?.敗北?……この私が?また、負けたの?
二話目がやっと終わり、彼女はぐったりしていた。
悪魔も物語が終わるなり休憩してくるね!とだけ言って、どこかへよろよろと体を引き摺っていった。
彼女も悪魔もお互い今度は疲れ切ってしまった。
嘘でしょう?
そんな、こんな馬鹿な事……あるっていうの?
別に全然手加減してないのに。
あそこまで追い詰めて、頑張ったのというのに。
唯一の相棒を殺させ、絶望させる……ここまではほんとに良かった。
出だしはいい流れだったのよ、ほんと。
そこからその傷口を抉るようにじわじわと話を広げていくつもりだった。
なのに……主人公、あの女は立ち直ってしまった。
あのまま心の闇に引き摺り込んでやるつもりが、闇を振り切ってまた歩き出してしまった。
劣勢を少しでも食い止めようと、最後のあがきであの女を殺してやっても。
それですら流れは変えられなかった。
自分が死ぬなんて事になれば、こんなはずじゃなかった……って自分の後悔や怨嗟で心が潰れていくと思ってたのに。
そうやって物語の最後にせめて一撃くらわせてやろうとしてたのに。
そんな状況下ですら彼女は前を向いていた。
信じられない。なんで?どうして?
あの死にかけの天使のせい?
いや、もうそんな力は無かったはず。
じゃあアイツのせい?
それも違う、それにしたって意識が変わりすぎる。
あの女自身が変わった。それも自分の意志で。……なぜ?
人間関係だなんてろくなもんじゃない、って散々知っておきながら。
それでも人と生きるっていうの?馬鹿じゃないの?
いつか傷つけられるって分かってるでしょう?
また苦しむって分かってるんでしょう?
仲間がいるからって何だっていうの?
それが何なのよ?
『幸せだった』?……はあ?何をぬかすか。
分からない。全然分からないわ。
全くもって意味不明。
……あ〜あ。
あれほど力を入れといて、完全敗北。
様子見の前回と違って本気で、この結果。
悔しいのね、敗北って。
まだこのゲーム自体の勝敗じゃないからこうも落ち着いていられるけど……これが最後だったら怒り狂ってしまいそうだわ。
はぁ。なんだかどっと疲れちゃった。
疲れといえば……そうそう、アイツもアイツで疲れ切ってるんだった。
アンタまでなんで疲れるのよって話。
傍観者なんでしょう?一緒になって疲れてどうすんの。
だいたい、あんなに動き回るからよ。
チームメンバー全員に挨拶に回るフリをして、あの時自分の魔力を分配して回り……そして自分も分身を通じて彼女を助けて……
自分も動きながら、登場人物も操作して……なんて。
どんだけよ。そりゃ疲れるわよ。
まあ結果としては、アイツの計算通り彼女は周りに支えられてああやって成長していった訳だけど。
そりゃあその魔力とやらだって枯渇するわ。
そんなに必死で助けるほどあの主人公のどこがいいのかしら。
今回かなり疲弊してる。
今までちょくちょく隣に現れて私を監視してたのに、休憩なんて言って自分から立ち去るなんて……きっと相当なんだわ。
あんな弱った体で次のゲームも動けるの?いや無理でしょ?
まあこちらとしては好都合なんだけど。
ふう……
しっかし、あれね。今回は絶望を与える事ばかりに気がとられすぎて疲れちゃった。
いかにして追い詰めてやるか、考えるのもなかなか頭を使うのよ。
次回もこうだと気力が持たないわ。
さて、どうしたもんか。
あんまり力を入れすぎると私もへばっちゃう。
あっ、そっか。
何かを『与えすぎて』疲れるというなら……
そうか、何も『与えない』ようにしよう。
アイツも疲弊しているし、ちょうどいいんじゃない?
次は逆に『与えない』事で苦しませてやろう。
発想の転換。
絶望は『与えない』……そういう私からの直接的な攻撃は一切無し。
でも、希望もわざと『与えてやらない』。
アイツの援護を阻止し、希望を持たせないようにすることに全力を注ぐ。
二話目が絶望も希望も『ある世界』なら、次は『ない世界』だ。
なんせ五回戦まであるんだから。
持久戦でもあるのよ、これ。バテた方が負け。
よし、私の方向は決まった。後はアイツと主人公がどうするか……楽しみだ。




