キャラメイクで巻き込まれるようです(4)
2022/6/5 書き直し
おやっさんが去った後、俺はシーちゃんとガゼボ内で世間話をしていた。
シーちゃんは俺に気を許してくれているよで、この世界の話を聞かせてくれる。
魔法の事から始まり、食事の事まで多岐にわたり。まるで、旅行の土産話をしている様に楽しそうだ。
『それでですね』
「シーちゃん。ちょっとストップ。どうやら残りの3人が来たみたいだよ」
俺の鼻が、シーちゃんとは異なる3名の匂いを察知した。
『本当ですか。皆、友達なので紹介するです』
「ありがとう。じゃあ、迎えに行こうか」
立ち上がり、シーちゃんと共に3人の匂いがする方へと足を進めた。
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青薔薇の生垣の前に、彼女達は居た。
見た目はシーちゃんとよく似ていて、姉妹の様にも見える。
ただ、皆色と服装が異なっている。
赤い子がサリーの様な、踊り子風な服装。
青い子がトーガの様な、古代ローマ風な服装。
茶色い子がタンクトップにジーンズの炭鉱夫風な服装だ。
因みにシーちゃんは、シンプルなワンピースだ。
「サーちゃん。ムーちゃん。ディーちゃん」
シーちゃんは嬉しそうに。三人の傍まで駆け寄る。
「シーちゃん。この子達が、シーちゃんのお友達かな」
『そうなのです。紹介する―――』
『おい!。お前!。シーちゃんを置いてさっさとここから出ていけ』
赤い子がシーちゃんの言葉を遮り、こちらを睨んでくる。
どうやら、彼女がリーダーの様で、青い子、茶色い子を自分の陰に隠し、守るような行動をしている。
『なっ、ケイさんになんて事を言うのですか。ケイさんは私達を助けてくれた恩人なのですよ』
『シーちゃん。何を言ってるんだ』
シーちゃんに言い返されると思っていなかったのだろう。
赤い子は、驚いたような、或いは、戸惑ったような表情をする。
『こいつはプレイヤーだぞ』
『プレイヤーだから、それが、どうしたのです。プレイヤーだからと言ってひとくくりにするのはどうかと思うのです』
『シーちゃんは、こいつに騙されてるんだ』
不味いな。二人は熱くなっているのか喧嘩一歩手前と言った感じだ。
『ちょっと、ふたりとも』
『喧嘩はダメ』
残りの二人も不味いと思ったのか仲裁に入ろうとしているが、効果がなさそうだ。
「シーちゃん。俺の事は、いいからさ。少し落ち着こう」
『ケイさんは黙っていて下さい』
『そうだ、お前は黙ってろ』
『サーちゃん!!』
おかしいぞ。俺の事で言い争いになって居るはずなのに。
残りの二人は『もうちょっとがんばれや』と言った風な表情を俺に見せる。
無理。逆に火を注ぎそうなのに、どうしろと。
感情的にはなって居るもの、感情論で言い返していない所を見るとまだ平気かな。
『だいたい。騙されてるってどうやってです。助けられたのは紛れのない事実です。それとも創造主様の間違いをケイさんが意図的に仕組んだとでも言うつもりです?』
『それは』
赤い子がどもる。
勢いで『騙されている』とは言ったものの、予想外の切り返しで返答に困ったように見える。
『兎に角、俺は認めない』
『どうして、解ってくれないのです』
『だって、プレイヤーだぞ』
『だから、どうしてプレイヤーのひとくくりで片付けるのです。プレイヤーにだって善い人と悪い人がいるのです』
争いが戻り、堂々巡り。
参ったな。どうにかしたいが、手を出せば悪化しそうで下手に手が出せない。
『そんなはずない』
『どうして、解ろうとしないのですか。そんなサーちゃん大嫌いです!!』
「シーちゃん。流石にその言葉は駄目だ」
癇癪の様にシーちゃん放たれた言葉に注意をする。
シーちゃんもしまったと言う表情をする。どうやら、思わず言葉が零れてしまった様だ。
『あぁ。そうかよ。そうかよ』
グシグシと涙目になる赤い子。
空間が歪み、どこからともなく熱波が襲う。
なんだこれは。
『ダメよ。サー』
『さっちゃん駄目』
残った、二人も慌てている様。
ヤバい事だけは確かなのは解ったので、俺は二人の傍まで駆け寄ろうとする。
『俺だって、シーちゃんなんか嫌いだ』
赤い子の言葉に呼応するように火球が生まれシーちゃん目掛けて飛ぶ。
不味い。本当にコレは不味い。そう、理解すると同時に世界が遅くなった。
ゆっくりとシーちゃんに向かい動く火球にシーちゃんと赤い子の驚いた表情。
どうやら、故意に放ったのではなく思わず出てしまった様だ。
いや、そんな分析をしている場合では無い。
「ぐっ」
粘度のある液体をかき分けるように鈍い体を無理やり動かす。
早くしなければ、シーちゃんに火球が直撃してしまう。
着弾まであと30センチあるか無いかの距離だ。急がないと。
必死に体を動かす。
「ぐぐっ」
着弾まであと10センチあるか無いかの距離まで火球は進んだが、なんとかシーちゃんと火球の間に手を差し込むことに成功した。
それと、同時に世界は元の速さに戻った。
「ぬっ」
掌に衝撃が走り、ジュッと手が焼ける音と匂いがし、痛みが襲う。
思わず手を引っ込めそうになるが唇を噛み堪えた。
痛みからか血の気が引き、変な汗が出てそうだ。
それでも何とか受けきることに成功した。
『違う。違う。そんなつもりは無かったんだ』
血の気が引いた俺よりも真っ青な顔をしている赤い子。
自分のしでかしたことに動揺しているようだ。
「大丈夫。シーちゃんは無事だよ」
声を掛けるが、聞こえていない様で未だに青い顔をしている赤い子。
シーちゃんは、突然の出来事に放心状態で『サーちゃん』と呟き。
残った二人も、驚いた様子で動けないでいる。
『違うんだ。そんなつもりは無かったんだ』
そう叫ぶと、赤い子は飛び去ってしまう。
不味い。彼女を一人にすべきでは無い。
今度こそ守らないと。
「二人は、シーちゃんを見てて、俺はあの子を追いかける」
『わ、解ったわ』
『了解』
あの子の匂いを頼りに飛び出していく。
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