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前奏
封筒から出てきたのは、揃いの黒い便箋。コレだけで、今日の仕事は徒労だと知る。
「コレがあれば、態々出向かなくても良かったな」
「現場100回と言うじゃないですか」
「ソレは一般人と無能な組織の場合で、俺には嵌らないから」
「これって本人のって事だよな?」
「そうなりますね」
無駄足踏んだと理解して、やり切れなさを滲ませる俺を尻目に、ケルヴィンと話し始めるマスター。
でも、こんだけ粘性の高い念なら、現物無くてもタレ流れてそうなもんだけど?
「能力者対策してんのかも」
「例えば?」
「超能力って言っても、万能なわけじゃあ無い。千里眼にも死角はあるし、ESPだって痕跡が無ければ使い様も無い」
「短絡的な犯行じゃねぇって事か」
「この依頼、長引くかも知れない」