本章‐3
ああ、もうすぐ死ぬんだなぁ。
仕方ないけど、辛いなぁ。
怖くはないけど、でも哀しいよ。
最近になって、‟其れ"がその世界を創り始めているのが分かった。
どうして分かるのか、霊感持ちでもないのにそれだけははっきりと分かる。
でも怖くはない、なぜかとても落ち着いている。
あれから色々なことがあった。
彼は‟其れ"の言った通りただ一人の存在として、私の全てを愛してくれた。
時々すれ違ったり、考え方の違いや価値観の違いで言い争ったこともあるけれど、お互いを嫌うような事だけは決して無かった。
いつだったか、私が訳の分からない恐怖に震えていた時、彼は心も体もその魂さえも私に寄り添って、ただ静かに私の全てを抱きしめてくれていた。
仕事でいつも世界中を旅している彼に、私がたまらない寂しさを覚えた時も、ほんの少しの時間でもメールや電話で声をかけてくれて、出来る限り私が寂しくないようにと気を使ってくれた。
やがて私もそんな彼を心底愛しいと思うようになり、やがて私たちは結婚した。
結婚してからも彼はほとんど家にはおらず、相変わらず世界中を飛び回っていた。
そんな彼の代わりに私の傍にいたのは、やはりあの時の友人だった。
霊感持ちだと言っていた友人は、本当に全てを感知するらしく、彼や私の身に起こった事を、私たちが相手に伝えるよりも早く知ってしまっているようなところがあって、それが時々私たちを苛立たせたりしたのだけれど、それでもそんな変わった友人の存在は、私たちの大きな支えになってくれた。
ただ、子供が出来た時に私達より先にそのことを知っていたのには、正直悲しくなった。
だって私、その友人の言葉で病院に行って検査したんだよ?あんまりじゃない?
私が死後どんな世界に行くのかということを初めて彼に話した時、かの友人は「お前、そんなことも知らなかったのか?」と言って、彼をずいぶん怒らせていた。
友人としては、その位の事は知っていて付き合うとか結婚するとか言っているのだと、当然のことのようにそう思っていたらしい。
その時彼は、それではあまりに惨いと言って、怒りに震えていた。
私もそれを知った時には、正直喜ぶべきか悲しむべきかと悩んだから、彼の気持ちは解らないでもない。
それでも今は、彼と出会い心の底から愛し合って、これ以上ないくらいに幸せだと思っているし、その世界が安らかなところなら、永遠に閉じ込められて生きるのも、そんなに悪くはないのかな?なんて思っている。
まあ行ってみないと分からないけれども。




