表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術屋のお戯れ  作者: 神無 乃愛
魔術屋と巨大企業
58/63

葛葉の企み

 急きょ呼び出された葛葉は、話をきいて開いた口が塞がらなかった。

「樹杏伯父様ももう少しご自身で説明する事を覚えていただきたいのですが」

 いや、この話に関わらないよう、逃げた夏姫をとっ捕まえた杏里も杏里だが。

「あそこにいる面子に言っても無駄」

今回の一件だけでここまで悟る夏姫がある意味一番凄いのだが、葛葉はあえて知らぬふりをする事にした。

「わたしが呼ばれた理由は……」

「多分、問題になっている、ナントカって家のことだと思う」

ナントカではなく椎名です。そして立場上椎名の家には詳しくないです。そこまで思ったところでふと思い出した。

多分、今回の問題をここまで大きくした女性(、、)に心当たりがあるではないか、と。


「後日、とある女性を紹介いたします。わたしの一存では紹介できないのが、残念ですわ」

会わせるには、父親を通じて祖父に話を持って行き、そこで承諾されない事にはどうしようもない。

「あの女狐、そこまで偉くなってんの?」

「といいますか、父があまりわたしと関わって欲しくないようで」

「俺と? 夏姫と? それとも女狐、もしくは機密とか?」

杏里が楽しそうに言う。

実際、葛葉の父親である青葉は、樹杏、杏里兄弟……特に杏里とかなり反りが合わない。そして、夏姫ともあまり関わって欲しくないようである。


とどのつまりは。

「杏里小父様がおっしゃった全てのことに『当てはまります』とだけ答えますわ」

「蒼葉らしいよ」

くつくつと楽しそうに杏里が笑っていた。


「ともあれ、あの女狐には俺が時機を見て会わせる。とりあえず、夏姫(こいつ)に禁忌の呪術の定義を教えてやってくれ」

「高く、つきますわよ?」

「さすが弥生さんの娘だ。……いくらだ?」

二人の間にほんの数秒だが、緊張した空気が流れた。


夏姫にはその数秒が数分どころか数十分にも感じたのだが。


「夏姫さんに似合いそうな服をリストアップしましたのっ!! 」

バッグから出したスクラップを見せつつ葛葉が叫んだ。

「どれを買えと?」

呆れたように杏里ぼやいた。

「全部、といきたいところですが、ここからここまでをっ!!」

「他は誰にたかる気だ!?」

金額が半端ないぞ!? と突っ込みを入れているが、そういう問題ではないと思ってしまう。

「兄様にここからここまでで、白銀の呪術師様に残りを」

「お前は阿呆か!? 婚約者に別の女物の服を頼む奴がどこにいる!?」

「ここにおりますっ」

「……もういい。今回は全額藤崎が夏姫(むすめ)の為に貯めていた金から出す。あいつらにこのスクラップは出すな」

ドヤ顔で言い放った葛葉に、杏里が負けた。


……かくして、夏姫の趣味に合わない服は、ウォークインクローゼットを占領するほどの量で増えることになったのだった。



「頼む人、間違えていませんでしたか?」

「……言うな。俺も思った」

買い物に付き合わされた杏里と夏姫の言葉は、葛葉には届くことがなかったという。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ