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仮想現実を駆ける!!  作者: 一二三四五六
揺り篭の中、育まれる星
4/17

四話目 【新たな技、新たな縁】

どうも数列です。

書き溜めの底が付く頃。

今回はちょっと短かったかな…




「…シッ!!」

 二度突きを放ったヤマトは、群れの最後のワイルドホースにトドメを刺した。

 2日で多くの敵を撃破し、成長を果たしたヤマト。少し小柄な暴れ馬のワイルドホースや力強い突進を仕掛けるワイルドバイソンも数匹を狩ることに成功し、確かな手応えを得ていた。


「そろそろ東に向かうかなぁ…」

 ギルドカードをアイテムボックスから取り出しながらヤマトは呟く。この西平原に居るモンスターはそれなりに狩ったので、狩場を移動しようという思惑である。


ギルドカードには、

ホーンラビット:15匹(4500ex)

ワイルドウルフ:23匹(23000ex)

ワイルドホース:10匹(25000ex)

ワイルドバイソン:7匹(21000ex)

合計報酬:73500(七万三千五百)ex

と記載されている。


 やりすぎたかなぁ…と頭を悩ませるヤマト。実際に2日間はずっとログインして狩りを続けていたのである、いわゆる廃人ゲーマーの仲間に片足が入っていた。

 ただその甲斐もあって、借金が半分ぐらいまで減っている。さらにレベルもかなり上がっていた。


ユーザー名:[ヤマト]

種族:ヒューマン()

職業:スカウト(斥候)

LV:11

STR:25(+12)

VIT:10(+3)

AGI:25(+12)

DEX:8(+5)

INT:1

MND:1

LUK:1

称号:速撃の疾走者

装備スキル:剣LV.9・直剣LV.9・闘気法LV.10・心眼LV.11・隠密LV.5・加速LV.9・速撃LV.9


 称号[速撃の疾走者]はスキル速撃とスキル加速を追加。さらに様々な追加効果を発動(未開放)。

 パッシブスキル闘気法は、全ステータスに数値をプラスする効果。

 パッシブスキル心眼は、敵の行動の察知や事象の観察の洞察能力を上げる効果。

 パッシブスキル隠密は、プレイヤーが敵に発見されにくくなり、発見されていない状態での攻撃力にプラスの補正が発生する効果。

 パッシブスキル加速は、移動能力が上がり、さらに悪路でも速度が落ちにくくなる効果。

 パッシブスキル速撃は、攻撃時にプレイヤーが移動している場合、その移動速度に応じて攻撃力が上昇する能力。

 隠密は職業に一定経験値が貯まったため追加。加速と速撃は称号取得時に追加。


 称号とは、一定の戦果や行動などの条件を達成すると自動で付与される。達成した条件によって効果も様々であり、同じものが出現しない可能性もある。


 ヤマトもこれらスキルにはご満悦の様子だ。

 他にもアクティブスキルがいくつか追加されていたがヤマト曰く、勝手に動いて気持ち悪いから嫌だな、だそうである。


「よし、行くか」

 セーフテントを解体し、様々なものと一緒にアイテムボックスに収納する。

 そして2日前に来た道を逆走し始めた。だが来た時とは速度に差がある、ステータスが上がったこととスキル加速を持っているためだ。

 どんどんと速度を上げるが、実は本気ではない。ワイルドホース2体とデスレースを繰り広げた時の全力疾走に比べれば屁でもない。ちなみにそのワイルドホースを倒した時に取得したのが、速撃の疾走者である。


「うげっ」

 順調に速度を上げて街に帰還するヤマト、その目にめんどうくさい光景が入ってきた。ウルフ5匹に囲まれたプレイヤー3人組である。

 しかもその頭上にはSOSのサインが浮いていた。SOSサインとは、基本的に獲物の横取りや余計なお世話を慎むべきであるMMOオープンワールドゲームにおいて、明確に助けを呼ぶ手段である。

 そのためヤマトは助けるべきか考える。SOSサインを出しているから助けるべきなのだが、ヤマトは絶賛移動中である。他に助けられそうなプレイヤーを探すも、他のプレイヤーは見当たらない。

 腹を括るしかないか…ヤマトは肩を落としながらも、方向を調整してウルフの群れに突っ込んだ。


「助太刀する、数を減らすから各個撃破してくれ」

 ヤマトはスキル隠密をつかって背後から奇襲をかけた。奇襲と速撃の両方で攻撃力が上がり、ワイルドウルフの1匹のHPを完全に消し去った。

 それと同時に3人のプレイヤーに声をかけ、各個撃破を促す。3人はすぐに自分の武器を握り直すと、隊列の崩れたワイルドウルフの群れの中で一番右端の個体に攻撃を仕掛けた。


「ォオ!」

 後ろに飛び退き、ワイルドウルフの攻撃を回避して剣を鞘に戻す。

そして助走距離を稼ぐと剣の柄に手をかけ、雄叫びと共に突貫する。そして右足を 地面に突き刺す勢いで踏み込み、剣を抜く。一般的に居合だとか抜刀術だとか呼ばれているものだ。

 一般的に意味がないと言われているが、極めれば短距離で速度を乗せることができるため、狩りの間中ずっと練習していたのである。


 放たれた刃は高速でワイルドウルフの左顔面を捉え、HPを大きく削る。ワイルドウルフは悲痛な叫びを上げて後ろに吹き飛ぶ。

 さらにヤマトはその勢いのまま追撃に移行する。右に1回転しながら跳躍して、吹き飛んだワイルドウルフに追いついた。それと同時に剣を回転の速度で振り抜く。

 ワイルドウルフは対応できずに倒れ、死体となる。


「…シッ!」

 勢いを落とさず群れから少し距離を置くと、スキル心眼で感知した敵に向けて反転しながらの二度突きを放つ。

 すると背を向けたヤマトに襲いかかろうと奇襲を仕掛けたはずのワイルドウルフは、反転の勢いも載せたヤマトの二度突きに迎撃され、後ろに大きく弾かれる。そしてその先には端に居た1匹を倒し終えた3人が居る。


「よっと」

 ステップを使って巧みに距離を詰めると、残り2匹のワイルドウルフとの距離を詰める。

 残り2匹は緩急をつけたステップに攻撃のタイミングを合わせられず、接近を許してしまう。

 そして2匹を抑えつつ、3人組の手が空くのを待つ。抜刀術をする隙がない為、じっくりと戦闘をする。


「お待たせしました!」

 しばらくした後。3人組の内の1人、おそらく狩人であろうプレイヤーの矢が片方のワイルドウルフの背に当たる。するとワイルドウルフは背後からの突然の攻撃に、隙を作ってしまう。

 それを見逃すヤマトではない。瞬時に距離を詰めて前蹴りで隙を作ってしまったワイルドウルフを蹴り飛ばす。そして眼で3人組にワイルドウルフを任せると伝えると、前蹴りのために姿勢を崩したヤマトの側面を突くように攻撃を仕掛けるワイルドウルフとの間に鞘を入れる。


「風に揺れる柳のように、川を流れる木の葉のように…」

 ヤマトはつぶやきながら集中する。

 鞘にワイルドウルフの前足が当たる瞬間、ワイルドウルフの攻撃とおなじ速度で後ろに飛んだ。それにより敵の攻撃はヤマトには有効打にはならなかった。それどころか攻撃が当ったつもりになったワイルドウルフは地面に倒れてしまう。


「ォオ!」

 その隙を攻撃の機と見たヤマト。

 後ろに飛ぶ勢いで距離を取り、鞘に刀を収める。そして力を限界まで体に蓄積させ、集中力を捻るように一点に集中させる。

 ワイルドウルフはよろめきながらも立ち上がり、その眼光をヤマトに向ける。そしてワイルドウルフとヤマトの眼が交わった時、ワイルドウルフは動きを一瞬止めた。そして瞬間的に筋力を爆発させ、ヤマトは一歩目を踏み出す。


 ワイルドウルフが動き始めるまでに2歩動くことに成功したヤマトは速度を上げていた。そして後2歩というところまで到達する、しかしワイルドウルフもただ斬られる事を良しとはしなかった。ワイルドウルフは瞬時に筋肉を弛緩させ、ヤマトから見て左側に全力で飛ぶ。その速度たるや素晴らしく、一瞬でかなりの距離を飛び退く。


 しかしその動き出しを完全に捉えていたヤマトは、次の1歩を踏んだ瞬間に左前方に飛び出した。そして残りの距離を一気に潰すと、ワイルドウルフに飛びかかる。そして限界まで引き絞られた上半身を弓として、高速で矢となる剣を抜いて振り抜く。瞬間的にトップスピードに達した剣が直撃したワイルドウルフはその身を引き裂かれた。


「うおぁ!?」

 だが余りの速度にヤマトも転倒してしまった。彼にしては少し意外な失敗だった。

 ゴロゴロと地面に人型スタンプを刻みながら、徐々に速度を落とす。そして充分落ちたところで地面に鞘を突き刺し、地面に切れ目を入れながら停止する。

 ん?と首をかしげながら、体についた土を払う。そしてステータス画面を開き、HPの減り具合を確かめようとすると、新しいスキルが目に入った。

 試しに装備してみる。


ユーザー名:[ヤマト]

種族:ヒューマン()

職業:スカウト(斥候)

LV:11

STR:25(+12)

VIT:10(+3)

AGI:25(+12)

DEX:8(+5)

INT:1

MND:1

LUK:1

称号:速撃の疾走者

装備スキル:剣LV.9・直剣LV.9・闘気法LV.11(+1)・心眼LV.12(+1)・隠密LV.6(+1)・加速LV.10(+1)速撃LV.10(+1)・[NEW]抜刀術LV1・[NEW]無ノ一撃LV.1


 パッシブスキル抜刀術、剣を鞘から抜いた最初の一撃に対して、攻撃力の上昇をもたらす効果。ただしクールタイムがあるため、連続使用は不可能。

 アクティブスキル無ノ一撃、発動すると次の一撃に対して大幅なステータスの上昇をもたらす効果。上昇量はステータスによって変動する。ただしこの効果が適用された攻撃が終了した後、ステータスが5秒間低下する。


 先ほどヤマトが点灯してしまったのは、おそらくスキルの上昇で攻撃の威力を見誤り、その勢いを止められなかったためだろう。

 さらに新たなスキル抜刀術とアーツ無ノ一撃を取得。スキル抜刀術を多用した故の取得であろうか。


「さてさて、向こうはどうなっているかな」

 つぶやきながらステータス画面を消し、倒したワイルドウルフに対して特殊スキル解体を使用し、アイテムを剥ぎ取る。SOSサインを出して救援した場合、倒したモンスターの素材は倒したプレイヤーに所有権があるため、問題はない。

 剥ぎ取りを終えた後、少し移動して例の3人組を視界に捉えた。

 すると既に戦いも終盤に入っており、ちょうど1人が剣を突き立てた瞬間だった。


「救援ありがとう、生産職がいたので不覚を取ってしまった」

「ちょっと!私が悪いの?!」

「まあまあ、DEXに全振りで戦闘力が低いのは仕方ないことですし」

 3人組はこちらに気がつき、近寄ってきた。よく見れば全員女性プレイヤーであり、そのうち一人は生産職とのことだ。

 しかも戦闘に直接は関係のないDEXに全振りとのこと、それではワイルドウルフ達を相手取るのはキツかっただろう。ただそのDEXによる弓の精密射撃には目を見張るところがあった。


「いいもん!いいもん!もう少ししたらINTとMNDにも振るから!」

「はは、まあ何にせよ助かった。この機にフレンド登録をしてくれないか?」

「…まあいいだろう。ヤマトだ」

 ヤマトがフレンド登録を承認し、3人組とフレンドになった。

リーダー格と言えるフレンド登録を申し出た、直剣を携える女性プレイヤーのサキ。

 DEX全振りの生産職で弓を持ち、他の2人に不満を口にする女性プレイヤーのエリナ。

 小柄ながらハンマーを持ち、エリナの事を宥めていた女性プレイヤーのリカ。

 ヤマトはフレンドになると同時に後ろを向いた。


「…じゃあな」

 そして草原に吹く風の一つとなり、ヤマトは3人組から離れる。

 後ろからは何やら彼を非難する声も聞こえるが、ヤマトは完全に無視して当初の目的のために駆け出した。


 実はこの先、ヤマトと彼女らは再開し、行動を共にすることになる。

 といった感じのナレーションが流れる様な奇妙な縁が今、結ばれたのである。




感想等がありましたら、感想をどうぞ(感想乞食)

最近は布団から出るのが辛い。誰だよ、布団で生活しちゃいけないとか決めた奴は…(筋違い)

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