キャラメイクで巻き込まれるようです(3)
2022/5/11:表現変更
2022/5/15 :表記漏れがあったため加筆
2022/5/19:分割作業
シーちゃんが何か唱えると、後光と共に翼の生えた髭面天使が現れた。
あえて、見た目にはつっこみは入れない。そんな余裕はない。
『運営の【おやっさん】です。何かありましたか』
「初めまして、私はケイと申します。不具合かもしれない事案がありまして、お呼びしました」
覚悟をどれだけ持っていても、緊張するがこれもシーちゃんの為気合を入れろ。
シーちゃんは、畏怖に耐え切れなかったのだろう俺の髪に隠れた。
『あぁ、あなたが我が社の公式VRライバーを引き受けてくれた方ですね。この度はありがとうございます』
「こちらこそ、ありがとうございます」
『それで、不具合と言う話ですがいかがされましたか』
おやっさんの言葉遣いは丁寧だが、少し顔が曇り、疲れている雰囲気が感じ取れる。
忙しい時にこんな話聞きたくは無いのはわかる。
けど、話すしかない。
「ええ、シーちゃんの持っているリストに関する物なのですが」
『シーの持っているリストですか。はて、どう言った内容ですか』
要領が掴めないって様子だ。
深呼吸を一度する。言葉にするのがこんなに怖いとは。
だから勢いをつけて、言ってしまえ。
「えぇ。シーちゃん達は良く頑張ってくれているのですが、流石に500人以上の相手を4人で行うのは無謀かと思いまして」
言ってしまった。そして、聞かされた、おやっさんは困惑している様子。
やはり、想定外だったのか。少しほっとした。
もし、ネチネチ言って来たら怒ってやろうと思ったよ。
『500人以上………。そんな馬鹿な。シー。ちょっと紙を見せてくれ』
『は、はいなのです』
シーちゃんは恐る恐るおやっさんに紙を渡し、すぐさま俺の髪に隠れる。
カクレクマノミみたいだが、シーちゃんは今、必死に戦っている。
『馬鹿な』
シーちゃんから、受け取った紙を広げ、大きな声を上げるおやっさん。
そんな声に、ビクリと反応し、俺の髪を引っ張るシーちゃん。
少し痛い。
『すいません。どうやらこちらの手違いでとんでもない事になって居るようです。すぐ戻って――』
「あの」
おやっさんの言葉を遮る。
待ってもいいんだが、すぐに帰りそうな雰囲気だったし。
帰られると本題が果たせないから、無理やり割り込ませてもらった。
『はい。何でしょうか』
「どうか!。シーちゃん達を誉めてあげてくれないでしょうか!。どうやら一部のプレイヤーから心無い暴言や暴力のせいで、随分傷ついているようなので」
俺の言葉を聞いたおやっさんはハッとした表情をした後、優しな表情になる。
良かった気づいてくれたみたいだ。
『公式VRライバーがあなたみたいな人でよかった』
おやっさんの独り言だろうが、ボソリと呟いた言葉は俺の耳まで届いていた。
少しこそばゆいので、聞こえなかった事にする。
『シー』
おやっさんに呼ばれ、シーちゃんはのっそりと俺の髪から離れる。
『シー。良くやった。お前は自慢の娘だ。それと、悪かった。こっちのミスでお前に辛い思いをさせた。すまない』
頭を下げるおやっさん。
シーちゃんは勢いよく飛び出し、おやっさんにしがみつき、わんわん泣いていた。
おやっさんが人格者で助かった。
これで一件落着かな。
↑↑↑
『お願いがあります』
「お願いですか」
シーちゃんが落ち着いた所でおやっさんは俺に向かって言ってきた。
『私どもがメンテナンス作業をしている間、シー達を預かっていただけないでしょうか。無論、報酬も用意いたします』
「それは構いませんが、私に預けても大丈夫なのですか」
『残念ながら、メンテナンス作業中はシー達を構って上げれる暇がないのです。かと言って今のシー達を放置するのも気がかりです』
シーちゃんの方を心配そうにチラリと見るおやっさん。
シーちゃんは目を赤く腫らし、邪魔しない様にか、静かにして、おやっさんの方を見返している。
「ならば私にって事ですか」
『その通りです』
おやっさんはうなずく。
「ですが、大丈夫でしょうか。シーちゃん達は、その。プレイヤーが原因で心が傷ついたのですが」
『大丈夫だと、思います。な、シー』
『はいなのです。ケイさんは優しいのです』
腫らして目を細め、笑みを浮かべてくれるシーちゃん。
とても、嬉しく。誇らしかった。
『シーがそう言っているので、他の子達も問題は無いと思っております。ですので、なにとぞ、お願いします』
おやっさんは頭を下げ、シーちゃんも同じく頭を下げた。
「頭を上げてください。解りました。お受けします」
『ありがとうございます。では早速』
おやっさんが何かを操作するような仕草を取ると、目の前に半透明のボードが浮かび上がって来た。
『インスタントクエスト』
見出しにはそう書かれており。
『シー。サー。ディー。ムー。『四大精霊の娘達』を面倒を一定時間見る事
報酬:???
【受領】 【拒否】 』
本文にはシンプルな内容と???表記の報酬、そして【受領】【拒否】ボタンが付いていた。
「えっと」
説明も無しに、行き成り現れたウィンドウと情報の多さに、少し戸惑いを覚える。
『良ければ、受領のボタンを押してください』
おやっさんの指示道理に受領ボタンを押す。
「お任せください。シーちゃん達は責任をもって預からせて頂きます」
『よろしくおねがいします』
『ありがとなのです』
おやっさんは頭を再び下げ、シーちゃんは喜んでいる。
『それでは、名残惜しいですが帰ります。他の娘達も誉めないといけないし、不具合の修正も急がないといけないので』
シーちゃんがひとしきり落ち着いた後、おやっさんが笑みを浮かべて言う。
「はい。よろしくお願いします」
『シー達よろしくお願いします』
「わかりました」
『シーも、皆と、ゆっくりと休んでなさい』
『はいなのです!!』
その光景はまるで親子の様に見えて微笑ましかった。
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