小悪魔。
「よーまーにーいー?早く卵買ってきてよ〜」
恋葉がこわい顔で耳たぶを掴んでくる。
「あ、はい...。すいません。」
「急いでね♡」
我が妹よ、いつからそんなに小悪魔化したのだ。
はー。だらしねー兄だな...。けど、料理は恋葉得意だから、頼んでもいっかな。俺だって料理くらいはできるけど!
父さんは海外で働いてるから、たまにしか帰ってこれない。だから、俺らはみんなで協力しながら生活している。女ばっかだけど、まぁ楽しいからいい。でも、なぜかみんな俺に似ず可愛いんだよなー。不思議だ。
鼻歌を歌いながら歩く。この曲好きなんだよなぁ。アニソンだけど、この歌手の人、声が透き通っててきれいだ。一人カラオケでも行こっかなー。一人で失笑する。
ドンッ
俺は尻もちをついた
「いってぇ」
「キモオタくんだぁー!なんでここにいんのー?」
うざったらしい三人組が絡んでくる。お前ら今わざとだろ。めんどくさいなぁ。一番イケメンなやついるけど、なんであいつ何も言わねえんだろ。
「あー、卵潰れちゃったねぇ。」
「ごめんねぇ??」
ニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる。
どうしよっかな。やっぱ一番の選択肢は......
逃げる!!!!!
「おい待て!」
走りまくった
ふー。きっつ。俺の逃げ足速度なめんなよ。ほんとに、今の社会はどうなんってんだか。あんな連中しかいねーのか?高校生って...。まぁ俺が言えることじゃないけど。もっと嘘の青春を楽しみたまえよ。
「ただいまー」
本日二度目。
「にぃー!!おかえりぃ!」
あー、もう、可愛い。俺の天使よ!
「よま兄さん?その何個か割れてる卵は何なのかな?」
笑ってる。笑ってるんだけど...。
俺には分かる。怒ってるっ!
「恋葉ちゃん、あのね、これにはわけがありましてね?」
「ほほぉー、どういう? 朝に何回も言って、忘れてきたあげく、次は潰しちゃってるんだよ?
どこに君の言い訳を聞かなきゃならない根拠が あーるーのー?」
「転んじゃったの。てへぺろ☆」
「ッざけんなーー!!!!!」
俺はものすごい衝撃を受け、一瞬気を失った。
我が妹よ...。
いつそんな力を手に入れたんだぁ!
俺は半泣きになってしまった。
「ふぅん。転んじゃったんだぁよまにぃは。」
「はい」
「それでこの愛しの卵ちゃんがこんな悲惨な状況に?」
「はい」
俺は正座で説教を受ける。
「ねぇ、それってほんとに転んだの?」
「えっ?も、もちろん!」
「へー。」
恋葉が目を細めて顔を近づけてくる。
「恋葉ちゃん。何か疑わしいことであるのかしら。」
「よまにいってさ、友達と喧嘩してるの?」
「なぜにいきなりっ!?仲良くしてるさぁ!アハハハハハ」
「じゃあ、なんでよまにいって最近ずっと家にいるの?なんで誰か連れてきたり、誰かの家に行ったりしないの?下校時間通りに帰ってくるじゃない。なんでメールとかこないの?今どきの高校生、メールしないの?」
うぅ。どうしよう、恋葉意外なところで鈍感になるんだな。俺まず友達いないんだよ。前まで帰りが遅かったのは、その勘違いをなくすために、川で時間潰してただけなんだよ!でも最近、あの三人組に見つかってからかわれたからだよ!あー、場所変えればよかったぁ!いつもキモオタと笑われ、いつも一人でトボトボと帰ってきていますなんて言えるはずねーだろー!?
「通知OFF!だよ☆家には行かない主義だよっ☆」
「ほぉー?嘘っぽぉい。もしかしてー、さっきも喧嘩相手に潰されちゃったとか?」
「えぇ〜、そんなひどいことしな〜い」
「じゃぁ━」
「にぃーは友達いないのぉ?」
「......」
「......」
くうかぁぁぁぁ!!そこだけは触れてほしくなかったのに!まさかのくうかぁ!
「ハッ...!」
ハッじゃないハッじゃ!恋葉ー!違うんだー!お願い言わないで...。
「よまにい、そうだったの?」
目がうるうるした空歌と、口をポカンと開けている恋葉...。
終わった....。
兄ちゃんが...、友達いないなんて....。そんなの知っちゃったら....
はぁー、これからどうしよ?
なんかコメディーになりました...(笑)