本章‐2
あれから私たちは付き合っている。
どうしてそうなったかというと、あの時の‟其れ"が残した暗号を、彼が持っていたから。
短い言葉だけど、そっくり同じ言葉を見ず知らずの他人に言える人は、そうはいない。
たぶん、全世界全人類の、すべての時間の中でも、彼一人だろう。
それくらい特別な言葉だった。
二人で一つの言葉を言い合った時、私たちはそれぞれの記憶が真実で、お互いがその定められた一対だということを確信した。
あの時私たちを引き合わせた彼の友人は、彼にずっと不思議な気配を感じていたらしい。
なんだか分からないけれど、何かとてつもなく大きな存在と、それに共鳴し守られているような。
それが何だか訊ねても決して教えてくれない友人に、ただならぬものを感じてはいても、自分には知ることのできないもどかしさをずっと抱えていたのだと、あの日話してくれた。
あの頃の彼は焦っているように見えたという。
そのことについて彼は、求める者に巡り会えず、ただひたすらに求め続け、精神を病み始めていたのだと言った。
そんな時、幼馴染の企画したコンパに半ば無理やり参加させられた友人が、私に出会ったらしい。
彼の纏っている気配とよく似た気配を持つ私を、その友人は直感的に天の定めし一対だと思ったそうだ。
何としてでも早急に二人を引き合わせなければと、それはもう必死で私を口説き落としたと、楽しそうに笑っていた。
私の纏っている気配というのがどういうものなのか、気になって訊ねてみると、彼と同じとてつもなく大きな存在に、何よりも愛されて守られている、そんな気配だと言った。
私はその時改めて、あの三か月半の出来事が紛れもない事実なのだと知った。
彼の方はどうしてあの言葉を知っていたのだろう?
そう思って訊ねると、良くは分からないが、いつの間にか確信めいて自分の中に存在したと言う。
ただ一人の人に巡り会うことも、その人をその人として確かめるための暗号も、気付いた時には自分の中に在ったのだと。
ただあまりにも常識はずれで突拍子もない事なので、たとえ親友でも言えなかったらしい。
その代わりその相手を探し出すために、出来得る限り世界中の人々に出会える方法を、と今の仕事を選んだようだ。
だから語学力スゴイのか。




