表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

男ですが、婚約破棄されました。

作者: 青樹

「ラズモア男爵子息、アルフレッド・ラズモア様‼︎

私ルーレシア・トゥナイトとの婚約を破棄して下さいませ‼︎‼︎ 」


威丈高に現れた令嬢の集団に取り囲まれ、幼馴染みのルーレから血も涙もなく破棄を突き付けられる。


俺…泣いてもいいですか⁉︎⁉︎


「ま、待て‼︎待ってくれ、ルーレ‼︎俺以外に好きな奴が出来たのか⁉︎なら結婚後、愛妾として…」


「お黙り‼︎」


手持ちの扇で頭をはたかれる。


「今のあなたは、まるっきり市井風情の男で、わたくしの横に並び立つなど‼︎ 許しておけませんわ‼︎

馴れ馴れしく呼ばないで下さる?」


「まっ……。」


待ってくれとは、言えなかった…。


アルフレッドて奴は気障でロマンチストで貴族然としてるんだよ。俺と違って!

いや、マジで試練だ、俺。


前世の記憶とやらが強烈すぎて、俺が今までどう振る舞ってたかなんて忘れちまった。


いや、わかるんだよ⁉︎

私はーとか言っちゃって、ルーレあなたは今日もなんて美しいんだ。私の花の精に口付けを許してくれるかい?

そう言って朝露が光る摘んだばかりの深紅の薔薇を

ルーレの髪に付け……れるかあぁぁぁっ‼︎‼︎‼︎


何のバツゲームだ‼︎恥ずかしくて痒くて泣けるぞ。


考えてもみてくれ。

日本人の厨二…違った、中二なんて、花も恥じらう日和見男子だぞ‼︎

誰が許してくれ様と、俺が一番自分自身を許せそうにないわ。


「あぁ、アニメ見たいなぁ。追っ掛けしてた地下アイドル、すももちゃん元気かなぁ」


取り敢えず、現実逃避してみた。


あぁ、太陽が眩しいや。


「地下アイドルすももちゃんと言えばミラクルマンモス?」


後ろから可憐な声が聞こえ、振り向くと


「お、王女っ‼︎‼︎⁉︎」


透き通る白肌に天使の輪っかが輝く、艶のある金髪をふわふわさせた第二王女‼︎マジ天使‼︎

可愛えぇぇぇ。惚れても良いですか⁉︎


「あなた、ミラクルマンモスのすももちゃん推しなの?」


「ジュラ紀より、白亜紀よりっ、私を見つめて‼︎

マンモスうれぴぃ〜可愛いすももんですっ‼︎‼︎」


条件反射の恐ろしい所よ…。

俺は首を傾げる王女の前で全力ですももんの自己紹介をしていた……。


「…………。」


王女と俺の間を吹き抜ける一陣の風。

詰んだな、俺。


「あ「嬉しいっ‼︎‼︎」はっ⁉︎」


「あなたも前世の記憶があるのですね‼︎

私、すももんです‼︎‼︎あの、あなたの名前聞いても?」


俺は夢を見ているのか⁉︎⁉︎


生唾飲み込みつつ


「アルフレッド・ラズモア子爵令息…。」

「違うわ。以前のものよ。」

「か、海堂つば、つばたき、つばたんだ。」


⁉︎⁉︎


「つばたんころりん⁉︎覚えてるよぉ〜。」


俺は今、生きていて良かった‼︎‼︎全力で思ってるぜ。

すももんは握手会の時に一人一人あだ名を付けて呼んでくれてたんだ。


「すももん‼︎‼︎‼︎」

「つばたんころりん‼︎‼︎」


俺と王女は歓喜に震えた。

2人で思いつくまま、ミラクルマンモスの歌を振りつけ付きで歌い踊る。


ーーと、


「お前達は、何をしている。」


呆れた声を孕み、睥睨へいげいされる。


「っ。お兄様、ご機嫌よう。」


「プラム…。と、君はラズモア子爵の。」


やべっ‼︎名前覚えられてるっ⁉︎


「そういう事をする時はもう少し奥まったところでしなさい。」


「は、はいっ‼︎‼︎」


そーいうものなのか⁇


立ち去るプラム姫の兄王子を見送り、俺達は更に奥まった場所へ入り前世トークで大いに盛り上がった。


「あ…俺、もう行かねぇと。」


楽しすぎて忘れてたけど、婚約破棄されてるし。

権力欲のかたまりのオヤジにどやされてくるか。


「つばたんころりん、また会える?」

「あぁ!もちろんっ。」


俺は、捨てる神あれば拾う神ありを実地で学び、

はやる気持ちを押さえられずツーステップで王都にある家まで駆けて行った。


馬車なんて物は貧乏子爵には一家に一台だ。


俺の前世の、記憶が戻った時点でチャーターは遠慮したぜ。


俺のテンションはうなぎ登り‼︎‼︎


ーーーーーーだからか。

この時、背後を気にしなかった。

それが……あんな事になるなんて…。


まず、家に帰った俺にオヤジからの鉄拳制裁。

くそぅ‼︎トゥナイト男爵家からは既に報も届き

帰りが遅すぎると叱責も受け、今日は遅いから明日取り直しに行けと……。


ルーレ、会ってくれんのか?


一抹の不安がよぎるも、さっさと寝た。





で?⁇⁇


何で俺は王家へ来て、這いつくばってるかって⁉︎

マジで俺が聞きたいわっっ‼︎‼︎‼︎


何?この、いつかどこかで見た断罪シーン。

王家一族に国の重鎮、ルーレにトゥナイト男爵。

貴族の令嬢達。

オヤジは彫像みたいだ。無の境地てやつ?

顔だけは取り分け美形で見応えあるんだよなぁ。

俺も含めてラズモア子爵家の良いとこってそんだけだもんな。



王が重く口を開く

「令嬢達の言を聞くと、アルフレッド・ラズモア子爵子息は異端の徒であると。」


は、い?


「我が娘、プラムプルーン第二王女も徒であると。」


ないないないない‼︎‼︎


「王! 私は見ましたわ‼︎ アルフレッド様がプラム姫と奇怪な呪文を唱え、一心不乱に踊りまくられていましたわっ‼︎‼︎」


み、見られてたんかいっっ。


「申し開きもないっす。」

俺は気さくに答える。


「けど、王様あれは俺がプラム姫の美しさに見惚れてつい「嘘ですわっ‼︎‼︎」」


「プラム姫が誘導してましたもの‼︎」


すももん、センターだもんな。


「そうですわ‼︎虫も殺さない様な顔をして恐ろしいっ‼︎」

「アルフレッド様はルーレシア様の婚約者ですのよ‼︎」


あれ……なんか、標的がすももんに⁉︎

あれか、出る杭は打たれる、可愛い子は嫉妬されんのか‼︎ よーーし、すももんは俺が守……


「雨乞いですわっ‼︎」


場をぶった斬る様な大声で、すも…プラム姫は叫んで視線を掻っさらう。


「とある東方の部族に伝わる、雨乞いの儀式ですわっ。つ…アルフレッド様は真にこの国の事を憂えています‼︎‼︎」


「だから、文献を漁っていたんだね。」


お、兄王子の助け舟か!


「騙されないで下さいましっ‼︎」

「アルフレッド様はある日を境に人格が変わり、乱雑で荒っぽく貴族である事をうとうかの様に、私達から距離を置き始めましたわっ。」


ルーレの言葉に王族が深妙になった?

何でだ?


「それは、我が妹にも言える事だね? 」


そうか、すももんだって前世は地下アイドル。

オタク達に囲まれてたのに、こんな煌びやかな王城でイケメン達がいると辛くなっちゃうよな。


やっぱ分かり合えるわ、俺ら‼︎

カンッ「うがっ。」


痛ーーっ。

ルーレの奴、俺に向けて鉄製の扇投げやがった‼︎


お前は、俺をどうしたいんだよっ⁉︎⁉︎


「アルフレッド様、異端の徒でないと言うなら

プラム姫の奇怪な踊りが、雨乞いと言うなら

今ここで証明して、下さいませ。」


えーーと?

つまり俺は痒くなる人格に戻ればいいのね?

んで、雨乞い…は、無理じゃね?


とりま、

俺は覚悟を決めたね。

俺のせいで、すももん窮地とか冗談じゃない!


「ルーレシア男爵令嬢。貴女の花のかんばせが憂いを帯びているね? 貴女にそんな顔をさせてしまった罪深き私を許してほしい。」


ルーレのしなやかな手を取り、手の甲に口付ける。

ルーレを見つめ続けながら……。


誰か、俺の忍耐を褒めてくれないか⁉︎

ぐうっ、俺のHPが削れてきやがるぜ。


「それでこそ、私が認めたアルフレッド様ですわ。」


「まだですわっ‼︎‼︎プラム姫が雨を降らせて下さらないとっ‼︎‼︎」


さっきから、噛み付いてるあれは

シノワ伯爵令嬢か……?


「もうよさないか。ティファナ。」


シルバーヘアの髭をたくわえた、じっちゃんだ。


「っ。お父様‼︎ 惑わされないで下さいませ!

プラム姫は異端の徒ですわっ。急な人格の変化、奇怪な踊り…。」


「やめないかっ‼︎‼︎」


パシンッ


「お父様……。」


ティファナ令嬢は、茫然としている。


「プラム姫は美しくたおやかでありながら、意思の強さを持ち、我が国を憂えて下さっている。」


ん?それ、さっき聞いたぞ?


「っ。宰相様……。」


す、ももん??

嘘だろ……やめてくれよ⁉︎

何で瞳、潤ませてんの

半開きの口、やめようか‼︎


「プラム姫……。」


俺らを忘れて、見つめ合う二人。


「両想いですわね。」


なぬっ⁉︎ルーレ、今なんつった⁉︎

俺のすももん……


コホンッ


沈黙を貫いていた王がわざとらしい咳払いをし


「皆の者、茶番に付き合わせて、悪かった。

ラインズ・シノワ宰相、不肖の娘ではあるがもらってくれぬか?」


「私で良いのでしょうか。」

不安気に揺れるシノワ伯爵。


何、この展開ー


「貴方だから、良いに決まってるじゃないですか‼︎」


叫ぶ、すももん。


じじいに抱き着く、すももん。


何、この周りの祝福感……


這いつくばった俺、当て馬すか⁉︎




「ふふっ。アルフレッド様、また人格が市井風情に戻られたら、破棄してあげましてよ? 今は保留ですわ。」


「アルフレッド、今度、破棄されたら身一つで放逐してやろう。」


オヤジ、ぶれねぇな!


「あら、そうしたら私がペットとして拾ってあげましてよ、アルフレッド様。」


ルーレ、それはお願いしよう。キリッ。


「ルーレを困らせたら、またプラム姫がアルフレッド様を腑抜けにしたと思わざるをえませんわ。」


ツンとしながらシノワ令嬢。




すももん。俺のすももん…まさかのじじ専だとは…




めくるめく嵐が俺の中を吹きすさぶった……






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ