表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮想現実を駆ける!!  作者: 一二三四五六
揺り篭の中、育まれる星
8/17

第八話 【見える山は、雪山、火山、雷山】

お待たせしてしまってすいません。先の展開を脳内で方向転換しました。

ちなみに出てくる神級モンスターは、今後もヤマトに絡んできますよ。

では、ごゆっくり。


12月17日:移動に時間がかかるように加筆

「よし、準備完了」

 何とか死地を抜け出し、急いでギルドから飛び出たヤマト。だからというわけではないが、急いで出発することを決めていた。

 だがさすがに討伐依頼をついでに受けることは忘れない。北によく出没するというモンスターの討伐依頼を受けた。もちろんエリーからではないことは言うまでもない。

 次にとりあえず北方面に行くにあたって必要なものを聞きに道具屋を訪れる。そこで装備を整えた後、ヤマトは北の門に向かった。


「・・・出現モンスターは軒並み強くなる、それに寒かったり暑かったり。なかなか面倒そうだな」

 調査指令を受けて数十分後、ヤマトは北門にて確認を行っていた。

 この指令は討伐依頼と同じく、到着から3日にわたって行うように指定されていた。他にも、その調査範囲なども詳細に指定されている。

 正直、何かあるとは思っていないヤマト。ただしその付近に跋扈するモンスターに対しては、厄介だという印象を受けていた。

 やはり厳しい環境を生き抜いているだけあり、その環境な対応した生態であるそうだ。つまるところ地の利を相手は得ているということになる。

 それはヤマトにとっては嬉しくないことである。ソロという自分の状況では、地の利を活かした攻撃に対しての対応力が低いためだ。


「ま、なるようになるさ」

 しかし迷っていても仕方がない。一発頬を殴ることで意識を集中させるヤマト。

 手に馴染んできた剣の重みを腰に感じながら、ヤマトは北へと歩を進めた。






 北をしばらく進むと、先程から見えていた山がさらに大きく見えてくる。

 一応、今日は入り口付近でログアウトする予定だ。

 ヤマトは調査する3日間のスケジュールを既に立ており、その通りに進行方向を西に修正した。


 そもそもこの北方山岳地帯は、数体の神とも言えるモンスターによってその性質を局所的に変異させている。

 簡単に言えば、先程まで極寒の雪山を歩いていても、次の山では溶岩が至る所にある異常な熱気を持つ火山に変わる。これを引き起こしているのが数体のモンスターである。

 生態系の頂点に立ち、山々を縄張りとし、そして気候すら変えるモンスター達。遭遇すれば絶体絶命とかそういう次元ではなく、まず間違いなく瞬殺される。

 しかし裏を返せば、そんなモンスターのいるところで異変など起こりえない。もし起きたとすれば、もっと大事になっているはずであるからだ。

 そのためギルドもそんな奥地まで調査しろなどとは言ってはいない。


 つまり調査が必要な範囲は、山岳地帯の隅にある三山に絞られていた。西の雪山、東の火山、そして雷の降る中央山、この三山である。

 それぞれがギリギリ例のモンスター達の支配領域なため、三山が全て違う環境であるなどという異質な地域である。

 そしてヤマトはこれらの山々を調査するにあたって、少し奥にある中央山を最後に回すことにした。そのため西から東へ移動し、最後に中央山へ向かうことにしたのだ。

この三山の中腹前までを隈なく調査せよ、指令の内容はこうなるわけである。

 


「寒っ!もっと着込んでくればよかったかな・・・」

 翌日。

 さらに順調に進み、西の雪山に到着するヤマト。雪山といってもそれほど積もってないし平気だろうという甘い考えをあざ笑うかのように、山に足を踏み言えた途端に吹いた風が彼の肌を撫でた。

 慌てて耐寒の魔法がかかっているというマントを羽織る。幾らかマシになったものの、顔や足元を撫でる風はまだ寒い。


「なるほどこれが神級モンスターの力ってわけだ・・・寒ぃー」

 もちろんヤマトを襲った急な寒さには理由がある。彼の言葉にもあるように神級のモンスター、これの力が作用したためである。

 神級モンスターの力は概念の位階にまで到達しているらしく、自分の縄張りの全域に力を振りまいているらしい。道具屋の店主は脅かすように俺に教えてくれた。

 ヤマトは自分がそれらに戦いを挑むと心配されていると解釈し、誇大に言っていると思っていたわけだが、どうやらその言葉に一切の誇張は無いらしい。

 いずれは挑めるようになるのだろうか・・・などと考えながらヤマトは歩を進める。


「しっかし・・・ウルフってのはどこにでもいるのかねぇ」

 そうして雪山――と言ってもヤマトがいる場所では、雪が降っているわけではなかったりするのだが――を歩くこと数分。第一モンスターを発見した。

 そのモンスターはウルフ系、ただし以前戦ったワイルドウルフよりも体毛が白い。名称はホワイトウルフ、覚えやすいとヤマトの印象に残ったモンスターである。

 そのホワイトウルフが4匹で群れを作り、身を隠すヤマトの前方でくつろいでいた。


「さて、奇襲できる距離とくればやることは一つだな」

 マントを羽織っていても全く速度に影響はない、ホワイトウルフは完全にヤマトの領域に入っていた。

 さて、と一息ついて腰の剣に手をかけるヤマト。身を隠している岩陰からウルフたちを観察し、最善の瞬間を待つ。


「・・・ッ!!」

 こちらの方向を向いていた一体があくびをするために顔を上にあげて目を閉じた瞬間、岩の陰からヤマトは飛び出した。スキルの複合作用と自らのAGIによって瞬間的に加速、ホワイトウルフたちがその姿を認めたときにはもうすぐそばまで接近していた。


「抜刀術・・・其の弐!」

 速度が乗り切った状態で右足を大地に突き刺して右手で剣を引き抜く。突き刺して右足から衝撃とも言える速度が体を駆け上がってくる感覚を味わいながら、右手は剣を加速した状態で引き抜く。そして体を駆け上がる速度を右腕に集中させて一気に振り抜く。

 今までの戦闘で幾度も練習した行動である、だからスムーズに体が動く。速度が乗った状態で放つ抜刀術、ヤマトは便宜上これを其の弐と呼ぶ。


「…オオォ!」

 ここのモンスターは強い、それは誇大表現ではないようだ。一撃で仕留めきれていない。

 ワイルドウルフは一匹につき1000ex、だがホワイトウルフは一匹につき1300exである。しょぼいと思った人は300円で何ができるか考えてみるといい。

 それはさておき、ヤマトは臆することなく追撃の刃を閃かせる。右足で受け止めきれなかった速度をここで使う。左足で踏み込んでよろけた標的を切りつける。

 そして絶命させた。


「フッ!」

 やはりこのホワイトウルフ達はよく連携が取れている。一体を倒し終わった瞬間に三体ともが攻撃を加えてきた。獲物を仕留めた瞬間が最も油断する時だと知っている。

 だがヤマトもそれは知っている、ゆえに油断なく周囲に気を配っていたのだ。

 周囲をなぎ払うように剣を振るう。ホワイトウルフはその一撃をあるものは避け、あるものは当たった、そしてホワイトウルフ達は距離を取らざるをえない。なんにせよ仲間を襲った狩人への復讐の牙は届かなかったということである。


「やっぱり…本気出すか」

 ヤマトはホワイトウルフ達の動きを見て、緩めていた気を張り直した。ウルフ系だと思うと痛い目を見る、動きの違いを見てそう感じたためである。

 第一に動きの鋭さが違う。おそらく氷の上や崖の上でも動けるように脚力が上がっているのだろう。さらにカンも良い、先ほどの攻撃は全部のホワイトウルフに当てるつもりで放ったのにも関わらず避けられた。

 本気、その一言で彼の瞳に鈍い光が宿り、そして戦闘が始まる。



 そして少しの時間が流れる。

 その間にヤマトは更に一匹を仕留め、残り2匹にも深手を追わせていた。ただしヤマトにはかすり傷すらない。

 ワイルドウルフよりも強いものの、それまでだった。そこまで時間もかけずにヤマトはホワイトウルフ達を追い詰めていた。

 さすがにホワイトウルフ達も格の違いを感じ取って、攻撃が慎重になっている。だがその程度で形勢が逆転する訳がなかった。


「…シッ」

 鋭く吐かれた吐息が彼の口から離れるよりも早く、ヤマトは動き始めた。深手を負いながらもこちらを睨むホワイトウルフの2匹のうちの片方に向かい疾駆する。

 ホワイトウルフも迎撃の姿勢を見せるものの、鋭く振り抜かれた一撃に対応できずに一匹が絶命する。それと同時にもう片方が攻撃を加えようとするものの、振り向きの力も利用した二度突きによって迎撃され、地に伏した。


「なんだかんだ言って、これぐらいじゃあな」

 しっかりと解体のスキルを発動させ、剥ぎ取りを行う。

 そして今の戦闘で体が暖まって幾分か和らいだ寒さを感じ、調査を開始した。






 そして次の日。

 セーフテントから出て、慣れ始めた寒さを肌で感じながら背筋を伸ばす。ログインしたときの体が凝り固まったような感覚を和らげるためだ。

 寝起きに似ているとは言い得て妙だな、そんなふうに思いながら辺りを見回すヤマト。敵がいないことをしっかりと確認する。

 ふぅ…とため息が出たのは昨日のことを思い出してのことだった。

 山の中腹まで行くと雪が積もっており、戦闘が大変だったのだ。下が氷になっていると滑って思うように速度が出ないし、雪だと舞い上がって敵の姿を見失うこともあった。

 そんな中で敵を倒すこと半日、しかし夜になると中腹でも軽い吹雪に見舞われた。そのため下の方まで降りて、さらにそこから東に向かって移動した。

ということでヤマトは今、雪山の東の端に居る。


「さ、東の山に向かうか…暑そうなんだけどなぁ」

 昨日、遠くから見た東の山を思い出して少し憂鬱になるヤマト。

 そもそもモンスター単体の力で気候や環境が変わるってなんだよ…と若干愚痴を零しながら準備運動のように体を動かす。

 そしてその運動を終えるとギルドカードを取り出した。


【討伐記録】

ホワイトウルフ:20匹(26000ex)

スノーエイプ:8匹(22400ex)

スノーフォックス:4匹(16000ex)


スノーエイプ:雪山に住む猿。大きな体格をしており、3~4匹程度の群れを形成する。雪の中での高い運動性と、雪山での地の利を使った戦闘が手ごわい。革や骨をギルドで売ることが出来る。

スノーフォックス:雪山に住む狐。体格はレベルによって大きく変動する。3~4匹の群れを形成する。氷系の魔法を使うことができ、高いレベルになると吹雪を起こすこともできる。氷雪系神級モンスターの眷属が生み出したモンスターで、雪山全域の中腹以降に少数が生息する。


ユーザー名:[ヤマト]

種族:ヒューマン()

職業:スカウト(斥候)

LV:19(+2)

STR:38(+4)

VIT:12

AGI:38(+4)

DEX:13

INT:1

MND:1

LUK:1

称号:速撃の疾走者 複撃一刀

装備スキル:剣LV.12(+1)・直剣LV.12(+1)・闘気法LV.17(+2)・心眼LV.17(+1)・隠密LV.9・加速LV.16(+2)・速撃LV.13(+1)・抜刀術LV7(+2)・無ノ一撃LV.6(+1)


 スノーフォックスは手ごわかったなぁ、と思いつつも一通りギルドカードを確認したヤマトは、セーフテント等をしっかりとアイテムボックスに収納してから、最期に装備の確認をした。

 そしてそれも終わるとマップを呼び出して行先を確認し、ひとつ大きな深呼吸をして動き始める。

 それなりの速度で動くヤマトが東の火山に到着するのには、あまり長い時間を要さなかった。





「さっそくかよ!」

 火山に到着したヤマトを待っていたのは、モンスターの奇襲であった。何も地面を食い破って出てきたわけではない、岩陰からの奇襲である。

 それを仕掛けてきたのは、リザードマンである。

 このモンスターは集団での連携がゴブリンと同等なのだそうで、奇襲のタイミングはバッチリであった。

 一段目の奇襲で相手の視界と行動を制限し、何発か甘い攻撃を入れることによって獲物を油断させると同時に追い込み、そして二段目の奇襲でトドメを刺す。高い連携力も相まって非常に厄介な奇襲攻撃である。


「・・・オオッ!」

 だが、ヤマトの判断力と戦闘能力はリザードマンたちの想像を超えていたようだ。

 まずは一段目の奇襲が目の前に立った時点で、抜刀術のしようを断念する。距離が近すぎて踏み込みが甘くなること、相手の攻撃に対応できないであろうことが理由である。

 だが断念すると同時に前に大きく跳躍する。いわゆる飛び蹴りである。


「洒落臭ぇ!!」

 飛び蹴りを食らったリザードマンが大きく吹き飛び、抑えと追立てをする頭数が減ってしまったことでリザードマンたちは困惑する。

 困惑してしまったリザードマンたちは、飛び蹴りで体勢を崩したヤマトに考えなしに突撃を始めた。だがそんな考えなしの突撃は、彼の剣技をもってすれば愚策と断じることができる。

 言葉と共に跳躍し、ヤマトは空中で抜刀する。

 そして突進してきた一体の肩に剣を突き刺し、その剣を支点としてリザードマンの後ろまで移動して着地する。

 そして肩を抑えたリザードマンが振り返るよりも早くその背中を何度も切りつける。これにはリザードマンも耐え切れずに地面に倒れる。

 トドメと首に向けて剣を振ろうとした矢先、ヤマトはその場より飛び退く。


「おっと、これはびっくり」

 飛び退いた先でヤマトは、自分の居た場所に火の玉が飛び込んだのを見た。おそらくリザードマンのうち一体が放った、下級火属性【ファイア】に似た魔法であろう

 しかも完全には避けきれなかったらしく、そのまま羽織っていたマントに引火した。大慌てでヤマトはマントを外して鎮火し、アイテムボックスに放り込む。

 ちょうど脱ごうと思っていたので問題ない、そう思うヤマトの顔は苦々しい。それもその筈、ヤマトには魔法相手の戦闘経験に乏しい。

 だがヤマトの瞳には変わらず強い光がある。そして戦闘は再開された。




 そして何十分か経ち、この戦闘は終結の時を迎えようとしていた。もちろん、ヤマトが全リザードマンを討伐するという結末でだ。

 結局、リザードマンは全部で5匹おり、二段目の奇襲も受けた。

 他にもリザードマン全員が口から例の魔法を吐ける事が判明したが、ヤマトにはそれらを持ってしても余裕が生まれる理由があった。

 パッシブスキル【心眼】である。このスキル、実は魔法の前兆とその効果範囲や軌道が見えるのだ。

 それを持ってすれば速度で勝るヤマトに敗北の目はない。正直に今の状況を表すとすれば、蹂躙に近いものを感じる。


「これで・・・燕返しッ!」

 腰から銀の光が逆袈裟(ぎゃくけさ)に閃き、右上で止まった瞬間にもう一度袈裟懸け(けさがけ)に閃く。その燕返しが完全に決まった為に、最後のリザードマンは絶命する。


「長かった・・・疲れた」

 ヤマトは無ノ一撃のデメリット効果を感じながら一息つく。そしてデメリット効果が消えた瞬間に動き出し、解体を発動させて剥ぎ取りを始めた。

 ちなみにリザードマンからは革や魔石などが採取でき、革には耐熱性があるらしくブーツに出来たりするのだとか。


「さーて、調査開始っと!」

東の山にも一日中いたのは、もはや言うまでもないことである。



さていかがだったでしょうか。

ちょっと駆け足だったかなーとか思いますが、どうかご容赦を。

ご意見ご感想があれば、感想欄までお願いします。

さて、最近は寒さも大変なことになり、雪もそろそろかなと思っています。ちなみに私は雪が降ったら、雪合戦をしようと友人と約束をしています。皆さんもいかがですか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ