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キャラメイクで巻き込まれるようです(2)

『本当に話を聞いてくれるです?。話したら力になってくれるです?』


 シーちゃんは、捨てられた子犬の様な目をしている。

 きっとシーちゃんも悩みを抱え込むのが、相当に辛く限界が近かったのだろう。

 救いの手を取るのに悩む様子も疑う様子もなかった。


「もちろん」


 見捨てる気はさらさらない。

 もしシーちゃんが落ちるのならば、心中覚悟で一緒に落ちる。

 それぐらいの覚悟はできている。


『シーが悪いのです』


 その言葉から紡がれるシーちゃんの言葉は、感情的で理解するのに時間が掛かる程には滅茶苦茶だった。

 けど、その言葉一つ一つにシーちゃんの苦痛が凝縮されたような。そんな悲痛の吐露を感じる。

 シーちゃんを助けるべく、ひたすら彼女の話を聞き続けた。


 ↓↓↓


 シーちゃんの話を聞き終え、噛み砕き理解した後に残ったのは『シーちゃん達は悪くないくね』と言う感想だった。


 発端はシーちゃんを含めて4人で遊んでいるところに訪れた創造主様こと、運営から告げられた神託だった。


『この紙に書かれてある人の元に行って、その人、ステータスボードを完成させてほしい』


 つまりは、シーちゃん達にキャラメイクのお手伝いをして欲しいと言うおねがいだった。

 4人は、もちろん快諾。大好きな創造主の為、張り切っていた。

 初めのうちは、神託通りに滞りなく行えていた。だが、ある時を境に事態は一変した。


『………!?』


 紙に書かれてある人物が爆発的に増えたのだ。

 それでも、シーちゃん達は頑張っていた。

 大好きな創造主様の為に。

 でも、それは無謀もいい所だった。

 なにせ4人で500人を捌かないといけなくなったからだ。


『頑張らないとです』


 シーちゃんの心労は計り知れなかった。

 其処に、追い打ちをかけたのはプレイヤーだった。

 彼らは待たされた苛立ちから、はたまたそういう趣味からからかシーちゃん達を怒鳴り傷つけた。

 中には手を上げる輩までいたそうだ。


『シーがもっと頑張らないと』


 ただ、シーちゃんはプレイヤーを恨まなかった。

 出来ない自分が悪いと自身を追い詰めていった。

 その行いが、さらにシーちゃんに心労をかけ、自信を喪失させた。

 そんな時に出会ったのが俺だったと言う訳だ。


「やっぱり、シーちゃんは悪くない」


 話を聞けば、誰だって同じ回答を導き出すだろう。

 間違っているのはシーちゃんじゃなく4人に500人もの人数を処理させようとした創造主様だと。


『違うのです。シーが悪いのです』


 ただ、それを信じるにはシーちゃんの心は摩耗し、自信は砕かれている。

 信じられずに自身を攻め続けている。

 創造主様を呼び出し、創造主様の口から誤りを認めて貰えば話は別だろう。

 だが、彼女は恐れている。

 創造主様の口から落胆の言葉が出てくることを、期待に応えられなかったと。

 恐れているからこそ、頑なに創造主様に報告することを拒み続けている。


「これは、最終手段を取るしかないな」


 謂わば危険な賭けだ。こんなものに頼ざらる得ないなんて。


「シーちゃん」


 人差し指をシーちゃんに向ける。

 シーちゃんは、ビクリと恐怖の表情を浮かべ固まった。


「えらい。えらいよ。シーちゃんは、一生懸命で役割を最後まで果たそうと頑張ってて偉いよ」


 人差し指の腹で、優しくシーちゃんの頭をなでる。

 優しい声色を心掛け、シーちゃんが落ち着くように心がける。


「だからね。俺はシーちゃんを誉めてあげます」


 シーちゃんの頬を涙が伝った。

 本当に頑張ってるよ。

 大人でも耐え切れない奴も居るだろうに、その小さな体で良く頑張っているよ。


「俺が、創造主様にシーちゃんの頑張りを伝えてあげる。そしたらきっと、創造主様も誉めてくれるよ」


 確証の無い無責任な発言。

 でも、今のシーちゃんにはそれが必要だ。


「だからね。創造主様を呼んで欲しいな」


 これは、危険な賭けだ。

 だけど、やるしかないんだ。

 仮にこのまま放置し続けてもいつかはバレるのだ。

 だったら味方に成れる今、無理やりにでも呼び出してもらいシーちゃん達を庇う方がましだ。

 俺の手腕にシーちゃんの未来が掛かってると思うと恐怖はある。

 だけど、このまま放置する事は出来なかった。


『わ、解ったのです』


 涙をぬぐいシーちゃんは涙声で言う。

 呼んでくれるようだ。ここから先が正念場だ。

 例え、VRライバーを降ろされたとしても、刺し違えてたとしても、シーちゃんだけは守り抜く。


お読みいただきありがとうございました。

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