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キャラメイクで巻き込まれるようです(1)

VRライバーになると、居酒屋でアルに宣言してから数日後。

VRゲーム『BlankStoryOnline』にログインしているのだが。


「遅い。いくら何でも遅すぎる」


ガゼボ何に設置された椅子に座り、机に顔を付けたまま呟きたくなる心情を吐露する。

そんな事しか今の俺には許されていない。なにせ、トラブルに絶賛巻き込まれているからな。

何があって、どうなるのか、それすら解らない。


「本当にこう言うのは辛い。やめて欲しいよ」


本日17時に稼働したこの『BlankStoryOnline』。

俺は稼働と同時にログインする事に成功した。


「初めは良かったんだけどな」


本当に、ほっんとうに初めだけは良かった。

5年ぶりのVRゲームと言う事で、その全てに感動を覚えていた。

洋風の庭園を模した美しい場所に感動し。

じゃざざと水を吐き出す噴水の、リアリティー溢れる冷たさに目を見張り。

青薔薇の生垣から漂う、青臭い葉と薔薇の香りに期待を膨らませ。

ガゼボの木陰で涼みながら、噴き出す不快な汗に笑みを浮かべた。

5年という歳月による進歩を全身で味わい気分も期待も最高潮。

さぁ、今からメインディッシュだと言う時に。何も始まらなかったのだ。


「本当に何が起こってるんだ」


酷い話だ。こんな事が有っていいのか。

キャラメイクも説明もトラブルを知らせる案内すらない。

現在の時刻は17:30分。一切情報が入ってくることもなく30分も待たされ続けているのだ。

最高潮まで高まった、あの時の期待を返してほしい。


「せめて、あそこを探索出来てたらな」


遠くに建つ立派な洋館に羨望を向ける。

あの洋館は、この場所に成れ退屈を覚え飽き始めた頃に、暇つぶしに冒険と称して目指した場所なんだが。

辿りつくことが出来ず散々な目に有った。

建物が見えているのにも関わらず何度も迷う。

明らかに進んでいるはずなのにスタート地点であるこの場所に戻って来る。

訳の分からない謎の現象に見舞われ続けた。

意地になって何度も冒険を繰り返していたが、この暑さで先に体がバテてしまい一時中断。

結局、体のダルさと洋館への未練だけが残る結果へと陥った。


「退屈だ。こうなるならさ、せめて暇つぶしぐらい用意しといてよ。運営さんよ」


手足をジタバタさせ運営への不満を漏らした所で、俺の鼻が待ちに待った変化をかぎ取った。

生垣の青薔薇とは違う甘い花の香りと、人の体臭が入り混じったような香り。

さっきまで確かに無かった変化に、口元が緩みながらも急いで視線をそちらへと振り向かせた。

そこには宙に浮くマリモがいた。

いや、正確に言おう。土下座しマリモの様に丸く縮こまった緑色の人型の何かが居た。


「いや。なにこれ」


本当になにこれ。

変化は求めていたが、土下座する生物を見せられてどうしろと言うつもりだろうか。

土下座を見せるくらいなら、説明を寄越せ。


『ほんっとうにごめんなさい!。力いっぱい謝るので、デコピンだけは待って欲しいのです!』


演技でもなく上辺だけでもなく、本当に震え怯えながら土下座する何か。

便宜上、妖精(仮)にしよう。

妖精(仮)は本当に怯えている様だった。


「顔を上げて、怒って無いから。もちろんデコピンなんかしないよ」

『は、はいなのです』


思う事は、確かにあった。小言の一言ぐらい言ってやりい気持ちも確かにある。

だけども、あんなに怯えている、小さくて幼そうな妖精(仮)を見て言うほどの悪人にはなれない。


「俺の名前はケイって言うんだ。君の名前はなんて言うの」

『シ、シルフのシーなのです』


手足そして、透明な羽を伸ばしす妖精(仮)事、シルフのシーちゃん。

シーちゃんの見た目は予想道理幼く、小学生低学年ぐらいだろう。

こんな事をさせられているシーちゃんに同情を覚えた。

同時に、『こんな幼い子にこんな役をやらせるなんて』と運営に文句が込み上がる。


「シルフのシーちゃんって言うんだね。シーちゃんって呼んでもいいかい。俺の事はケイでいいからさ」


シーちゃんを怯えさせないように、笑みを浮かべなるべく柔らかい言葉遣いに気に掛けながら、語りかける。


『ど、どうぞです。シーもケイさんと呼ぶのです』


シーちゃんの怯えはまだ消えない様だ。


「それでさシーちゃん、怯えているようだけど大丈夫かい。もしよかったら話を聞くし。なんなら力になるよ」


胡散臭いナンパの様な言い回しになったが本心だ。

お読みいただきありがとうございました。

感想及び誤字脱字がありましたら気軽にコメントください。

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