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前奏
「大体、ギルド内で喫茶とか? 商魂逞しいって言うか……業突く張りだよな」
「まあな、他所じゃまず、有り得ねぇな」
「貴方方は無駄口しか叩けないのですか?」
マスターが眉間に皺を寄せて言う。
「茶飲みに来て、無駄口聞かないヤツなんか居ないだろ? 喫茶店にはありがちだと思うけど?」
無駄だとは知りつつ、反論する。
「まあ、良いでしょう。ケルヴィン、貴方は何も視なかったんですね?」
「ああ何も」
「では、ダルファ。此方を」
差し出されたのは真っ黒な封筒。宛名も何も無く、何故か落ち着かない気分にさせられる。
「これは?」
「依頼人から預かりました」
「こういうのって、先に出さないか普通?」
「普通の尺度は個体で違いますから。それに、聞かれなかったので」
胡散臭い笑みを貼り付けて、念を押すのも忘れない。確かに、此方も聞かなかった。情報が多かろうが、少なかろうが、面倒な仕事には変わりないから。敢えて寄越さない情報なら、左程重要でも無いんだろうと勝手に決めて。