表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
引きこもり太郎と海神の少女  作者: おけらむ
3/3

三、引きこもり太郎と冷たい眠り

主人公不在回

ついにコールドスリープされてしまいます

「被験者を全て所定の位置に運びました」


迷彩服の屈強な男が小柄な女性に声を掛けた。

その女性は長い黒髪を耳の後ろで一本に束ねていた。

研究者らしく白衣に眼鏡といった風貌だ。


「ご苦労様です」


女性は男の方を一瞥もせずに短く答えた。

女性の視線の先には人一人入れるようなカプセルがずらりと並んでいた。

カプセルの一つ一つには空気を送り込むような太い管がいくつも繋げられている。

その太い管はこの四角い部屋の中央に置かれた機械に繋げられていた。

女性は不備がないかカプセルの一つ一つを見て回っている。


「・・・本当に実施するのですか?」


男は厳つい顔に似合わず戸惑ったような表情を浮かべ、女性に問いかけた。

女性は歩みを止めずに淡々と見回りを続ける。


「国に逆らう事は出来ません」


点検が終わったのか、女性はこの部屋にある唯一のドアへ向かい、部屋の外へと出た。

男もそれに続く。

部屋の外は部屋の中の様子が見えるようにガラス張りになっていた。

内部の機械を操作する為の端末が並べられている。


「しかし」


「それ以上はいけません。・・・すでにこの国は民主主義ではないのですから」


言葉を続けようとした男を遮るように女性は今までより大きめの声で男を諌めた。


「・・・失礼致しました」


男は失言した、と言わんばかりに顔を俯けた。

女性はそれを無視し、端末に設置されたマイクの電源を入れた。


「では、これよりコールドスリープを始めます。各員作業を始めてください」


女性の指示で研究者達の作業が始まり、機械音が先ほどよりも大きくなっていく。

男はガラス越しに部屋の内部へと視線を向けた。

先ほど見回っていたカプセルに明かりが灯り、中に入っていた人間の顔が照らし出されていた。

麻酔で眠らされた彼らはそのままコールドスリープされる。

コールドスリープと言えば聞こえはいいが、彼らを起こす事を国はしない。

要するに安楽死のようなものだった。


「この国は、一体どこへ向かっていくのか・・・」


男の嘆きは誰の耳に届くこともなく機械音に紛れて消えていった。




―――身体が、冷たい。

周りを覆っていた冷気がどんどん身体の中を侵食していく。

身体の芯まで凍えてしまう。

身体が動かない。動かなくては死んでしまう。


脳裏に浮かぶのは母の微笑。

手を伸ばそうともがくも届かない。

死んでも、母さんのところに行けないのか。

死んでも僕は、一人なのか。

この人生になんの意味があったのだろう。

あぁ、思考も働かなくなってきた。

空気が薄い、僕は、死ぬんだ。

ずっと考えてきたように、暗いあの部屋で、一人で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ