表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オッサンだってキャバ嬢戦士だもん!  作者: オレイカルコス松村
始まりの章 異世界のキャバクラ
2/59

1drink「ピョンピョンに行こう」

 夕方過ぎから急に強く吹き始めた風が、散らつき始めた雪と共に電車の中で温められた俺の全身を冷やしていく。帰宅の波に流されながら1人の男が誰に話しかけるでもなく思わずつぶやく。



「う〜……さみぃさみぃ、この寒さはもうアレだ。完全にキャバクラだ。」



 冬。といってもバレンタインデーが今週末に控えているので、春はもう目の前だ。

 だが、東京はこの次期が一番寒い。雪が散らつくぐらい寒い。行き交う街の人々の格好も、これ以上厚着出来ないってくらい着込んでいる。


 これだけ寒いと人肌が恋しくなる。

 彼女のいない俺はさらに恋しい。

 この時期にバレンタインデーイベントを考えた人は、俺と同じく人肌が恋しくて作ったのかも知れない。

 だが今やこのイベントは、彼女若しくは彼女候補がいる人限定になってしまっている。街中にハート型やピンク色のパッケージが散見してるって事は、それだけこのイベントに参加出来るヤツが多いと言う事だ。くそったれ。

 だが、俺も男だ。彼女がいなくてもこれは参加しなければならない! 人肌も恋しい!


 そんなわけで今夜も『キャバクラ』に直行だ。

 寄り道はしない。


 キャバクラといっても、テレビドラマとかで見るような何十人ものキャバ嬢が出迎えてくれたり、高級なドレスに身を包んだ美しい女性が接客してくれたりするような所ではなく、20組も入れば満員の小規模店だ。

 そもそも俺は高級キャバクラが好きじゃない。女性が綺麗なのは嬉しいが、接客の上手い女性はそれほどいるわけではなく、いたとしても大抵指名を貰っている。指名されていると、初めて店に来た客はその子と話す事すら出来ない為、遠目で判断した結果『たぶん綺麗な女』になるわけだ。

 比べて小規模なキャバクラはボッタクリじゃない限り、大体アットホームだ。難しい話しなどする必要もなく、気軽に日常会話が楽しめ、可愛い子も多い。箱(部屋)が狭いので指名を貰っている子の顔も表情も近く見える。よって客からは『確実に綺麗な女』となり、場内指名しても失敗しないというわけだ。

 まぁ俺も稼いでいれば、高級キャバクラに通いまくって指名しまくるんだけどな!


 つか元来キャバクラってのは、高級志向のキャバレーから安い金額でも楽しめる店へ転換した商売で『3回指名すれば1回デートできる』が売りだったと聞く。

 なのに最近はキャバ嬢もスタッフもその売りを知らない。

 哀しい時代になってしまったようだ。俺もデートする為にひたすら口説き、約束は死ぬほどした。

 が、ドタキャンも死ぬほど喰らった。というよりドタキャンがデフォルトで、そこに『and』が付く。


 例えば、

『ドタキャン』and

『買っておいた映画のチケット』


 まぁ、1人で観に行っても恥ずかしくないのなら、ぶっちゃけそんなに苦じゃない。むしろ2度目の映画に活かせれば、その後の感想で映画コメンテーター並みの力を発揮できる。


『ドタキャン』and

『デートスポット』


 これも、視察だと思えば苦じゃない。実際行かなければ楽しいかどうかも分からないからだ。面白かった場所だけ覚えておけば、また次回に活かせるからな。


『ドタキャン』and

『新名所が一望できるレストランのペアシート』


 これは多少キツかった。まずペアシートというのがダメだった。ペアシートを1人で陣取る客などいないからだ。あと、食器が2人分用意されているのもまずい。

 なのであらかじめ連絡をとり、食器を1人分にしてもらった。ディナーの予約は高いのでキャンセルはせず、あたかも1人で来たかのように振舞ってみた。

 まぁ、周りからからすれば一目瞭然だったと思うが。


 まぁ恋愛ってのは、いつでも一方通行だ。ましてや相手は会いに行けるアイドル。約束が出来るだけマシってもんだろう。

 ただ、一番哀しいのは『水揚げ』。

 つまり水商売から足を洗う事だ。

 年の若いキャバ嬢が水揚げする理由。それは交際、結婚だ。


 これには、流石の俺もキツい。

 ドタキャンくらいなら、その後店で会う事もできるが、交際や結婚となるとそのキャバ嬢に恋心を抱いていた自分もしては、叶わぬ恋で敗れる事よりも、そのキャバ嬢と一緒になった男性が居るという理由になる。

 これをやられた時は丸々二ヶ月キャバクラに行く事が出来なかった。


 これだけドタキャンを喰らっているのに関わらず、相変わらず俺はキャバクラに通っている。それはなぜか。 今の俺には分からない。

 これはキャバクラに通う自分の人生をかけた課題になるのだろう。



 俺の名前は、木場蔵大介(キバクラダイスケ)

 キャバクラ歴20年の何処にでもいるようなふつーのオッサン。



 こんなふつーのオッサンが通う小規模なキャバクラがここ『コスプレキャバ・ピョンピョン』だ。ここはもう15年程の付き合いになる。店名はころころ変わってはいるが、本質はそのままだ。

 時刻は丁度21時。開店準備で忙しいのか客引きのスタッフはまだいない。だが俺は迷わずエレベーターのボタンを押す。

 ピョンピョンでは、バレンタインデーウィークに来店して指名すると、指名のキャバ嬢から義理チョコを貰えてしまう素敵仕様だ。

 早い時間帯なので1時間飲んで4000円。指名で2000円。TAX込みで合計6600円。6600円で義理チョコを購入でき、なおかつ人肌も味わえる。


 期待を胸に、冷えきった身体を震わせながら待つこと数十秒。

 チーンという到着音と共にエレベーターの扉が開く。颯爽と店内に入る俺。



 そこは、いつもの『コスプレキャバ・ピョンピョン』ではなかった。

初投稿です。つたない文章ですが暖かく見守って頂けると幸いです。m(_ _)m

1時間ごとに3話まで連続投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外部ランキングへ
作品が面白いと思ったらココをクリック!
アクセス数が伸びるかも!?

美少女勇者はワシが操縦しています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ