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第四話 決意

 男の腕は逆に曲がり、足の骨が皮膚をつきやぶって外に出ている。赤い血が、壇上に広がっていく。

 あちこちから悲鳴が聞こえた。体育館が一気にざわめく。

 奏太はとなりを見た。一番の悲鳴は、彼女から聞こえた。僕の服についた血を心配してくれた彼女が、口元に手をあてて震えている。


 奏太はいまにも倒れそうな彼女の身体を支え、ゆっくりと床にすわらせる。発作のように、身体全体が震えていた。もしかしたらなにかの病気なのかもしれない。そう考えた奏太は、彼女の前にすわり、壇上への視界を遮った。震える手を、握る。


「……ありがとう」


 手を握ると、だんだんと彼女の震えがおさまっていくのが分かった。

 奏太は壇上に視線をもどす。

 そこには依然として笑っている〈そいつ〉と男の亡骸があった。


「ハハッ! 飛び降りなんだね! もっとたいそうな儀式があるかと思ったけど、拍子抜けだね!」


 デスゲーム。

 奏太は〈そいつ〉の言葉を思い出す。


「みんな驚いた? でも安心してね! この人はいま現実で目が覚めたんだ! もちろん、手足が折れた状態だけどね!」


 ——これは、デスゲーム。


「ぼくがやったわけじゃないよ! ぼくがやったのは、この人の状態を元に戻しただけ! きみたちもよく思い出してみて! 自殺しようとしたときに痛みはあった? なかったよね! だってぼくが先送りさせてあげたんだから!」


 ——死ぬためのゲーム。


「ゲームで負けた人はこの人と同じように、現実で払わなかった痛みをうけてもらう。もちろん痛みはその人によるよ! 飛び降りで死んだ人はこんな感じだし、首つりを選んだ人は息が苦しくなる。でもそれはきみたちが現実で『選んだ』痛みだからね! ぼくのせいじゃないよ! ハハッ!」


 ——負ければ、再び現実で生きることになる。


「この人はこの先どうやって生きていくんだろうね! 手足が折れたら仕事もできないのに! 悲しいね! きみたちがほんとうに死にたいなら、この人みたいに暴れちゃダメだよ? 勝たないと死ねないんだから!」


 ——勝てば、無事死ぬことができる。


「少しだけ時間をあげるからよーく考えてみて! もし棄権するならこの人と同じように現実に返してあげる! もちろん痛みは受けてもらうけどね!」


 ——死を賭けた、デスゲーム。


「ハハッ! それじゃあシンキングタイムスタート! 三十分後にまた会おう!」


 奏太は軽やかに去っていく〈そいつ〉を睨む。

 僕は、絶対にこのゲームに勝つ。

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