↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/17

第十弐話 【報告・報酬、そして試練】

今回は、第二章のスタートな感じです。

刀作り+イベントということで、二章の前半の導入となっております。

では、どうぞ。

「というわけで、報告は終わります」

「・・・まあ、色々と言いたいことはあるがの、今日のところはゆっくり休め」

 街に戻ってきたヤマトがまず向かったのはギルドホームである。

 じつは雷動を使って帰ってきたのはいいのだが、止まる時に小さいながらも雷鳴がするようで、少なからず騒ぎを起こしてしまっている。

 しかも起点から終点までを雷に近い速度で走行したツケはきちんと有ったようで、靴が破損し服はビリビリに破けた。

 つまり、小さい雷鳴と光がしたと思ったら、ボロボロの男が立っている・・・という状況を作り出したわけである。


「しかしびっくりしたのう、随分ボロボロになっておると思ったら、自らの技の代償とは」

「これについては、俺も予想外でしたね」

「予想できていたら、そんな事はしないじゃろうしの」

 その騒ぎはギルドカードを見せると沈静化した。だが、その代わりにギルドマスターであるルーカスに話が行くわけである。

 もちろんヤマトはギルド職員に半ば拉致されるようにルーカスの部屋に連れて行かれ、彼とエリーの二人に報告を行ったというわけである。

 ちなみにエリーは、黙ってギルドマスターの右後ろで話を聞いていた。


「・・・あの時、防具屋の紹介状も渡すべきだったわね」

「いえ、あれ以上の借金は心が折れますから」

「ふふ、でも無事で良かったわ。それに大分強くなったのね」

「ふむ、それは間違いないようじゃの・・・今回は龍か」

「私の勝ちですね、ルーカス様」

 申し訳なさそうに話すエリーに多少の罪悪感が芽生えたヤマトは、ワザとおどけた口調で場を和ませようと試みた。

 その試みは見事成功したようでエリーは口元を少し隠しながら笑った。

 ふたりの会話はあまり聞き取れなかったヤマトだったが、ルーカスが手渡してきた報酬のカタログを思い出して、顔を歪ませた。


「ん?どうかしたか?」

「ああ、報酬のことを考えるのを忘れてしまいまして」

「ふむ、むしろこれは好都合かの・・・」

 え?とヤマトが聞き返すよりも早く、ルーカスは自らが座っていた椅子から立ち上がった。そしてそのまま壁まで歩いて行ったルーカスは本棚の本を一つ引っ張った。

 すると何という事でしょう壁の一部が横にスライドしていくではありませんか。匠の域な心遣いというよりは、ただの隠し扉である。


「これをお主にやろう」

「・・・これは」

 ルーカスが隠し扉の先から持ってきたのは、錆びた両刃の剣だった。

 それを渡されたヤマトは、訝しげにルーカスを見る。

 その反応に、ルーカスはため息一つを吐くと首をすくめた。


「これを鍛冶屋の嬢ちゃんに持っていけ」

「・・・彼女に何か関係が?」

「これを芯に使えば、ダグトンの言っていた問題とやらも解決するはずだ」

 これを芯に?とヤマトは錆びた剣を見る。

 芯とはおそらく、刀の芯のことだろう。

 外を覆う金属とは違い、芯だけは製作できなかったということか。

 しかしこれは・・・


[鑑定]

名称:???(呪われた魔剣)

等級:??(破損により鑑定不可)

状態:破損

攻撃力:??(破損により鑑定不可)

能力:??(破損により鑑定不可)・??(破損により鑑定不可)・??(破損により鑑定不可)

構成:(鑑定不可)

備考:ルーカス・ファルケンにより、ダンジョンから発掘。状態が悪いため、攻撃力や能力の大半が破損により減衰しているものの、消失はしていない。今は失われた特殊な金属と特殊な製法が用いられている。


 呪われてるやないかーい!!と心の中で叫んだヤマトだったが、強い金属であるというのは間違いないらしい。それに一度潰してから使うだろうし、呪いもなんとかなるだろう。

 前向きに捉えるヤマト、自身の中で一応の納得をしてから、ルーカスに向き直った。


「では、いただきます」

「うむ、現役時代に見つけたはいいが、どうにもできんからのう。まあ、武器に転用できるかどうかは、その嬢ちゃんとダグトンにかかっている訳だが」

「大丈夫ですよ、失敗しても他を試せばいいんですから」

 剣は仮と思われる鞘に収められ、ヤマトの手の中に収まった。

 ダグトンは捨てないで良かったと笑うと、エリーを指して報酬をもらうようにと促して、椅子に座った。





「ふぅー。じゃあ、鍛冶屋に行くか」

 エリーから窓口で報酬と防具屋への紹介状を受け取り、押し扉を開いて外に出たヤマト。

 一つ伸びをしてから鍛冶屋へ行くための道に入った。


 そしてふと、この街について思いを巡らせた。

 前に、揺り篭の様だといった事を覚えているだろうか。そうだとすれば、他の街に行ったプレイヤーも同じような感じなのだろう、掲示板に寄せられる情報から考えても間違いないだろう。

 しかし、プレイヤーがこのままバラけて行動し続けるのだろうか?

 他の町に行ったプレイヤーは、少なくもなく多くもなくといった人数である。ただ、明日に迫った第二陣プレイ開始から考えれば、その人数は確実に増える事になる。

 となれば、必ずどこかでプレイヤーが集まるようなことがあるはずだ。

 掲示板を賑わせている[王都]とやらがそれに当たるのだろうか。そもそも、ここ以外の都市はどこにあるのか、どうやってこの街は出来たのか。

 ヤマトの中に、現時点では解決できないであろう問題が山積されていく。

 これらは明日になればわかるのだろう、そう結論づけて進む足に力をかけるヤマト。上昇したステータスの恩恵か、すぐに鍛冶屋の前に着くことができた。


「失礼する」

「やあ、ヤマトじゃないか」

「あ、こんにちは、ヤマトさん」

「こんにちはです、今日は親方とエリナさんに御用ですか?」

 断りを入れながら中に入ると、そこにはサキとリカの姿があり、その先のカウンターでは笑顔で接客をするアルフの姿があった。

 全員変わりのない様子で安堵したヤマトだったが、そもそも4日程度しか経っていない事に途中で気がつき、当たり前かと思い直す。

 そして変わらず笑顔でこちらに話を振るアルフに肯定の言葉を返すと、アルフは呼んでくると言い残して店の奥に向かってしまった。


「しかしこの店、客が全く居ないな・・・大丈夫なのか?」

「それは君のせいとも言えるのだがね」

 店を見回したヤマトが、抱いた感想を素直に口に出す。

 以前来た時は他に用事があった為にあまり気にならなかったことだが、よくよく考えてみれば何故か他の客をあまり見ない。

 その疑問を拾ったのはサキである。

 え?と聞き返すヤマトに苦笑しながら向き直ったサキは、一息おいて話を始めた。


「親方からは聞いてないのだろうが、この店はほぼ(・・)一見さんお断りだ。それに加えて最近は刀作りに没頭しているからな、他の仕事は断っているそうだ」

「それってもしかして・・・いや、もしかしなくても迷惑かけてる?」

「いえ、ギルドからの受中や領主からの衛兵装備の受注でお金は儲けてますから」

 聞かされた事実はヤマトにとっては衝撃の一言である。

 一見さんお断りな店であったという事もそうだが、自分の依頼にそこまでの労力を費やしているとは微塵も思っていなかった。

 申し訳ない気持ちがヤマトの中で持ち上がり始めたその時、後ろから豪快な声が飛んできた。


「余計なこと話すんじゃねえよ!全く・・・気にすんな坊主、やりたくてやってんだよ」

「ですが・・・」

「次ごちゃごちゃ言ったら・・・ゴファ!!」

 先ほどの会話はバッチリ聞こえていたようで、ご立腹での登場となったダグトン。

 その怒りは自身のプライドを傷つけられた怒りだろうか、それともただ恥ずかしいだけだろうか。おそらく後者であろう。

 しかし、ヤマトの反応がお気に召さなかったようで、ヒートアップしかけるダグトン。しかしそれを止めたのは彼の妻、アルバさんであった。

 後頭部に対して直径数センチの面で瞬間的に腕力+金属の重さ-空気抵抗分の圧力を加える・・・早い話が、ハンマーで後頭部を殴打したのだ。

 涼しい顔で汗を拭くアルバの後ろで顔を青くするアルフとエリナ。さらに状況の把握が追いつかなかったサキとリカが驚きの声を上げる。ヤマトは殺人現場(仮)の保全のためにも動かないでいるべきか考え、犯人が目の前にいることを思い出して一息ついた。


「すまないねぇ。で、用事はなんだい?」

「ああ、ルーカスさんから貰い物です、刀の芯に使えと。それで、刀の制作の方はどうなってます?」

「エリナちゃんがもっと強い刀にしたいと何度か言ってね?刀身以外は完成したんだけど、肝心の刀身はまた作り直し中」

 殺人(仮)が行われたにしては穏やかな会話である。

 その間に、アルフが恐る恐るダグトンの肩を揺らすが返事はない。さらに顔を青くするアルフを横目に、三人娘が集合して肩を寄せ合う。

 死体(仮)をどかさないとな・・・とヤマトが考えた瞬間。


「ウオォ!じっちゃんが手ぇ降ってたぜ!」

「おじい様はまだ死んでないでしょうが、全く暴走するんじゃないよ」

 と、いうわけで復活のダグトンである。

 そもそも最初の時点で血どころかたんこぶも出来ていないのだ、死んでいるはずがない。

 確かにヤマトも一瞬だけあまりの混乱によって彼が死んだと錯覚したものの、よく観察すればそうでないことは明白である。


「ということで、これを」

「奴が売るに売れなくて持ってた魔剣か・・・完全に潰すことはできん、嬢ちゃんと力を合わせて芯に転用できるだろうが、呪いは消えん」

「え、そんなもの使えないよ!」

「大丈夫だ、刀に飲まれる様な剣士は二流以下・・・で、俺は?」

 ヤマトが腰に下がっていた魔剣を鞘ごとダクトンに渡すと、その剣を鞘から抜いたダグトンはヤマトに注意の言葉をかけた。

 呪いの魔剣は呪われたまま、しかしもし呪いが消えれば能力も消えるのだろう。それにそもそも今では失われた金属を使っているのだ、ヤマトからしても完全に潰せるとは思えなかった。そのためヤマトは事実として受け止めることができた。

 しかしエリナはそれに対して危機感を持ったようで、制止の声をかける。

 それに対し、既に腹をくくっていたヤマトは自信あふれる言葉をかける。薄く笑いながらも自信に満ち溢れたその目は、エリナを納得させるには十分だったようだ。


「頼まれてくれるか?エリナ」

「う、うん。じゃあ・・・」

 エリナが頷き、ダグトンから剣を受け取った瞬間、金属を殴った音が響く。

 恐らくは警鐘。否、ダグトンとアルバの反応を見る限り、確実のようだった。

 それと同時にインフォメーション。



[【始まりの街】防衛イベントが開始されました。これに失敗した場合、強制的に全プレイヤーのキャラクターを削除し、初期状態からスタートとなります]

[防衛ポイントは城壁・領主の館の二箇所に設定されており、両方の耐久値が0になった時、このイベントは失敗した事になります]

[防衛において優秀な働きをしたプレイヤーには、特別な報酬をご用意しております]

[開始位置は東の門。30分後にスタートとなります]



 唐突だな・・・ヤマトが愚痴をこぼす。

 エリナは魔剣を持ったまま立ち尽くし、サキとリカが目を合わせる。

 ダグトンとアルバ、そしてアルフは慌てたように避難の準備を始めた。

 ヤマトはダグトンに城門に行くのだと声をかける。


「坊主は城門に行くのか、嬢ちゃんらはどうすんだ?」

「私たちも城門に行く・・・だがエリナは下がった方が良いかもしれん」

「私もそれに賛成です」

 ヤマトの言葉を聞いたダグトンはサキとリカに声をかけた。

 それを聞いた二人は、エリナをダグトンに預けて自分たちは防衛戦に向かうと応えた。

 アルバはその言葉に一つ頷くと、エリナの肩を抱いて移動させようとする。


「まって!あの・・・」

 しかしそれに静止をかけたのはエリナ。肩に置かれたアルバの腕を優しく下ろして皆を見回す。

最後に視線が合ったのはヤマト。彼はエリナが何を言うのか、静かに待った。

 だが、言いにくそうに顔を俯かせるエリナに、リーダーであるサキは声をかけることにした。


「確かに生産職とは言え、戦闘ができないわけではない。やはり共に・・・」

「いや、そうじゃないの・・・」

 自分たちがエリナを戦闘から遠ざけるのが許せないのかと考えたサキ。謝罪をし、共に戦うことを提案するが、そうではないとエリナは語った。

 そして数瞬が流れた後、エリナは意を決したように口を開いた。


「ヤマトさんの刀を・・・完成させたいの。大変な事態なのは分かってる、でも必要だと思う。それに、作らなきゃいけない気がするんだ」

「本気か?完成までに城門を抜かれたら?守ってやることはできないかもしれんぞ?」

「それでも、やりたい。でも一人じゃできない」

 その口から出たのは、武器制作を継続したいという気持ち。

 まるで自分の使命かのように熱のこもった声で話すエリナ。心配したのだろう、サキが脅すように危険性を語るが、エリナに動揺はない。

 しかしその顔に影が差す。それはエリナ一人では制作できないという点である。

 全員の視線が集まるのは、もちろんダグトン。彼の決定次第では、エリナの願いは叶えられないということになる。


「危険すぎる・・・それにその武器がなくても、坊主なら何とか成るんじゃねえかとも思う。ルーカスも認めた男だしな」

「そう・・・ですよね」

「・・・だが」

 ダクトンの口から出た言葉は、エリナを諭す(さとす)内容だった。

 もちろん正論である。この時点では襲撃側の戦力などもわからない。刀を持っていれば・・・という状況になる確率よりも、どうにもならない確率のほうが大きいかもしれない。そもそも、持っていても持っていなくても変わらないかもしれない。

 その言葉にさらに顔を俯かせるエリナ。自分の直感だけで親方であるダグトンまで危険にさらすことはできない。

 しかしダグトンは固く瞑った目を開き、その後に続く言葉を紡ぎだした。


「だが、そういう直感ってんのを信じて俺は今日まで鍛冶屋をやってる。それに、前線で戦ってる奴に最高の物を与えてやんのが俺の仕事だ。危険だなんだと言ってる場合かよ」

「全く、嬉しそうに言うんじゃないよ・・・ま、いざとなったらアルフに頼ろうかね」

「えええええ!?でも弱いのなら・・・強いのが来たら、ヤマトさんが来るのを待つしか・・・」

 楽しそうに顔を歪ませながらエリナの肩を叩くダグトン。その目は真剣そのものである。

 それを見たアルバは、ここに留まることを決意したダグトンに従うことを決め、場を和ませえるためにアルフに話を振る。

 振られたアルフは驚愕で顔を引き吊らせるが、諦めたように肩を落として返答する。その内容は情けないとも言えるものだが、足止めぐらいはしてみせると笑う。

 それを聞いていたサキとリカは仕方ないという風に顔を見合わせて笑う。

 皆の笑う姿を見たダグトンとアルバは、この状況を吹き出すように笑う。


「あの・・・ヤマトさん。ワガママだとは思うんですけど・・・」

「・・・・」

 しかしそんな中にあってヤマトだけは仁王立ちと腕組みを崩さなかった。その口は真一文字に結ばれ、瞳は閉じられていた。

 それに気がついたエリナはヤマトにおずおずと声をかける。だが、ヤマトの表情はまだ変わらない。

 その様子に気がついた皆がヤマトとエリナを見る。

 そして数瞬の後、ヤマトはゆっくりと目を開いてエリナを捉え、そして口を開いた。


「やはり危険だ・・・だから、必ず守る。絶対に・・・!」

 ヤマトは考えていたのだ、自分は必ず彼女を守れるかどうか。

 先程も考えたことだ、今現在の状況がわからない。不確定要素がありすぎる、軽々しくは守れると言いたくなかった。

 だが彼女の決意とダグトンの心意気、さらに皆の笑顔。彼の心は決まった。


「だから、俺に皆を守る力をくれ」

 守るから、守る力をくれ。これは彼なりの契約。

 そしてそれを聞いたエリナが頷き、早速というようにダグトンやアルバと連れ立って工房に向かって行く。

 それを見送ったヤマトは、踵(きびす)を返して鍛冶屋から出る。


「サキとリカは先に城門に向かっておいてくれ。俺はギルドホームに行く」

 ヤマトは二人を一度見て、その身を加速させた。


さて、如何だったでしょうか。

ゲームの第二陣参入前に試練があります、理由は追々…

誤字やご意見ございましたら、感想までどうぞ。


今回の裏話

実は最初の段階では、このイベントの予定はありませんでした。

代わりに強敵が登場する予定だったのですが、こちらの方が面白いかと思い、変更しました。

その強敵も……

これ以上はお楽しみにということで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。