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サイコパス  作者: 寅之助
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越野の酒癖

 一時、僕は、お店を閉めてから、越野さんと飲み歩くのが日課となっていた。


 田舎ではあるが、近くの繁華街へ越野さんと僕はタクシーで行き、焼鳥や寿司など、遅い夕飯を食べて、食後は、バーやスナックなどを梯子した。


 越野さんは、初対面の人と仲良くなることがとにかく上手くて、このあたりでの顔も広いようで、いろんな人を紹介してもらって、席をご一緒させていただくことも多かった。


 しかし、同時に、僕は、越野さんの言動というか、酒癖の悪さが気になり始めた。


 カウンター越しに、僕が女の子と喋っていて、女の子に僕が仕事の内容を説明していると、越野さんは、横から、「こいつは、詐欺師だよ、詐欺師」と繰り返し言った。


 それが10回、20回と、あまりにしつこいので、さすがに眉間に皺を寄せて越野さんを睨んでいた僕に気づいたのか、お店の女の子が気を利かせて「こっしーうるさいわよ!」と遮ってくれた。


 越野さんは、ドリンク類の原価率が低いという、ただ、それだけの理由だけで、日頃から、飲食業や水商売全般のことを詐欺呼ばわりしていたのだが、正直、僕には、それがとても不愉快だった。


 「だったら、家で好きなだけ安い酒だけ飲んでろよ!」と内心では思っていた。


 さらに、僕が初対面で知り合う方々に対して、越野さんは、「こいつは、俺の舎弟ですから」と言うことがあった。


 僕は、正直、ムッとしたが、酒場の雰囲気を壊すほどのものでもないと、スルーしていた。


 僕と越野さんはまだ知り合ったばかりで、二人の間に上下関係などなかったはずであったので、僕は、最初、てんで意味がわからなかった。


 このようにして、越野さんの横柄な言動をキッパリと否定しなかったことは、後から考えると、本当に良くないことだった。


 サイコパスの人達にとって、中途半端な優しさや曖昧さは、取っ掛かりになるのである。


 彼らは、常に、自らの餌食となるようなターゲットを物色しており、ターゲットが抵抗や拒絶の意思を示さないとなると、どんどん、どんどん、侵食して来るのであった。

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