表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

美味しいけど味がわからない

作者: ナベノヂ
掲載日:2025/11/03

笑顔を見たくて。

「150円」

「1000円でいいのに。手作りなんだろう?

手作りってか、いや、とにかくはじめから」

「150円」

「わかったよ、今日の君のコーヒー代ね」


僕は後輩の女子にお金を渡す。

いつも通り、150円。

頑固な150円。


そして、コップに、コーヒーをそそぐ。


「うんっ、美味しい!」

「そう、ですか?」

「本当に美味しい! コクが深いって、こういうことを言うのか!」

美味しい、と、僕は言って笑顔を作る。

「これで150円、安すぎるって」

「いえ、150円でいいんです」

暗い顔で言われる。

なんだろう、元々、あんまり明るい子じゃないんだけど、毎回、このときは顔がもっと暗いような。気のせいだろうか。


それとも、気づかれているのか?


いやいや、

僕は首を横に振る。

そして、

「美味しかったよ! ありがとう!」

頭を小さく下げられる。




「味、わからないんだよなあ」

1人になり、呟く。

いつも、美味しいって言う。

本当は、味が全くわからない。


舌が、壊れているから。


『新入生に料理のコンテストで1位をとった子がいるらしい』

今年の4月、入学式の翌日くらいに、僕は聞いた。

それだけだったら、「へー、そうなんだ」で済ませていた。

てか、あの子に会うまでは、それで済ませていた。


髪は黒く、長く、いつも、うつむいていて。


本当に1位とったの? て言いたくなった。

けど。

僕は、その子の笑顔を見たくなった。

それで、運がよく、彼女の淹れたコーヒーを毎日飲ませてもらっている。


「舌が壊れてなかったら、心から美味しいって言えるのに」

作らなくても、自然に笑顔になるだろう。

そしたら、あの子も、笑顔に。


とりあえず、舌のことは、気づかれないように。




「インスタントなのに…」

先輩が行った後、私は呟く。


豆から挽いたコーヒーなんて、1回も作ったことがない。


なんであんなにも笑顔で「美味しい!」て言えるのだろう? インスタントなのに。

確かに、私は、一応、料理ができる。今は、あんまりしないけど。髪も長いし。

でも、コーヒーは、挽いたことがない。


「インスタントってばれませんように」

気づかれたら、きっと嫌われてしまう。

読んで頂き、ありがとうございました。


コーヒー美味い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ