表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千の英雄   作者: 中川柊木
プロローグ
1/19

0話 千の英雄

「……い! …………を……『忘れないで』」


 俺の意識がまだ希薄な中、唐突にそんな声が聞こえたような気がする。

 その声の主の姿形は不鮮明だが、なぜか聞き憶えがあるような懐かしい感覚だ。

 だが、その声の女性の顔がどうしても思い出せない。いやなぜ体が、意思が、こんなにも声の女性を思い出そうとしているのか不思議でならない。



(……本当に、悪かった)



 そして意味もなく、誰かに謝罪する。体中の感覚が鈍い中、仄かで生暖かい涙が頬を流れたのを感じた。


 俺は、なぜ泣いているのだろうか? 


 記憶も混濁し、五感も冴えないという状況で。ただ、誰かを想って……俺は、なぜ……。

 そうして思案に暮れていると、次第に意識が鮮明になってきた。





 ◆





「どこだよ……ここ……」


 涙も既に乾いた目蓋を開けた瞬間、景色に圧倒され、思わずそんな言葉が漏れる。

 気が付くと、俺は寒気がするほど真っ白な場所にいた。少し気怠い。

 いつまで俺は寝ていたんだろう。


 寝惚けた頭を振り、ゆっくりと体を起こし、辺りを眺める。一面真っ白で『無』の空間。

 出口という出口が見当たらない。しかもなぜか記憶が無く、自分の名前すら思い出せない。

 唯一、分かることと言ったら、俺が日本人ってことぐらいなのと、長い刀のような刃物を腰に三振り差しているってことか。


  「はッ!? なんで腰に刀あんの!?」


 どうして腰に刀が……俺は一体今まで何をしていたんだ? それに、全て値段が張りそうな上物の刀しかない。


 一振り目は鞘が黄色っぽいし、柄も黄色だし。二振り目は不気味な数珠が柄に掛かってるし。三振り目は日本刀ってより、西洋の剣っぽいな。

 そして、この三振り目だけ御札の様な紙が余す所なく、敷き詰め、張られている。

 日本刀は俺の腰に巻かれている帯に上手いこと差してあり、簡単には抜けないみたいだ。

 服装が上下ジャージっぽい格好なだけに、日本刀は似合っていない、というか浮きまくりだ。


「に、偽物だよな……」


 そうだ偽物に違いない。ただ日本刀に似ているだけの贋作。或いは、鞘とか柄の見える部分だけ凝ってるように見せかけて、中身の刀身はプラスチックの安物のはず。

 そう思い、確かめようとしたが、何故か鞘から刀が抜けない。あれこれ色々な方向から引き抜こうとしたが徒労に終わってしまった。


 そんなことをしている内に、少し時間が経ち、色々な疑問が沸く。

 先ず、なぜ記憶が無いのか。なぜこの場所にいるのか。なぜジャージ姿で三振りも日本刀を持ってるのか。

 駄目だ、考えれば考える程、冷静さを失いそうだ。あ、記憶のことだけど、思えば2020年くらいまでの地球の世界情勢や歴史とかの記憶はあった。

 それはどれも常識の範疇で、俺に関する記憶は全く無いけど。

 つまり言葉を話したり、日常生活を送れる程度の知識しか持っていない。


「こんな時は、助けを呼ぶのが先決か」


 溜息混じりに小さく呟く。

 思えば、俺の今の状況は非常に危ない。なにせ、記憶が無くて軽い監禁状態、人生に置ける窮地と言っても過言じゃない。


 流石に助けを呼ぶか。そう思い、気持ちを切り替えて、肺に目一杯空気を送り込む。


「すみませーん! 誰か居ますかー?」


 全身全霊の大声を出すが……返事が無い。

 失敗のようだ。返事が無いとは予想していたが、いざ無いと本当に落胆してしまう。


「はぁー、何でこんな事に」


 今度は大きな溜め息が漏れる。夏休みの最後、溜まりに溜まった宿題を目にした時と同じような気分だ。

 出口なんて見つかりそうにない、どうすれば。


 焦燥感に駆られだした、その時――――


 白い空間の中に光が集まり始め、瞬く間に『ある形』に収束していく。強烈な輝きの中に見える、その形は、正しく、


「人体か? これって……」


 いやそんな訳ない。人間がまるで瞬間移動みたいに出てくるとか、どこかの神様か何かだろう。

 俺は最悪の事態を予想しながら、黄色い日本刀の柄を強く握りしめた。


 そして、光が集まり出してから何秒か経った時、金髪ちびっこ少年がいきなり現れた。そういきなり、突然に、だ。


 少年は一言で言うと、中性的な顔立ちで可愛さ溢れる美少年。

 服装は昔の西洋絵画に描かれているような天使が羽織っているローブを着ている。

 本当に神様みたいな装いに、俺は開いた口が塞がらない。

 少年は、そんな俺の様子を意にも介さないように言葉を放った。


「おっはー! 先ずはおめでとう! 君は序列『千の英雄』と認められ、輪廻の輪から外れましたー。そして僕は、神様です!」


「……は?」


 口をポカンと開けて、頭の上に特大の『?』の文字を浮かべる。

 瞬間移動してきた普通の人間なら未だしも、本物の神様(仮)を目の当たりにして、俺は顎が外れそうな勢いだ。


 神様? 輪廻? 序列? 何もかもが唐突すぎて、意味が分からない。

 俺は、現実世界では死んだってことか? 

 だが肉体的にはまだ高校生ぐらいだと思うんだが。それに、この神様は本物なのか? 

 本物だとしても調子が軽すぎじゃないだろうか。

 もっと神様ってのは、威厳があって壮大で堂々としている人だと思っていたんだが。

 そんな激しく動揺している俺を無視して、神様(仮)は言葉を続ける。


「おー! 普通に言葉が分かる辺り、魂の同調は成功したんだねー。今のとこ同調率は3人合わせて3パーセントくらいかなー」


「ちょ、ちょっと! 神様さん。魂とか意味不明な事はどうでもいいから、もっと詳しく教えてくれ」


「詳しくって何をー?」


「だから、俺の記憶が無いことや、俺をここに呼んだ理由とか。俺は死んでるのかとか」


 そうだ、ここは俺の状況を聞いて見るのが先だ。このチビッ子が本物の神様かは分からないが、今は頼る他ないしな。


「うーん。君の記憶を消したのは、ある条件をクリアするため。ここに呼んだのは、地球じゃない世界に転生……いや召喚してもらうためだよー」


 考えるより、言葉が先に出る。


「召喚!? なんで俺が?」


「それは先も言った通り、君が地球で序列『千の英雄』だからさ」


「は? …………俺がッ!?」


「そうだよー。まぁ、もっと詳しく話すと君の魂の能力が凄すぎるからね、英雄として認められたんだ。確かに、他の英雄と比べて肉体的には足元にも及ばないし、魔力も皆無だし、後世に語り継がれるような偉業は何一つしてないし、時代的に見ても千人の英雄の中では一番後。それに序列も最下位だしね。英雄っぽくないのは分かるよ」


 ふむ、大体話が掴めてきた。即ち、俺がここに呼ばれたのは英雄として認められたからで、その力を異世界で遺憾なく発揮して欲しいという事だろう。

 確かに、神様から英雄と認められたのは嬉しい。が、しかしだ、俺って殆ど一般人同然だよな。


「いや、むしろ魂? 以外は一般人じゃねーか!」


 それに異世界に召喚ってどんなファンタジー物語の設定だ。一先ず、俺は英雄なんかじゃないし、ここは丁重に召喚をお断りして普通に生まれ変わろう。


 そして、俺が断りの言葉を言う前に神様が口を開いた。


「君、今『俺は英雄じゃないから、異世界に行くのは無理だ』とか思ってるよね?」


「…………ん?」


 ハッと、我に返ると同時に、


「こ、心を読んだのか!?」


「うん、そうだよー。何たって僕は神様だからねー、森羅万象は疎か、天と地の理、果ては宇宙創造の歴史までお見通しさー。だから君の阿呆な思考を読み取るなんて造作も無いってこと」


 す、凄い……神様、少しだけだが神様を尊敬し直した。あんな年端もいかないようなクソ○キがそこまでとは。


「なーにがクソガキかなー?」


「ヒィッッ!?」


 思わず気色の悪い声が出る、これじゃ完全に雑魚だぞ俺。


「まーいーけど、君の場合時間が無いからよーく聞いてねー」


「おい待て! 俺は異世界に行くとは言って無いぞ。それに、何で千人の英雄をその世界に送り込むんだよ。そんなにその世界は危ない状況なのか? てか、神様だったら人に頼らず自分で何とかしろよ!」


 俺がそう言った瞬間、神様が殺気だった顔をしたのは気のせいだろうか? いや気のせいだろう。


「あのねー、いくら神様でも出来ないこともあるのさ。後ね、君の言った通りその世界【イノセント】は……今は、そうでもないけど人類存亡の危機なんだよ。そして、なぜその世界に千人の英雄を送り込むのか。もう言わなくても分かるよねー? そう君には、この世界を救ってもらうのさ」


「ま、ま、ま、待った! お、俺が? せ、世界を救う?」


「そう! イノセントの各国は亜人やら魔獣やらに侵略されてるんだ。でも、僕の手で世界に直接的に干渉出来るような事は出来ない、人類をこのままでは救えないんだ。でも、地球で既に死んでしまった人間をイノセントに送り込むぐらいの違反は出来る。だから、この世界の未来を、僕は君達に託す」


 おい、待て待て待て。世界を救う? 冗談じゃない、俺がそんなに強い訳無い。

 大体聞きたい事は山程あるって言うのに。その世界にはモンスターが腐るほど居るんだろ?

 俺みたいな奴が行った所で高が知れてる。秒殺、そうなるに決まってる。


 一先ず、俺は世界なんか救えない。それは判りきってる。今からでも間に合うのなら人選をやり直して貰おう。


「『人選をやり直す』か……。全く、千人の英雄の中で君が初めてだよ。こんな大義を投げ出す奴なんて」


 俺が思考している、その時、また心を読まれた。神様は悲しげな顔をしているが、じゃあどうすればいい? 

 力も無いのに救世主になるなんて、ただの大言壮語だ。

 ここは、一般人代表として神様にビシッと言ってやる。


「確かに、他の999人の英雄は自分に自信を持っていて、『世界を救え』なんて大義を神様に言われたら、喜んで引き受けるだろうよ。だけどな、俺は違う。漲る自信は無いし、世界を救う力も無い。断るのは当たり前だろ?」


 そう言うと神様は俯いた。お、効いたか、と思うも、直ぐに顔を上げニヤリと微笑を浮かべる。


「一つだけ君の勘違いを正そうか」


 勘違い? どこにそんな要素があるのか。少しだけ前の発言を遡上するが、やはり、勘違いしている所などない。


「勘違いって何の事だ?」


「世界を救う力が無いって君は言ったよね? でも、それは違う。君は持っているんだ、その力を」


「は? そんなの嘘に決まってる。俺は英雄になんか相応しくないし、力もない。そんなの神様なら見れば分かるだろ?」


「英雄には相応しくない……か。そこは問題ないよー、何たって神様が多士済々の英雄の中から選んだ人間だからね」


「じゃあ何で多士済々の英雄の中から俺を選んだんだよ!」


 そうだ、そう言えば俺はなぜ序列千の英雄に選ばれたんだ?

 その理由を聞いて納得出来なかったらマジで普通に生まれ変わろう。


「それは最初に言ったと思うんだけど……君が持っている魂の能力の事さ。これまで幾億の人間や生物を見てきたけれど君が初めてだったんだ、魂の特異体質は」


 魂の特異体質? それが気になり神様に質問を投げ、幾つかのことが分かった。 


 先ず、この宇宙全体における全ての生物は器を持っている。そして器が完璧に出来上がり次第、輪廻の輪から適正があると判断された魂が器に嵌められる。

 そして生物が死ぬと、その魂はまた輪廻の輪に戻り、また来るであろう魂の選定まで、そこで待機する。

 生物が死ぬと生前の体験した記憶は無くなり、能力はある程度引き継がれる。俺の今の状況は正にこれだ。


 なぜ俺に2020年までの地球の世界情勢などの記憶があるのかと言うと、神様が言葉を話せないのは不便だろうとの配慮と、ある程度の知識がないと異世界で活躍出来ないだろうとの事で、自分以外に纏わる生前の世界の記憶を与えたらしい。

 これが、絶対不変の世界の理のはずだが、俺は違った。器に魂を嵌められるまでは普通だったのだが、『前世で死ぬまでの数年間』で魂の性質が変質してしまったのだ。


 そして、輪廻転生の際、俺の魂は変質しているから適正の器があるはずもなく、ずっとあぶれていた。それを見かねた神様が回収したってとこだ。

 適正の器が見つからないのは俺以外にも沢山居て、大抵英雄と呼ばれる者は、前世で残した経歴が偉大過ぎて、死んでから数千年の間は適正の器が見つからないらしい。

 その使い道がない魂を前世の器(無理やり再現した)に無理やり入れ込んでコキ使おうとしているのがこのちびっこ(神様)ってことだ。


「結構そっち側の事情は呑み込めたけど、まだ俺の特異体質やらは聞いてないぞ」


「うん、そのこと何だけどね……深く言えないんだ」


「は? 何でだよ。正直に言わないと俺マジで普通に生まれ変わるよ」


「言いたいのは山々何だけど、君に纏わる情報をこれ以上与えてしまうと異世界に行けないんだよ。ほら生まれ変わるときって記憶とか何もないでしょ? それはこのイレギュラーな召喚でも同じで、記憶を与えすぎたら世界そのものに拒絶されてしまう。コンピューターの対ウイルスプログラムと同じさ。おかしな奴が現界したぞって僕の耳に入って抹殺しなくちゃならなくなる」


「…………まぁ、神様が無理矢理にでも俺達をその世界に送ってんのは分かった。だが、じゃあ俺はモンスターが群生してる超危険な世界に能力も強さも分からないまま行かなきゃ行けないのかよ」


 よし、これはもう普通に生まれ変わった方が良さそうだな。面倒な異世界の事なんて放っておいて、神様に頼んで大金持ちの御曹司にでもなって裕福な生活を送ろう。


「予想は出来てたけど、そこまで頑固なら仕方がないね。これを見て……きっと君は…………とても喜ぶよ」


 神様の翳した右手が言葉に反応し、瞬間だけ光る。


創造クリエイト


 その言葉に反応するかの様に、ヴィィィンという謎の効果音が鳴る。そして、神様が手を伸ばした付近に半透明のモニターの様な物が浮かび上がった。


「おい……人が死んで…いや殺し合ってるじゃねーか」


 そこに浮かび上がった映像は、この世のものとは思えない光景だった。


 昼の狭い山道だろうか、大きめの馬車の付近で戦士と思われる人が三人、血を流して死んでいる。

 3人とも腹部に大きな切り傷があり、それが致命傷だろうなと推測できた。


 事の犯人は恐らく両手に紫紺の鎌を持っている男。両手の鎌は血を帯びて、不思議な輝きを放っている。

 男は額に付いた返り血を慣れた手つきで拭い、ある人物に近づいていく。


 その人物は、全身旅装服に身を包んだ女の子だ。フードで顔は見えないが、小刻みに震えているのが分かる。


「あーあぁ。あの女の子殺されちゃうよ? 助けなくていいの?」


 神様が時間が無いと言っていた意味がやっと分かった。最初からこれを見せるつもりだったのか。


「やり方が汚いな、お前」


 神様は何とでも言えと言わんばかりの表情。それから神様は品定めする様に俺を見てきた。  

 そんな目で見ても、期待に応えられる訳がないのに。


(俺があの場に助太刀した所で何か変わるのか? どうせ、何も……)


 内心ではそう思っていた。俺が行ったところであの殺人鬼には勝てない。

 死体が1つ増えるだけだ。だから女の子は助けられる訳がない。

 絶対に救えない。だが、何故だろうか、見過ごせない気持ちがとても強い。






(『また』……後悔……するだろうか?)






 もう一度モニターを見る。そして、ある異変に気付いた。


 顔が隠れて見えない女の子、全くの赤の他人。そのはずだが、俺には違うように見えた。

 顔は見えない、生まれた世界も違う。だがなぜだ、なぜ、こんなにも彼女は……。


「既視感ってやつか? いや、それは違う。彼女は……」


 この湧き上がる感情は何なのだろうか? 焦燥、同情、悲壮、どれでもない。

 ただ、彼女は、彼女だけは助けないといけない。そんな気がした。

 理由は分からない。もしかしたら神様が俺を洗脳しているのかもしれない。

 いや、この際、意味なんか要らないだろう。人を助けるのに理由は必要ないのだ。


 そんな自分への疑問を強引な言い訳で誤魔化し、俺は神様の方を向き、そして告げる。


「決めた」


 俺が言うと、神様が振り向く。そして続けて、


「今すぐ、俺をあの世界に連れて行け!」


 俺が宣言すると神様は小さく頷く、まるでそうなると分かっていたかのように。


「決意は決まったみたいだね。あぁ、やっぱり君は何も変わってない。そうやっていつも、自分を」


 神様が何か言った様な気がするが、それより早く女の子を助けないといけない、その焦りが次第に高まっていた。


「俺はあの殺人鬼から女の子を助けられるか?」


「さぁ? 相手も『千の英雄』の一人だから難しいとは思うけど、無理ではないよ」


 無理じゃない、その言葉を聞いて決心が着いた。神様は俺に何らかの力を与えているのは知っている。

 この腰に下がっている日本刀もそうだろう。その力を上手く使えば女の子が逃げるくらいの時間は稼げるはず。

 それに、まだ双鎌の男は女の子を殺す気配はない。



「今の内に早く飛ばせ!」


 自分でも驚く程に焦燥に駆られている。少し前まで、普通に生まれ変わって金持ちの御曹司にでもなるか、と思っていたのに不思議な感じだ。

 もしかしたら、これが俗に言う使命感とやらなのかもしれない。


「大丈夫、あの子はあと数分猶予があるから」


 神様は、そう言うと地面に手を置いた。先と同じ様に短い詠唱をすると、光を放つ大きく丸い円が現れた。

 その円には、見たこともない様な文字や記号がびっしり書かれている。これが噂に聞く魔法陣という物だろう。


「これが【イノセント】への入り口(ポータル)さ。さぁ、ここに立って」


 俺は小さく頷くとそこに立った。女の子を助ける、頭の中はそれで一杯だ。


「君は、僕のお気に入りだからねぇ。あっちに行く前に君の事について少しだけ教えようか、君には前世の功績を讃えて1つだけ【称号】を与えた。まぁちょっとした特殊能力みたいな物さ」


「でもそれは詳しく教えられないんだろ?」


「まぁそうなんだけど名前ぐらいはね。君の『唯一』の称号の名前は【魂の贈呈者(ソウルドナー)】って言うんだけど……」


 ソウルドナー? よく分からないが名前的にそこまで強くなさそうだな。


「それでその弱そうな称号が何なんだ?」


「それが……その称号の効果で、君の称号の数は9つ増えて10個になったんだ。しかもどれも凄く強い称号だよ。それに加えて神話級の武器、防具を1つずつと、伝説級の武器を2つ授けた。その剣と指に嵌まってる指輪がそうさ。あと言っておくけど、これはどれも『君の物ではない』から」


 おい待て待て、どうやったらそんな強くなるんだよ。たった一つの称号でそこまで強くなるのか?


「おい、それってど……」


「話はここまで! そろそろ女の子が危ないからねー。じゃあ頑張って! 前世の記憶は時間と共に思いだすから! あと君の称号や能力の事も!」


 神様は満面の笑みでそう言うと、俺の胸に右手を当てた。瞬間、俺の体は半透明になり、意識が遠くなる。

 そして、神様は俺に言葉を浴びせた。


「汝、【創造神ノア】の神託を胸に―――」

「内なる真理を抱かん―――」

「汝、『7つの理を救い』―――」

「外なる虚栄を捨て―――」

「その身を宿せ」


 神様の言葉に共鳴するかの如く、魔法陣が輝く。その光はまるで俺をどこかにいざなうかの様だ。


 何秒か経ち、体が完全に消えた。意識だけがここに残っている、まるで幽霊にでもなったみたいだ。

 そして神様は意識だけの俺の方を見ながら話し掛ける。


「序列最下位の君は最下位だからこそ、弱者だからこその優しさがある。その優しさは、時に希望を照らし、道を標すだろう。だけど、その優しさこそが、君の一番の弱点だという事を忘れちゃいけない」


 それから少し躊躇う様子で神様は言葉を続けた。


「あと、イノセンツには7つの聖玉があるんだけど、それが魔の根源なのさ。君にはサッパリかもしれないけど、良く覚えておくんだ」


 口が無いので返事は返せないが、耳を集中させた。既に意識は殆どなく、声を聞くので精一杯だ。


「7つの聖玉の内、既に3つの聖玉は英雄達の御陰で破壊された。聖玉を破壊すれば、魔はこの世から根絶する。だけど―――」


 神様は酷く悲しそうな顔から、酷く嬉しそうな顔にしながら、こう言った。



「―――割れた卵は、元には、戻らない」



 そこで俺の意識は無くなった。








読了、感謝です


初投稿初作品ですが、とにかく頑張ります


読者の皆様のご意見、ご感想、ブックマークなどを頂けると非常に嬉しいですし、私自身のモチベーションにも繋がります


どうか、ご感想のほど宜しくお願い致します!


同時に活動報告なども見て頂けると幸いです


以上、失礼しました









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ