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前奏
「おや? 御早い御帰りですね?」
「……アンタは嫌味しか言えねぇのか?」
「手ぶらで悪いが、収穫はあったぜ?」
カウンターでカップを洗っていたマスターの言葉に、口々に反論する。
「何もして来なかったなんて思っていませんよ? ただ、まだ店を開けている時間に表から入って来られたものですからね」
「客が表から入って、何か不都合が?」
「モーニング二つな」
「これは失礼致しました。御好きな御席で御待ち下さい」
仰々しく頭を下げるマスター。
「トースト厚切りでな」
「俺も」
言いながら、奥の席に移動する。
「畏まりました」
言葉とは裏腹に、畏まるのは、いつでも此方だ。
「またすっごい形相だったぞ」
「知んねーよ。客が居ないと商売上がったりのくせに、こっちはお客様だぞ。構うもんか」