし、勉強もスポーツもできる。
背は高くて、細身。モデルみたいだ。
だから、いつまで経っても、結婚どころか、彼女の存在事態も見えない[みっちゃん]が、不思議でならなかった。
「見た目も性格も、凄い良いんだけどね」と、母もぼやく。
うちの家系が特別、顔面偏差値が高いわけではない。
[みっちゃん]だけが、ずば抜けている。
というのも[みっちゃん]は幼いとき、養子として、母の弟になった。つまり、祖父と祖母の子に、あるとき、突然なったのだ。
詳しくは知らないが、血の繋がりは欠片もなく、今では、本人も、周りも気にしていない。
すっかり家族に溶け込み、叔父として、接してくれる。
[みっちゃん]は、人当たりも良い。
物腰は柔らかく、人に好かれるタイプ。
小学生の時などは、たまに、[みっちゃん]がお兄ちゃんならな、と思ってしまうくらいだった。
[みっちゃん]自身も満更でもないらしく「僕には姉さんがいるけど、歳は離れてるから……家族に憧れがあるんだ。だからかな、なんだか可愛くて。何かあったら、僕になんでも言ってね」
いつも、そう微笑み、好物を振る舞ってくれたり、欲しいゲームを買ってくれたりして、とにかく甘やかしてくれた。
現在。
自分は、高校三年。進学するつもりであり、近くの大学を考えている。
[みっちゃん]は、というと、デザイナーをしていて、仕事は順調らしい。三十五歳、現在も、独身、彼女なし、だ。
彼女の影どころか、女性の知り合いすらいない気までして、いつまで独り身でいるのか、心配になるくらい。
親戚も「見合いするか?」と、言い出す始末。
「僕、見合いは、まだ……」
苦笑して、困った顔をする[みっちゃん]を、よく見るように。
そして一週間前、父が、転勤を告白した。
距離としては遠く、とても、受験を控えた今、一緒には行けない。
父ははじめ、一人で行くと意気込んでいたが、家事の問題から、母もついて行くことに。
家に残るのは自分だけになり、昨夜、二人を見送った。
一人だけの家に帰ったとき、この歳でもなお、不安で仕方なかった。
今まで騒がしかったリビングが、静まり返っていて、泣きそうになる。
ふいにインターフォンが鳴り、恐る恐る出迎えると[みっちゃん]が、そこにいた。
「夕飯、まだだよね? たまたま、食材を多くもらってね。好物、作るから、一緒に食べよ」
いつもと変わらない笑顔、落ち着く声で、話しかけてくれた。それだけで、何故か無償に安心した。
[みっちゃん]が作ってくれた、好物をお腹一杯、食べた夕飯の後。お礼を言うと[みっちゃん]は、おもむろに、兎のキーホルダーが付いた鍵を、手渡してきた。
「なにこれ? 可愛いね。みっちゃん、兎好きだっけ?」
「可愛いでしょ? それ、あげるよ……僕の家がある場所、覚えてる? ほら、少し距離があるけど」
ああ、近くにある、あのお洒落なマンションの三階かな? と、首を傾げれば[みっちゃん]は微笑む。
「そう! その、鍵。スペアキーだよ。あげるね」
え、なんで?
視線でそう告げれば[みっちゃん]は照れ臭そうに、首辺りを掻いた。
そして、耳を疑う発言を[みっちゃん]は、した。
「だって、僕たち恋人じゃない」
……そう、眞野光哉は、全く冗談ぽくない表情で、真剣に、告げた。
告げられた。
眞野光哉三十五歳、独身、彼女なし。
彼の瞳は、本気だった。
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