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同盟彼女。  作者: うめ
6/6

瑠璃川小里。

俺は店を後にし、早足で帰る。

あ〜、はやく漫画読みてぇ。嬉しくて笑みがこぼれる。


すると、前の方で年寄りのおばあさんが買い物袋を落としてしまった。中身は地面に散らばった。


困っているおばあさんを気にすることなく、さっそうと人は通り過ぎて行く。まるでそれが当たり前のように...。



そうだ、思い出した。これが現実だ。人間は自分が楽しければいいのだ。他人なんて関係ない。俺もそうだ。変わりたいとも思えない。俺は何一つできやしない...。



そう思いながら通り過ぎて行ったとき、誰かが横切った。とたんにふわっとしたいい香りがした。


「えっ」


後ろを振り返ると、一人の女の子が荷物を一つ一つ拾い集めた。


「大丈夫ですか?」


女の子は優しい笑顔で問いかける。


「まぁ、ありがとうね。」


おばあさんもとても笑顔になった。二人は笑いあっていた。




俺はその笑顔が頭から離れなかった。




翌日、高校で俺はある女の子を見ていた。



「ねぇ。」


俺は彼女に話しかけた。彼女は振り返る。


「あんたってさ、昨日俺に会ってたりする?」


彼女は少し驚いていたが、すぐ普通の顔に戻った。


「うーん...。会ってはないかな...。人違いだと思うよ!」

「そっか。昨日歩道で会った子同じ顔だと思ったんだが...。悪かったな。」



俺は振り返り、歩いた。


「なんで!なんであの時、おばあちゃんのこと助けてあげなかったの?」


やっぱりな。

俺は立ち止まった。



「どうせみんなそうしてただろ。」


「でも ─


「ッせぇな」


俺は小声で呟いた。


「え?」


「俺とはなしてたらあんた汚れちゃうよ〜」


俺は早足でその場を立ち去った。

あーもうっさいな、黙れ、黙れ....。




知ってるんだ、俺が間違ってることくらい。

悲劇のヒーロー気取って、逃げてることくらい。




平日に俺は久しぶりにアニメイタに行った。行きたくなった。

現実から逃げているつもりではない。だってここは現実世界。

俺にとって現実とは思えないくらい愛している場所なのに、やはり高校と同じ現実世界の建物なのだ。






また、あの子がいた。俺はずっとひっかかっている。なんだか気になってしょうがない。


「あのー。」


その子はビクッと肩を震わせ、振り向いた。


やはり帽子とマスクを身に付けている。


「なっ、ななっ、何ですか!?」


「聞きたいことあるんだけど」


彼女は黙った。


「お前ってもしかして ─


彼女は一目散に逃げていった。


「ちょっ、まっ」


俺はすごくイラッとした。


なんで逃げんの!



昨日と似たような翌日になる。

俺はまた誰かを探していた。


今日はやたらと避けられる。めんどくせー。


「おいっ!瑠璃川小里!!」


俺は大声で叫んだ。


「ひぃぃっ!!!!」


見た事のある反応をした彼女は、変な声を出した。


「ちょっと話がある。」


「は、はい...。」


廊下を歩く二人を見て、周りのヤツらはヒソヒソと話しているが、気にしない。

とにかく聞きたいんだ。


人気のないところで俺は立ち止まった。


「あ、あの〜。聞きたいことって何?」


「お前、一昨日と昨日アニメイタいたか?」


「.........。」


「誰にも言わないから、言う人いないし...。教えてくれ。というか、もう分かってる。」


「え...えとですね...。その....。」


沈黙が続く。






「そうです!あたしです!一昨日と昨日あなたのこと見ました!!」






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