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十一、朔子と航(3)

 どっちが先に出しても残り一つなので、大将の作品は二人一緒に卓袱台に出すことになった。

 航ちゃんは、本棚から透明なケースに覆われた飛行機模型を持ってきた。

「七十二分の一、川西紫電改!」

 それはいつぞや見せてもらった紫電改だった。

 信介さんとともに作った作品で、航ちゃんが初めて作ったプラモデルでもある。

「ふうん、奇遇ね。私の大将を見て驚くがいい!」

 と、私は自分の作品を宣言する前に、少しもったいをつけた。

 作品はすでに卓袱台の上にあるので一目瞭然なのだが、航ちゃんも孝美も困惑の表情を見せている。

「ええと、ホントにこれ?」

「そう! 私が生まれて初めて作った思い出の作品、二十分の一ララァ・スン!」

「うわあ……」


 そう。航ちゃんが最初の一作を出してくるなら私も――というわけではもちろんなくて、二十分の一というスケールがこのルールでは非常に大きなアドバンテージになるから、という理由で選んだのだった。

「切り札のつもりだったんだけど、どこで出そうか迷ってたら最後になっちゃった」

「意図はわかるけどさあ……生身の人間が紫電改と戦うわけ?」

「大丈夫だよ。ララァって生身で宇宙(そら)飛んでたじゃん。空対空適正でいける」

「イメージ映像だよね? しかも今「宇宙」って書いて「そら」って読んだよね?」

「細かいことは気にしない! とにかく二十分の一スケールよ! バラバラ無塗装のままほったらかしてあったのを、今日のために、今の私の技術で作りなおして、塗装までやったんだから」


 ほんとに昨日一日の突貫工事で大変だった。

 パーツにまとわりついていた工作用接着剤をひっぺがして洗剤で洗い、腕の取り付けには、接着中に重さで取れないないように真鍮線で作ったタボを挿し、ボヤけたモールドはナイフで削り込み、ミリタリーモデルの兵隊人形(フィギュア)と同じ要領で塗装した。ボックスアートを参考にして顔も書いてみたけど、目鼻の位置が若干ずれている気もする。


 とにかく、紫電改の七十二分の一に対して、二十分の一は三・六倍相当のスケールだ。割り振り可能なポイントの差は大きい。二度目のクリティカルヒットでも出されない限り、私の方が優勢のはずだった。

「こっちは副将戦までに決めるつもりだったんだよなあ。上手くいかないもんだね」

 航ちゃんが肩を落とした。


「どうする? 降参?」

「まさか。空対空なら副将戦(さっき)みたいなことにはならないだろうし、勝負は蓋を開けてみるまで分からないからね! そんなぞろぞろとした服で戦場を歩き回られたら困るし」

「ふふん、ならば見せてもらおうか。ゼロ戦の後継機の性能とやらを!」

「ララァは戦いをするような人ではなかった!」

「わけわかんないこと言ってないで、さっさと数字決めてよ二人とも……」

 孝美に急かされて、私たちはガンダムごっこを中断し、順番に能力値を提出する。


 と、その時だった。

「あれ?」

 孝美がポケコンのボタンを押す手をとめた。

「画面消えちゃった」

「ええ?」

 私と航ちゃんも、孝美の傍に近寄ってポケコンの液晶画面を確かめる。先ほどまで、理博のプログラム通りに能力値の入力を求める文字列が表示されていた画面は、少し暗くなり、まったく文字が見えない状態になってしまっていた。

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