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前奏
「……お言葉に甘えて、次はそーする」
舌を出し、嫌味を消化する。
「で? 何か視たか?」
「視えたのはコレだけ」
瞼の裏に張り付いた思念を書き出して渡す。
三日月が肥えて
月明りに流離う
銀色の笛の調べ
音色に囚われて
帰らない女たち
訝しむ親類縁者
「風流だな。詩か?」
「さあね。判るのは、満月に犯行を重ねてるって事。それから多分、第三者の介入」
便利な様で、そんな事もない超能力(ESP)――感応力。様々な思考が行き交う中、同じ色を拾う。一般的には、物質から残留思念を読み取る能力者――サイコメトラー。
俺の場合は、空気からも読み取れる。理屈は知らない。
「で? そっちは?」
「何もだ。まだオレの千里眼には掛かって来ない」
「なら、引き上げだな?」
「そうなるな」