悪の組織を作ろうと思った
悪の組織を作ろうと思った
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マジであの時は泣いたよ。
あいつらを倒すのは分かってたけどさ。あいつら…、ごめん、またちょっと泣けてきた。
あいつら、元は俺の部下だったんだぜ。
俺が悪の組織に憧れて仲間集めた時、あいつらも俺と同じ考えでさ、波長がバッチリ合ったんだよ。
悪の組織ってカッコイイよな。一対多数でも絶対ェ文句言わねえし。死ぬまで戦うし。
その点正義の味方なんて、多人数でおまけに金にモノを言わせて科学力とか、国の力で勝ちやがるからみっともねえよ。
俺たちは正義と一人で戦って死にたいよなって。
そんな考えで、あいつらと悪の組織作ってったんだよ。
もちろんそんな奴らばかりじゃなかったよ。
本当に悪いことがしたくて、俺の組織に入ってきた奴もいたよ。
でもそいつらはちゃんと捕まったり、倒されたりしてるよ。
でさぁ、知ってるだろ? あの頃の悪の組織の強さ。
俺達も気付いたんだよ。
こりゃ、ヤバイって。
俺たちは最終的に正義の味方にやられるのが目標で、このままだとマジで世界征服しちまうって。
最後にやられるどころじゃねぇよって。
んで、俺、死ぬほど考えたんだ。どうすりゃいいって。
ここから正義って強くなるのか? 裏でこっちの情報流すとか。
それで考えた末に、俺が悪の組織を抜けて、正義の味方になるって結論出したんだ。
確かに俺が作った悪の組織だぜ。
でもよ、俺の考えに集まってくれたあいつらの思いは、裏切れなかった。
俺の夢にずっとついて来てくれた奴らだぜ。
だから、今度は俺があいつらのために、やらなきやって思ったんだ。
あいつら話したら分かってくれたよ。
あいつら俺のこと、ボスって呼ぶんだけどさ、
『分かりました、ボス。じゃあ、俺たち、ボス倒しに行きますから、ボスも覚悟しておいて下さいって』
って、泣きながら言うんだぜ。
俺もジーンと来ちゃったよ。
はっきり言ってあいつらメチャ強ぇよ。
でも、俺も負ける訳にはいかねぇ。
俺が負けちまったら、あいつらの夢、誰が叶えるんだ。
だから必死で体も、頭も鍛えたよ。今まで以上に。
ところで、知ってるか。
あいつら、すげぇストイックなんだ。
悪の美学っつったらおかしいかもしれねぇけど、タバコ吸わねぇし、酒も飲まねぇ。
自分を鍛えてるトコなんて、絶対ぇ人に見せねえ。
悪ぶった化粧とかメガネしてただろ?
あれ、紫外線対策なんだぜ。
すっげぇ健康に気ィ使ってんだよ。
体悪い悪なんていねぇよって。
タバコ?
あぁ、あれシガーチョコだし、酒は全部ジュースだよ。悪が酔うなんてカッコ悪いって。
あぁ、話がそれたな。
で、戻すと、五年後に対決って決めてさ、あいつらも突然五年間、息ひそめてただろ。
その間に俺もあいつらに負けない正義の味方の組織作ったよ。
でもよ、結局あいつらにはまったく敵わなかったよ。
正義の味方ってことで寄ってきた奴ら、みんな弱ぇし、すーぐ、おだてに乗って調子こくんだよ。
そんなんじゃあいつらに勝てねぇって、何度言ったか分かんねぇくらいだよ。
こっちはあいつらの事、知りすぎるぐらい知ってんだから。
もちろんそんな事、言わねぇけど。
でも、こっちにゃ、バックに国も付いてるだろ。
だから何とかあいつらの勢力は、その力でほぼ壊滅したぜ。
俺に勝とうって頑張ってきたあいつらには、勝てなかったけどな。
だから、最後はあいつらと俺のタイマン勝負になったんだ。
俺、絶対ぇ倒れねぇって決めてたんだ。何があっても。
あいつら以上に強くならなきゃって、ずっとやってきたよ。
あいつらの夢を、俺が叶えてやるって。
すっげー、辛かった。いや、あいつらと戦うことがだよ。
でも戦ったよ。全力、いや、全力以上で。
あいつらもホントに、マジで俺、倒しに来てたよ。
んで、あいつら全員とタイマンして、勝ったよ。
俺、すっげぇ嬉しかった。
ようやくあいつらの夢を叶えてやることが出来たって。
で、最後あいつら、倒された時にこう言ったんだ。
「ボスに倒されてよかった。ボスのこと、倒せなかったけど…。俺達だけが、夢叶えてもらって、ボス、ありがとう」って。
俺、泣いちまったよ。
あいつら、俺のこと分かってて、そう言ってくれたんだって。
俺が今もこうして正義の味方やってるのは、あいつらへのメッセージみたいなもんだよ。
いつかまた、お前らみたいな奴らが出てきても、ちゃんと俺が倒してやるって。
それに俺がまた悪の組織作っちまったら、倒したあいつらが悲しむと思うんだ。
ボスを倒せなくってすみません、ってな。
俺の夢?
いいんだよ。もう捨てたんだ。
だから俺は、倒されるまで正義の味方だよ。
おっと結構時間、使っちまったな。
もう行くよ。
真面目な悪は、ちゃんと倒してやらねぇといけねぇからな。
じゃあな。