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我が覇道  作者: もふ
8/8

8 VS甘洪

●関羽SIDE

ご主人様が張世平殿をお抱え商人として召し抱える事が出来た。

まさか、ご自分で兵を率いる事を考えられていたとは驚きである。

それは星も同じようだが、どちらかと言えば心が躍っているような感じがした。

兵を率いるとなれば、私が短期間でも調練に身を投じていた経験が活かされ、更にご主人様は私を頼りにされ、深く依存してくれる。

傷口もご主人様の手厚い治療で以前より痛みはなく、心も蝕まれるような不快感もない。

私はご主人様の1番になりたい訳ではないが、死ぬまでお傍に侍るつもりだ。

寵愛してくださる事を期待してしまうのは女としての気持ち。

ご主人様の敵を悉く屠りたいと思うのは武人としての誇り。

2つの気持ちから強く惹き付けられるが、それが本当に甘く奈落の底に堕ちていくような感覚になる。

どこまで深く、強く、求め続けたい。

何気ない会話の1つ1つが私の心の支えとなり、絡みついて放さない。


「さて、張世平から言われたお願いを済ませる事にしよう」


ボーっとしながらご主人様を見詰めていると、私達に言葉を掛けてこられた。

張世平殿からお願いされた事は1つ。

常山に帰る道中で最近暴れ回り出した、頭に黄色い布の巻いた新手の賊どもの討伐。

どうやら帰りたくても帰れないらしく、公孫瓚殿との商談も終わった現状では立ち往生しているそうだ。


「ふむ、主に仕えて初めての戦という事になりますな。常山の趙子龍と謳われた我が愛槍・龍牙で蹴散らしてみせましょうぞ」


「それは私も同じです、ご主人様。我が青龍偃月刀で愚かにも跋扈する賊どもを皆殺しにしてみせます」


「やる気があるのは十分だ。俺も本音を言えば此処からさっさと立ち去りたいと思っていた。張世平を常山に帰さないと支援してもらえないしな」


私達の意気込みに、ご主人様は頷きながら同意してくれた。

星が言う通り、私もご主人様に仕えて初めての戦となる。

無様な真似は出来ないし、絶対に見せられない。

ご主人様を依存させる為に我が武を奮おう。



●雄SIDE

張世平との商談を済ませ、俺も決意を新たにし、今は3人で馬を走らせて幽州・琢郡へと赴いている。

此処には巷の噂となっている黄巾賊が暴れ回り、民から尊厳や生きる糧を奪い尽くしているらしい。

張世平のお願いでもあるが、俺達の連携を確かめる良い機会でもある。


「主、ただいま戻りましたぞ。どうやらこの先の集落を根城にしているようで、凡そ500程度の賊を見つける事が出来ました」


事前に斥候として星を放っていたが以前思っていた通り、隠密や諜報活動も熟せるようだ。

賊の数も左程多くない。


「お疲れ様、星。おかげでこちらも把握出来た」


「なんの、それがしは当たり前の事をしただけですので」


「ご主人様、どうなさいますか?」


愛紗が俺に指示を求めてきた。

戦場では2人とも臣下として振る舞うと言っていた。

それは問題ないし、誰かが中心となって纏め上げないと烏合の衆と化してしまう。


「夜も更けてきた。闇に紛れるように距離を詰め、一気呵成に殴り込む。こちらは3人しか居ないから、手当たり次第に蹴散らせば大丈夫だ。ただ、弓持ちには注意し、声を張り上げて混乱を収めようとする者を優先して始末してほしい」


「御意」


「はっ!」



気配を消しながら賊の根城に近付いていく。

篝火を焚いているのか、こちらから動きが丸見えとなっている。

そのおかげで入り口に見張りらしき男が弓を手にしているのが見えた。

油断しているのか、あくびをしながら周囲に注意を払っていない。


「俺に任せろ」


小声で2人に告げると、頷いて任せてくれた。

近くに落ちている大きめの石を拾い、勢い良く助走をつけて振り投げる。

それは男の頭部にみるみる吸い寄せられ、グシャッという破裂音とともに後ろへ仰け反りながら即死したようだ。


「お見事です」


「弓が使えないからな。良し、一気に入り込み、蹴散らすぞ」


俺の後を追うように素早く駆け出し、念の為に見張りの男の頸を刎ねておく。

首が胴体から離れないと死んだと思ってはいけない。

それで1度死に掛けたからな。

思い出せだけで古傷が疼く。


「だっ誰!?」


こちらに気付いていた男目掛けて星は槍を突き出し、心臓を穿つ。

男は声を遮られるかたちで崩れ落ち、俺も片方の薙刀を構えて突貫する。

少し遅れて男が振り向くが、その時には愛紗が振るった一閃により頸を刎ね飛ばされている。

そこに勢い良く踏み込んだ俺は横薙ぎを繰り出し、纏めて2人の男の上半身を薙ぎ払う。


「てっ敵だ!!」


状況を飲み込んだ男が叫ぶが、次の瞬間には星によって頸を刎ね飛ばされた。

俺も数m先で弓を構える男に落ちていた槍を投擲し、後方の家屋の壁に突き刺す。

その直後に左から愛紗が飛び出し、直剣を構えた男を貫き、思い切り地面に叩き付けた。

何だか蛮族みたいに荒っぽいが、血が滾って滾ってしょうがない。

右斜め前方から駆けてくる男の胸ぐらを掴み、背負い投げをして頭部を踏み潰す。

篝火に照らされて光った矢を咄嗟に掴み、愛紗の背後から迫る男の眉間に突き刺して蹴り斃す。


「助かりましたッ!はぁああッ!!」


礼を述べながら青龍偃月刀を頭上で振り回し、囲い込もうとしている4人の頸を立て続けに刎ねている。


「はいはいはいはい~ッ!!」


星も怒涛の刺突を小刻みに放ち、前進しつつ死体の道を築いている。


「たった3人でよくもッ!」


顔を真っ赤にして叫びながら俺に槍を突き出す男の得物を掬い上げ、薙刀で鼻先から後頭部まで抉る。

俺は基本的に頭部しか狙わない。

心臓は外れる可能性もあるし、薙ぎ払うなら上半身ごとが好ましい。

誰が見ても即死している死体にするのが、俺なりの戦い方だ。


「ぐぇ!」


蛙が踏み潰されたような声を聞きながら迫ってきた男の頭部を踵で粉砕し、星と背中合わせにしつつ賊どもを各個撃破していく。


「中々やりますな、主!それがしが背中を預けたのは主だけですぞ!」


「俺も同じだ!上手い具合に合わせてくれて助かるよ!」


「私達はお似合いの夫婦ですからな!息もピッタリかと!」


「それなら、終わってから激しく抱くとするか!」


「お手柔らかに頼みますぞ!」


「私を除け者にしないでください、ご主人様!」


お互いに冗談を交えながらも次々賊どもを蹴散らし、そのまま入り組んだ道に突入する。

愛紗が除け者にされた事を怒り、憂さ晴らしをするかのように青龍偃月刀を振り回している。

・・・ちょっと怖い。

狭い通路の先には、弓を限界まで引き絞っているような男を2人を視認した為・・・


「伏せろ、星!」


「御意!」


反射的に伏せさせるのと同時に放たれた2つの矢を、


「止まって見えるぞッ!」


余裕を持って薙刀で薙ぎ払い、伏せていた星も上体を倒したまま素早く弓持ちの2人に迫り・・・


「穿てッ!!」


高速で放たれた刺突によって連続で心臓を貫き、一瞬で引き抜いた。


「賊どもが!あまり調子に乗るなッ!!」


背後ではドスの効いた愛紗の声に続くように男達の悲鳴が聞こえてくる。

振り向くのをちょっと躊躇うので、


「良くやった!」


「はいっ!ご主人様!」


背中越しに労っておく。

そして、


「残ったのはお前だけのようだな」


阿鼻叫喚となって逃げ散る賊どもを皆殺しにしながら、一際大きな家屋の前に立つ男に薙刀を突きつける。

既に男の周囲には星と愛紗によって10人程が肉片と化し、左右から挟み込むように対峙している。


「こっコイツら・・・たった3人で此処まで辿り着いたのか・・・!」


有り得ない!という表情を浮かべながらも腰から直剣を引き抜き、薙刀を払い除けてくる。


「手下どもの仇を討つッ!!」


勝ち誇ったような笑みで上段から振り下ろすが、俺は身体を少しずらして躱す。


「こんの野郎がぁあ!!」


確実に俺を殺せると思ったのだろう。

憤怒の表情で下段から振り上げようとするが、右手ごと右方向に薙ぎ払い・・・


「今だッ!!」


俺の掛け声に反応した2人が左右から飛び出し、ほぼ同時に男の横腹と右肩を突き刺した。


「ぎぃやああああ!!」


あまりの激痛なのか、顔を歪めて喚き散らしながら引き抜こうとするが、ビクともしていない。


「死ぬ前に名を名乗れ」


最期の慈悲として名を告げるように命令し、


「くぅ・・・!俺は、黄巾軍の、制圧部隊、隊長・・・甘洪だ・・・!!」


息も絶え絶えに名乗りを上げた。


「分かった。覚えておこう」


返事を返した直後に素早く薙刀を振るって頸を刎ね飛ばす。

それにしても、黄巾軍か・・・

賊だと思っていたのだが、まさか軍を名乗っているとは驚きだ。

それだけ組織的に動いているのか、それとも跳ねっ返りどもが軍を詐称しているのか。

一抹の不安だけが残った。


●趙雲SIDE

主や愛紗との連携を確かめる為に賊討伐に向かい、あっという間に一掃し終えた。

どうやら、私の眼に狂いはなかったようですな、主。

3人とも掠り傷1つもない完勝で、示し合せたような連携も出来た。

今まで誰かに命令されるのは嫌いだったが、主の命令は胸の高まりが抑えられない程に喜びを感じている。


「戦利品があるかもしれないし、住民が残っている可能性もある。少しだけ家屋の中を捜索しよう」


「ははっ!」


「御意」


今もそうだ。

自然と肯定の言葉が出てくる。

そこに躊躇や戸惑いもなく、心から忠誠を捧げているのを理解しているし、本気で一目惚れしているのは間違いない。

やはり私は武人でもあり、女でもあったか。

女としての幸せなど縁がないと思っていた。

だが、私は掴み取った。

好いた男との冒険は心が躍るじゃないか。

先程冗談を交えていた言葉は、嘘ではないですぞ、主。

主が私の身体も求めるのなら、喜んで純潔を捧げましょう。

既に、出逢った瞬間から身も心も捧げておりますからな。

それを直接伝えるのは些か恥ずかしいので、主から求めてくるのを待ち続ける。

ただ、ちょっと下着をチラつかせたり、胸を強調させてみたりして、主をその気にさせてみせますぞ。

ちゃんと艶本は入手済みですからな。

覚悟しておいてくだされ、我が最愛の主。

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