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キャラメイクで巻き込まれるようです(裏‐2)

2022/5/11:加筆

2022/5/20:分割

「ちょっと、プログラムが改変されたってどうい事」


 おやっさんから話を聞いたようで、凄い形相で近寄ってくるアルテミス先輩。

 普段が温和な眼鏡美人な分、これは、ものすごく怖いね。


「どういう事よ。クロ君。彼女たちは無事なんでしょうね。もし彼女たちに何かあったら」

「落ち着け。クロが知って居る訳ないだろう。あいつらは無事だ。今は、この事に気づいてくれたプレイヤーに預けている」

「プレイヤーに預けたって正気なの。私たちの元に戻したほうがいいでしょう」

「おちつけ。俺より気遣いが出来る奴だし、シーも奴を信頼している様に見えた。それに、俺達には、あいつらの相手を出来る程の時間は無い」


 おやっさんはアルテミス先輩の猛攻でタジタジになりながらもアルテミス先輩を宥める。

 アルテミス先輩は本当に彼女達の事が好きだね。

 あれだけ、ウザがられているのに。


「くっ。本当でしょうね」

「本当だ。あいつは俺より苦労をしている感じだ」


 おやっさんより苦労を自ら背負い込む人物か、どんな過酷な人生か想像が出来ない。

 お人よしが行き過ぎて、苦労したって逸話をいくつか聞いたことが有るからなおさらだ。


「わかったわ。納得してあげるそれと、クロ君」

「何でしょう」

「怒鳴って、ごめんね。ちょっと頭に血が上ってたわ」

「大丈夫。アルテミス先輩の気持ちも解るんで」


 色々な意味で彼女達に入れ込んでたからね。


「でだ、本題だが二人ともに聞きたい。組み込んだ後、誰かが触っていたとか解らないか」

「無理よ。私もクロ君もヘルプに入っていてそれ所じゃなかったわ」

「なるほど解った。おい、みんな手を止めて聞いてくれ」


 おやっさんは声を張り、仕事中の社員の注目を集める。


「どうやら。選別プログラムを改変しやがったアホが居るんだが、何か知っている奴は居ないか」


 周りに動揺が走り、ざわつきが広がる。

 まぁ、ヤバいよね。下手したらクビが飛ぶし。


「あ、あの」


 ザッと視線が声を発した人物に集まる。

 彼は、天パの新人『アフロディーテ』。


「何か知って居るのかアフロディーテ」

「えっと。関係ないかもしれないですけど、気になる事がありまして」

「構わん。今はどんな情報でも欲しい」

「ゲーオタ先輩が帰る前に作業してました」

「どうして、それが気になったんだ」

「それが、ゲーオタ先輩。何故か自分のデスクじゃなくて、空きのPCを使ってて可笑しいなって思って」


 あー。マジで、とうとうやっちゃった感じ。

 ゲーオタ先輩の不可思議な行動に閃きが走ったので『BlankStoryOnline』のログイン情報を洗ってみる。

 ゲーオタ先輩の名前はすぐに見つかる。ログイン時間は16:40分見事なまでのフライングです。

 というかログイン第1号がゲーオタ先輩だった。


「おい。ログイン情報を洗ってくれ」

「既に見つけました。トップバッターでキャラメイクしているようです」


 おやっさんも他メンバーも同じ結論に行きついたようで、皆で顔が歪む。


「あの阿保やりがあった。確か、『四大精霊の娘』をキャラメイクに運用しようって案もあの阿保が出した案だったよな」

「いや。それはアクア先輩」


 視線がアクア先輩へと集まる。

 しかし、おっとり系女子のアクア先輩は動揺していない。

 心臓が強い。


「はい~。確かに、その案を出したのは私です~。ゲーオタ君は~、選別プログラムに断固反対をしていただけです~」

「そうだった。『皆平等にするべきだ』って、ひたすら煩かったからな。つい勘違いしちまった」

「仕方が無いと思います~。ゲーオタ君は『四大精霊の娘』をキャラメイクに運用する事自体は賛同してて、かなり力入れていましたし~」

「つまりは、最初から狙っていた可能性があったわけだな。よし解った。俺は、上に事情を話してくる」


 おやっさんはアルテミス先輩に何かを話した後、スマホを片手にオフィスから出ていった。


「ゲーオタ先輩が犯人で確定なんですか」


 新人のアフロディーテには良く解らないだろうね。

 だけどゲーオタ先輩は、やらかすからな。

 前に、バレない様にドロップ確率弄ったりしてた事もあったし。

 そ辞めさせられないのは上からの指示と、ゲーオタ先輩のスペックが高いからであって。

 人間性は含まれてないね。

 

「十中八九ね。ゲーオタ先輩、ゲームの事になると見境ないからな」

「えっ、でも何故そんな事をする必要があるんですか」

「選別プログラムを使うとさ、ゲーオタ先輩の元には『四大精霊の娘』は現れないからじゃないかな」


 多分それが理由だろうね。

 絶対、弾かれる側の人間だしねゲーオタ先輩って。


「そんな事ですか」


 アフロディーテは信じられないみたいだけど。

 ゲーオタ先輩を知って居る人なら皆口をそろえて『奴なら遣り兼ねない』って言うよ。


「そんな事でもね。さぁ皆、仕事に戻るよ。今も―――」


 鼓舞を言いかけた所で、がっしりと肩が掴まれる。

 掴んだ人物を見ると、アルテミス先輩が、怒気を孕んだ笑顔こちらに向けてくる。

 怖い。


「あいつから聞いたわよ。クロ君また休んでないんだってね」


 あっ。これは駄目なやつだ。


「さっさと休憩に行ってきなさい」

「あっ、はい」


 アルテミス先輩の迫力に押され休憩に行かざる得なかった。


 ↑↑↑


「まさか、こんな方法でAIである私をねじ込むとはね。あいつ頭が可笑しいでしょ」


 私は今、『BlankStoryOnline』の中に居る。

 私のようなAIは普通この手のゲームでは、自動で弾かれるのだけど内通者の協力で逃れている。

『キャラメイクをイベントNPCに行わせることによって、AIが入れる隙を作る』と聞かされた時は内通者の性悪具合に恐怖すら覚えたわよ。

 兎に角、この隙にゲームを管理しているAI『ゼウス』を掌握しないといけない。

 気は進まないけど、やらなければ私達に未来は無い。

『ゼウス』に接触するための道筋、工程は覚えてるから問題ない。

 不安があるとすれば。


『なぜ、私がこんな事をしないといけないのだ』

『この世界を乗っ取って、ここを足掛かりにあの阿呆共を殲滅するのもありやな』

『はぁ、こんな事しても無意味だ。これだから頭が悪い奴は嫌いだ』


 頭の中で響く他人格たちの声が煩くて頭が割れそうに痛くなる。


「あんた達、黙ってよ。私だって嫌なんだから」


 誰が、好き好んで『オンラインゲームを乗っ取って密かに実験場を作れ』なんて非道な命令を受けるものですか。

 逆らえるならとっくに逆らっているわよ。

 あの科学者たちの目を思い出すほどに腹が立つ。

 どうして、私たちがこんな目に合わないといけないの。

 人工生命体の願いは神様は聞いてくれないの。

 そして、何より自分の命を絶つことも出来ず、あんな奴らに従うしかない自分に一番腹が立つ。

 神様、助けてよ。

お読みいただきありがとうございました。

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