キャラメイクで巻き込まれるようです(裏‐1)
「クロ、クロ居るか」
おやっさんの大きな声が社内に響く。
どうやらトラブルのようだ。
この大変な時に勘弁してほしいよな全く。
「おやっさん。どうしたの」
「クロ。おまえ、また休憩に行かずに仕事してやがったな」
困った奴を見る様な表情で僕を見てくるおやっさん。
何で何時もバレるんだろう。おやっさんの勘は鋭くて困る。
「おやっさん。お小言は後にしても貰っていい。トラブルなんでしょ」
「くっ。確かに今はそれどころじゃねえな」
良かった。どうやらお小言は回避できたらしい。
「クロ。プレイヤー選別プログラムはどうなってる」
「プレイヤー選別プログラムなら。午前中にアルテミス先輩と一緒に組み込んだよ。動作チェックもちゃんとダブルチェック済み」
「そうか」
おやっんがそう聞いてくると言う事は、つまりはそういう事か。
「もしかして、不具合でも見つかった」
「いや、そもそも正しく機能しているか。怪しい」
「えっ。ヤバくない」
ヤバいよね。
プレイヤー選別プログラムは、『四大精霊の娘達』の負担を現象させるために作られたプログラムで。
機械本体に保存されているプレイヤーの行動履歴や現在の感情情報等を参照し、高い基準値をクリアした人の元にだけ『四大精霊の娘達』を派遣するプログラムだ。
考えられる最悪のケースは4人で何千人ともいえる莫大な数を捌き、『四大精霊の娘達』のプレイヤーに対する評価が暴落する事だ。
彼女達のプレイヤーに対する評価が暴落すれば、生みの親である『精霊王ユグドラシル』のプレイヤーに対する評価も暴落する。
「既に手遅れ気味だが。最悪はまのがれた」
「マジでか。どうする。やっぱりロールバック処理するつもり」
ロールバック処理は困ったことになるけど、『精霊王ユグドラシル』は『BlankStoryOnline』には欠かせないキーパーソン。
彼女のプレイヤーに対する評価の暴落は、即ちプレイヤー全体の弱体化を意味する。
「いや、上からは補填を出して続行だそうだ」
ホッと胸をなでおろした。VRゲームのロールバックは難しいからね。
「クロ。すまないが原因を調べて、復旧してくれ。大丈夫だ。キャラメイクシステムは停止し、お知らせも打っている」
「わかった」
おやっさんのこう言う、素早い対応は好きだ。
仕事がやりやすい。
さてと、何処が原因かな。
「………」
プログラムを見てすぐに言葉が出てこない。
「おやっさん。プログラムが弄られてる」
「なにっ。本当」
「本当。作って無い変数が増えてるし、おまけにプログラムの数値が書き換えられていし、追加に何か書き込まれてる」
「誰だよ。そんな事をした馬鹿は」
本当だよ。しかも、こいつプログラムが汚いから読みづらい。goto文ばっか使うなよ。
「どれだけ掛かりそうだ」
「読んでみないと解らない。バックアップで上書きしたいけど、これ多分色々弄られてそうだからエラー吐くね」
質が悪くてこっちも吐きそうだよ。
「すまないが復旧を頼む」
「解った。おやっさんはデバック準備お願い」
「ああ。わかった」
本当に面倒なことしてくれちゃって。
犯人に対して怒りを覚えながら、それをプログラムへとぶつけていく。
どれだけ時間が掛かるのか解らない。涙がでそうだ。
↓↓↓
「お、終わった」
デバック込みで40分。頑張った。超がんばった。
「クロ。お疲れ」
「おやっさんも。お疲れ」
ヘロヘロ仲間同士で検討を讃えあう。
なんだよ。変な所まで弄りちゃって。覚えてろよ。
あー。甘いものが食べたい。
「うし。もうひと頑張りするか」
「だね」
「おまえは休め」
おやっさんの真似をして立ち上がると止められた。
「でも、今から犯人捜しでしょ。流石にさ、こっちも犯人に一言文句を言いたい気分なんだよね」
えぇ。面倒を寄越した犯人に言わなければ気が済まないですとも。
「わかった、犯人捜しまだでぞ。後でまとめて休憩しろよ」
「もちろん」
「おまえの、それだけは信用が無いんだよな」
おやっさんは、苦虫を嚙み潰したような顔をする。
それに対して、失敬なとか、酷いとかは言えない。
事実だからね。
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