プロローグ〜光の柱
魔法が存在するミネラル王国。
使えるのは一部の王族のみである。
私の母は光魔法が使える。
しかしその力は下手をすれば戦争の道具にもされてしまうため、私の父と母は店を残して世界を旅している。
この店は城下町の外れにある小さな薬屋である。
けれど普通の薬屋と違うところは一つ一つが店主の手作りであるということ。
薬草も置いてあるには置いてあるのだが、
そのまま使うのではなく調合してほんの少し光の魔力を注ぎ込んで作られたポーションがメインだ。
「この薬を飲んで少しでもよくなりますように。」
彼女がそう呟くと手の中から小さな優しい光が発せられ小瓶の中に入っていく。
よし今日の分は終わりと背伸びをした彼女は
明日に控えた自分の誕生日が楽しみであった。
「リーネが16歳になった瞬間、このペンダントを必ずつけなさい。」
両親は半年に一回ぐらいで帰ってくるのだが、
また旅に出る直前、母から渡された金色の枠に白い宝石が埋め込まれた雫型のペンダント。
本当は16歳の誕生日に直接つけてあげたかったけど、今回は少し旅が長くなりそうとのことで先に渡してくれていたのであった。
リーネは母のことが大好きであった。金色のふわふわとした長い髪、金色の優しい垂れ下がった目。色白で華奢な細い指にと魅力を語り出したら止まらなくなってしまう。聖女のような雰囲気で目立ってしまうため、母は出かける時はいつもローブを被って隠していた。
父はもともとどこかの騎士であったらしい。
らしいというのは父はその辺のことを語りたがらず、遠い国の騎士であったということしか教えてくれなかった。
母に何度か父について尋ねたことがあるが、
「ふふ、リーネはお父さんのことが大好きなのね」とかわされ一切教えてもらえなかったのである。
母も常にペンダントをしていたが、
私にくれたものとは色が違って白ではなく青い宝石であった。父の瞳の色も青なので、合わせたのかなぁとかぼんやりと思っていた。
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夜になりお店を閉めてご飯もお風呂も終わり、
あとは2階の自室で0時になるのを待つのみ。
「59分、あと1分で0時だわ」
時計とにらめっこをして0時になった瞬間、
「え、あ、な、なにこれっ‥!?」
彼女の体から白い光のオーラが包み込むように光り始めた。そして空に向かって家を突き抜ける一筋の光が現れた。
「ちょっと待って!?なにこれ!?え、あ、やばいとにかくペンダントつけなきゃ」
動揺のせいか上手く金具がつけられない。
「やばいやばい家光ってるしなんとかしなきゃ、落ち着いて落ち着いて」
カチッ
ペンダントをつけた瞬間光が急速に収まる。
【リーネが16歳になった瞬間、このペンダントを必ずつけなさい。】
お母さん‥瞬間ってマジの瞬間なのね。
リーネは家が光ったのだから周りの家の人たちから何か言われるかとドキドキしたが、数分経っても家に押しかけるどころか、光について家に尋ねてくる者さえいなかった。
「み、みんな寝てたのかな?ははは、なーんて、」
あれほど光ったのだから誰か1人くらい目撃しても良いとは思うのだが、誰も家に来ないならそれでいいかと納得することにした。
ふとペンダントに目をやると一瞬キラリと輝いた気がした。
「お母さんが帰ってきたら瞬間すぎるでしょって怒らないとね。」
明日も朝が早いし布団に入ることにした。
なんだか急に眠くなり体がポカポカして温かい。
おやすみなさい。
彼女はすぐに深い眠りへと落ちたのであった。
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「ふーん。あそこにいたんだ。近いね。」
城のバルコニーから静かに光った方向を確認するこの男は白くてサラサラと腰まである流れる長い髪をさらりとかきあげた。
金色に光る瞳は満月のような色であった。
「君の魔力が欲しい」
彼はそう呟き背を向け部屋へ入った。
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