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オッサンだってキャバ嬢戦士だもん!  作者: オレイカルコス松村
始まりの章 異世界のキャバクラ
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3drink「3人が気になる」

 黒服の女性が指した先には、2つの丸テーブル。その上にはキャバクラで使用する道具が置いてある。

 ボトルが6つとグラスが9つ、ピッチャーにアイスペールが3つ、あと灰皿が沢山。

 ボトルが茶色と緑色の各3本ずつあるのを考えると、たぶん先に座っていた3人の為に用意された物なのだろう。俺の分はどこかなと黒服の女性の方に振り返ると、



「すまない、お前のは用意してなかった。こっちへ来てくれ」



 黒服のお尻を追いかけるように部屋の右奥へ進むと、部屋の壁に縦長の四角い穴がポッカリと空いてる箇所があり、そこをくぐる。

 すると、目の前に現れたのはキャバクラ道具の山々。この倉庫みたいな部屋自体の大きさは六畳くらいありそうだが、所狭しと置かれ山積みされたキャバクラ道具や、空のボトルが散乱している浴槽のような物のせいで、物凄く狭く感じる。今は黒服と俺が居るだけで満員状態だ。



「……ここ、もしかして調理場ですか?」


「お? よく分かったな。私が新人だった頃は調理場として使われてたぞ。今はまぁ、ご覧の通りだ。ははは。」



 ははは。じゃねーよ!

 こんなひでぇ調理場見た事がないわ!


 たぶんこの浴槽みたいな物は大きめの流し台で、道具の隙間から見える小窓は換気に使ってたんだろーな。あと、調理台は……わからん。

 こんなんじゃ、せっかくボッタクリ放題出来る盛り合わせ系が出せないじゃないか!

 ……て、なんで俺が経営者目線で怒ってんだよ!?



「道具はここから適当に持っていってくれ」


「え? あ、はい。わかりました」



 そうだ、試験だった。


 俺は伊達にキャバクラ20年も通ってない。キャバ嬢が足らなくて店内で出勤待ちしてる時なんかは自分で酒作っちゃってたし。100%受かる自信があるわ。

 まぁでも一応、この店のお酒がどんなもんなのかは味わっとかないとな。


 この店のボトルは2種類。普通なら、焼酎とウィスキーだな。

 んで、こっちの小さいグラスはキャバ嬢用のレディースグラスで、大きいのがお客様用のゲストグラス。レディースグラスは試験には必要ないから、これにお酒をちょっと入れて飲んでみる。


 緑色のボトルは、焼酎っぽいな。かすかに甘くてほろ苦い。クセが強いから割ものの方が合いそうだ。

 茶色のボトルは、強い独特の香りに舌がしびれる程の苦さとほんのちょっとの甘辛さ。俺の大好きなウィスキーだ。

 どちらも割ればそんなに強い酒ではなく、むしろ物足りなさを感じる。

 まさに、キャバクラの酒って感じだ。これなら俺の好きな割り方で問題なさそうだな。


 次は氷を見てみる。氷は形や水の純度、製法によって味が変わるらしい。今このアイスペールに入れてある氷は、倉庫……じゃなくて調理場にあった保冷箱のような物に入ってたのだが、形がかなり特殊だ。多面カットされた球体、ようするにミラーボールのようになっている。

 こんな手の込んだ氷は初めてみたわ。確か球体型は、四角形より溶けにくいんだっけ? 多面カットの場合はどうなるのか分からないが、氷はこの形しかないので選ぶ必要は無いな。


 前方に目を向けると、3人のキャバ嬢候補が真剣な眼差しで色々と面白い事をしている。


 まず金髪のウェーブが目立つ、全身アクセサリーだらけの女の子。

 化粧は濃いめだがクドさは感じられず、逆に美点を引き出しているように見える。身体つきもよくセクシーだ。ギャルっぽい子は好みでは無かったのだが、この子は可愛い。

 ギャル子ちゃんと名付けよう。


 彼女は灰皿を1枚使い、その上にグラスを伏せている。灰皿はガラスのように透明な材質の為、グラスと組み合わせるとまるで1つのガラス彫刻のように見える。

 伏せた氷が置かれている。氷は多面カットなので照明の光を反射しガラス彫刻の周りに幻想的な世界を映し出している。これだけでも芸術なのだが、彼女はそれに甘んじる事なくさらに、ウィスキー傾け、氷にお酒を少しずつ垂らしていく。

 キャバクラ道具の美しさを、相互作用により引き出したという点で言えば、最高得点なのではないだろうか。


 次に長く青い髪が特徴的な女性。

 髪は頭の後ろで1つに纏めていて、アクセサリーなどの装飾品は一切付けていない。こう説明すると地味なように感じるが、そんなことはない。

 大きな濃紺の目に少し吊り上がった目尻、鼻筋は通り唇の膨らみはないが清潔感のある形だ。女優のスッピンを見たような印象を受ける。ギャル子ちゃんに比べて身体つきは多少劣るが、それをカバーする長い手足は目を惹きつけるものがある。一言でいうなら、モデル美人。

 この子は、モデル子ちゃんと名付けよう。


 彼女は氷の入ったアイスペールの中に、両手にに持ったウィスキーと焼酎を傾けドボドボと流し込んでいる。

 雑な感じに見えるが、理に適った手法だ。氷をグラスに移すくらいなら、元々氷が入れてあるアイスペールをグラスに見立ててしまった方が、ひと手間省ける。それを飲んでる間に氷の補充が出来ないとか、水割りしてないのでお酒代がかかる事など些細な問題だ。

 豪快でちゃんぽんが好きで大酒飲みなら諸手を挙げて喜ぶかも知れない。


 最後に赤髪のオカッパ頭で左右にエクステみたいな長い飾りが付いている女性。背が小さく童顔で、この中では1番年齢が低いように見える。眠たそうな薄眼に、集中し過ぎているのかどうか分からないが口が半開きになっている。何か物事に真剣に取り組む女性ってのは良いものだ。がんばれロリ子ちゃん!


 彼女はレディースグラスの中に氷を数個入れて、それをゲストグラスの中に入れている。2重グラスだ。そして、ゲストグラスの内側とレディースグラスの外側に出来た隙間に、器用に酒を流し込んでいる。一見すると普通に作ったお酒の用に見えるが、覗きこむとグラスの周りにだけお酒が入っている。この発想は天才かもしれない。


 3人とも、俺では考えつかないような素晴らしいお酒を完成させた。ぜひ受かって貰いたい。可愛いし。

遅筆ですが、1週間に1〜2話のペースで頑張ろうと思います。宜しくお願いします。

m(_ _)m

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