12drink「修行」
心酔闘技の修行を開始して2日目。
依然として、俺、ギャルるん、ヒゲ子の3人はオーラは出せていない。ハガネはご覧の通り。
「ちょわぁあ! はぁやあ!! へりゃぁあ!!
先週……じゃなくて昨日と全く変わらない正拳突き。
だが、大きい……大きいよ、オーラが。
今やハガネの両手にはめてあるグラスの周りには、彼女の頭がスッポリ入りそうなくらい大きなオーラが湯気のように立ち昇っている。
一方で、俺の方はと言うと……。
全然出来ねぇ!! つか、全く出来る気がしねぇ!! 何故だ!? ちくしょう!!
予定では、俺様のチート能力である、
『一週間後之明日』を使って1週間自主練すれば、みんなより先に会得出来るハズだったのにぃ!!
「おいおいおい! お前らちゃんと心酔させてんのかぁ!? 気合が足らんぞ! 気合がぁ!!」
フクロウさんも気合バッチリだ。
言葉は足りないが優しさを感じる。
「お、お取り替えしますねぇ〜」
「今、作る……」
「違う違う!! もっと愛情を込めろ! 言葉と仕草で魅了させるんだ!」
心酔術すら出せていない俺が言うのもなんだが、心酔闘技とは闘いながら相手を心酔させる技。
心酔術さえ使えるようになれば簡単に使いこなせそうに思えるが、実はこれがかなり難しい。なにせ動き回りながら相手を惚れさせなければ行けないのだから。
下手な体制でもとってしまえば、相手は冷めてしまうだろう。如何に魅了を継続させながら闘うかが課題となる。
そうなると必然的に戦闘時の動きは限られてくる。
それが舞いながら闘う、舞闘スタイルだ。これを身に付ける事で、美しく踊りながら闘う事が出来る。
俺が先日アレカグヤ先輩に見惚れてしまったのも、まさにこの踊りのせいだった訳だ。決してリズミカルに揺れる、御山の頂きを凝視していたのではない。
今ギャルるんとヒゲ子がやっているのは、接客用語を口に出しながら心酔闘技をこなすと言うアホみたいな特訓方法だ。
だが、上位も戦闘時にはこの方法を使っていたのを考えると、実戦に近い良い訓練なのかも知れない。
だが、例外もある。
ハガネだ。
フクロウさんは彼女の事をカンが良いと思っているみたいだが、あれは完全に天然だ。天然のみでオーラを出している。
彼女がやってるのは正拳突き。
正拳突きしかやっていない。
のに関わらず、オーラを出している。
ソコから出る答えは……スポーツに真剣に向き合っている美しさだ。
スポーツ観戦をしているハズが、気がつくとその女性の身体ばかりを見ているような、あの感じだ。真剣なまなざし、ひたむきに打ち込む姿勢。もともと見た目がモデル並みにキレイだからな。
天然で心酔術を使いこなすとは……。
はっきり言って反則だ。
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修行3日目。
ギャルるんとヒゲ子の2人がオーラを出し始める。
……俺はカスすら出ない。
最近思う。心酔術が使えないのは、もしかしたら俺が男だからかも知れないと。
周りからしたらまだ3日目の修行だが、俺からしたら2週間以上経過している。
元の世界ではオーラは見えないが、動作やオーラをイメージしたトレーニングはやってるので、皆より4倍近く修行している事になる。
それでも結果に出ないと言うことは……。
いや! そんな事はない!
俺が必要ないなら、何故この世界に呼ばれた!?
何か理由があるハズなんだ。
……そうだ。自分自身を『女』と思って生活してみると言うのはどうだろう?
身体はすでに女なのだ。後は心も女になってしまえば、使えるようになるかも知れない。よし、この線で行こう。
そんな事を考えているとフクロウさんがやって来る。
「どうした? 若干、顔色が悪いような気がするが」
さすが店長だ。キャストの体調をすぐさま見抜くとは。これは、大丈夫だと告げよう。もちろん『女』として、な。
「な、……なんでもないもん!」
ど、どうだ?
「お、お前……本当に、大丈夫か?」
……逆に心配されてしまった。
それから俺は、自分の世界に戻っている間も『女』を意識しながら生活してみる事にした。
女性の気持ちを知るために、メイド喫茶で可愛いポーズをさせてみたり、ガールズバーで今日はいている下着の色を聞いてみたり、スナックでその子が一番気に入っている身体の部分を教えてもらったりした。
これでかなり俺も『女』に近づいたハズだ。
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修行開始から6日目。
ハガネは、両手にはめたグラスから金色のオーラを放つようになった。今の彼女なら、まともに客と闘っても遅れをとる事は無いのかも知れない。
ギャルるんはコースターから灰皿に替え、灰皿の端からは盾のような強靭なオーラを出すまでに成長した。
ヒゲ子は手持ち型のマドラーから背負い型のアイスペールにし、そこからトングで氷を投げ飛ばすスタイルに。
投げる氷には、金平糖の先を尖らせたような形のオーラを纏っている。
気になる俺のスタイルは、なんと……。
心酔闘技のスタイルどころか、心酔術すら未だに使えていなかった。
そしてそのまま、客の来店する開店の日を迎えることになる。




