この世界で唯一。
やっと学校終わった〜。あーぁ、今日も退屈だったな。
下校時間、ゾロゾロと生徒達が帰っていく。
「じゃーな、キモオタくん!」
「ひど〜い」
二人の男女がヘラヘラ笑いながら俺を見ている。はいはい、さよーなら。早く帰って勝手にイチャイチャしてろ。
ぼーっとしながら並木道を歩いていく。
なぜ俺は「オタク」と言われるようになったか。それは多分これだな。俺のバッグにはアニメキャラのストラップを何個かつけている。きっとこれが原因なんだろう。まぁ、全然気にしてないけど。
あっ!そうだ、今度アニメイタに行こう!その店はアニメグッズがたくさんある。漫画も、CD・DVDも、ストラップも、何種類ものグッズが並んでいる。アニメ好きにとってはとてもありがたい所。あー、行きてぇ。
ようやく家に着いた。
「ただいまー」
玄関のドアを開ける。
「にぃー!!おかえりーー!!!」
「くぅただいま!ちゃんと宿題してたか〜?」
こいつは一番末っ子の空歌。俺の妹だ。
まだ小学2年生。
「よまにい。卵買ってきた?」
「あ...。忘れちゃった」
「はぁ?バカにい!!あんなに言ったのに!」
「ごめんってば。」
怒りながら口を膨らませてるこいつは、長女の恋葉。中学2年生。
「あれ?きりは?」
「きりかなら自分の部屋にこもってるよ。どうせまたゲームか何かじゃないの。」
またか。次女の霧香は、人との関わるのがあまり好きじゃない。そこだけは俺に似てる。
リビングに行き、その奥の和室を開ける。
「母さん、ただいま。」
母さんの写真の前で座り、手を合わせつぶやく。
病気で母さんが死んだのは、5年前。妹たちも小さかったし、俺だって中学校に入ったばっかりだった。だから、多分俺が一番、母さんのことを鮮明に覚えているだろう。妹たちは、あまり母さんのことを知らない。特に空歌は、まだ4才ぐらいだったっけ。小さい頃から母さんを失うなんてな...。
だから俺は、みんなを守りたいなぁって思う。妹たちにとって、必要な兄になりたいなって。
なれる自信はあんまないけどな。こんな俺だし。
でも...。
家族。
それは俺にとって。
多分この世界で唯一、大好きで、守りたいものなんだろう。
どんどん長くしてくつもりです(^^)