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オッサンだってキャバ嬢戦士だもん!  作者: オレイカルコス松村
始まりの章 異世界のキャバクラ
8/59

7drink「源氏名」

 

「では改めて、ようこそキャバクラ『LovEooze(ラヴーズ)』へ。私が店長でオーナーのフクロウだ。宜しくな」



 黒服さんは店長だった。そういえば、前にうちの店で働いて欲しいとか言ってたっけ。道理で偉そうな態度をとるわけだ。

 つか店長でオーナーって事は、この建物自体がこの人の持ち物なのだから当たり前か。

 店名はラヴーズ……愛する人たち? ピョンピョンでは無かったんだな。



 あれから一週間後、俺はまたこの異世界のキャバクラに来ている。元の世界に戻った時にはもうここへは来れないかも知れないと思っていたが、今日ふらっとキャバクラに飲みに来たら、普通に来れてしまったのだ。

 しかもこちらの時間では、あの体験が昨日の事になっている。


 なんかロールプレイングゲームを週に1回プレイしているような、変な感覚だがそれはそれで面白い。

 今は開店(オープン)前準備の時間を利用して、あの時にいた3人と一緒に、簡単な説明を受けようとしている所だ。



「衣装部屋と化粧室はその部屋の中だ。中に置いてある衣装は自由に着て構わない。週に3回クリーニングを頼んでいるので、汚くはないから安心しろ」



 なるほど、衣装は借りる事ができるのか。でもクリーニングが週に3回って多くないか? 汚そうと思ってもそんなに汚れる物じゃ無いと思うんだが。

 それとも、汚し好きな客がいるとか? もしそうなら俺もじっくり見ておきたい。……勉強的な意味でな。



「えぇ〜でも、あたいは他が着たドレスなんて着たくないんだけど!」



 ギャル子ちゃんが反論してる。

 まぁ普通そうだよな。衣装とはいえ、半日も着たら汗はかくしシワも付く。ましてや前の日に違う子が着ているのとか、男同士でそれをやれっていわれたら絶対断る。



「自分で持って来ても良いぞ。だが、汚れた場合の責任はこちらでは持たないからな。自分でなんとかしろ」



 どうやら自分で持ち込んだ衣装は自己負担でクリーニングしなければいけないらしい。まぁ分からなくもない。衣装が増えればクリーニング代もバカにならないからな。

 渋々うなづくギャル子ちゃん。



「あと、道具は調理場に置いてある物を好きに取って使ってくれ。ただ、他の者が専用に使ってる物もあるから、そこはそれぞれ話し合って決めてくれ」



 ん? どういう意味だ? 調理場って前回の時に見たキャバクラ道具が散乱してる場所の事だよな。自分で設置しろって事か? まぁ後で聞けば良いか。



「それと……あ、そうだ。お前らの源氏名を決めておかないとな」



 源氏名! そうだよ! キャバクラといえば源氏名だ。すっかり忘れてたわ。キャバクラ通い歴20年の俺とした事が、キャバ嬢の代名詞を忘れるとは……。

 どんな名前にしよう? 俺の名前が木場蔵大介(キバクラダイスケ)だから、ここから1文字使うか? 大介……大介……。大子? 大美? だせぇ。ダサすぎる! なんかもっと違う気品があって可愛くてありそうでなさそうな……。



「我はもう『ハガネ』と決めているぞ! この名以外は断じて受け付けん!」



 モデル子ちゃんが、上半身を乗り出して声を張り上げる。

 ……びっくりした。この子こんな喋り方するんだ? 我とか、どこの王女様だよ。

 でも、腰を浮かしたおかげで拝めました。きゅん尻健在。



「ああ、お前は酒乱堂(シュランドウ)家の娘だったな。ならば当然か。よし、許可しよう」


「あぁ〜ずるい! じゃあ、あたいは『ギャルるん』!」


「う……む、まあ、良いだろう」


「いぇ〜い!」



 ギャル子ちゃん、やっぱ良いわぁ。喋り方はなんかアレだが、乗りが軽くて和む。けど源氏名が決まってしまったから、もうギャル子ちゃんとは呼べないのか……残念だ。


 あと気になるのは、モデル子ちゃん……じゃなくてハガネちゃんの方か。

 シュランドウ家とか言ってたな。やっぱり良いところの子だったみたいだが、よく分からん。


 ここに来るのはまだ2回目、知らなくて当たり前だが、最低限この世界の常識くらいは知っておきたい。聞きたくても聞きにくい部分。ゲームとは違って、この辺がリアルのもどかしいところだな。



「で、お前らはどうする?」



 そういって、俺とロリ子ちゃんを交互に見るフクロウさん。黒服のフクロウ。覚えやすいな。俺もそんな感じの覚えやすいヤツにしよう。



「……」


「どうした、思いつかないのか?」



 ロリ子ちゃんは、口が半開きのまま答えない。さすがだ。おそらくメチャクチャ考えている最中なのだろう。俺も早く考えねばと思った時、彼女が声を漏らす。



「……ヒゲ子」


「ひげこ? ひげこだと? お前、それで良いのか!?」


「……うん」


「そ、そうか。お前が良いならそれで良いだろう。後悔は…するなよ?」


「……しない」


「……分かった」



 ん? ひげこ? なんでひげこ!? ひげ生えてないじゃん。むしろツルツルじゃん。も、もしかして地下室(アンダーヘア)!? 地下室(アンダーヘア)が凄い事になってんの!?

 混乱してたら、フクロウさんが俺の方に身体を向ける。



「後はお前だけだが、なんか面倒臭くなってきたな……。よし! お前は特別に、私が命名しよう!」


 え?


「安心しろ! 私が源氏名を考えてやったキャバ嬢は皆、上位(ナンバー)になると言うウワサだ! 光栄に思うが良い!」


「お前の本名を言ってみろ! その本名の一部を取って源氏名とするのだ!」


 え?


「おら! 本名を言えって!」


「き、木場蔵(キバクラ)……」


「きばくら! ではお前の源氏名は、『きば美』だ!」



 ええ? ち、ちょっと待って! そんな簡単に決めなくても……っていうか、恥ずかしいシミみたいな名前になっちゃったよ!!



「あ、あの済みま……」


「お!? もうこんな時間か! 早く着替えに行け! 開店(オープン)まで時間がないぞ!!」



 足早に席を立ち、逃げるように奥へ消えていくフクロウさん。



 きば美……です! うふ!

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