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魔術屋のお戯れ  作者: 神無 乃愛
魔術屋と巨大企業
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契約内容変更


 夏姫が出て行く姿を見て、聖は苦笑した。

 あれでは紅蓮が興味を示すだけだと。


 天邪鬼な子供(紅蓮)は、自分に興味が無いと分かると尚更構いたがる。おそらくはそれが悪循環となり、夏姫に邪険に扱われるだろう。

 そんなことはどうでもいい。夏姫がいない今、報告に入らせてもらう。

「それで、四条院で管理している『門』の様子は?」

 四条院に黒龍含め協力している龍族を「四龍」と呼ぶ。協力している理由は「異界への門」を管理するため。そのためだけに特化した特殊な呪術を四条院に連なる者たちは使う。

 他にもいくつかの「門」があり、世界各国に散らばっている。それぞれがヒトならざるものたちを「協力者」として傍におき、管理している。

 そして、そういった管理している一族と協力者を「監視」しているのが白銀の呪術師こと、聖である。

 現状、最大の問題は四条院家が管理する門だ。

「不安定であるが、何とかもちこたえそうだ。早く『適合者』を使えるように……」

 四条院当主が聖に向かって言う。それだけで十分だ。

「お前の言いたいことはそれだけか? 最初から夏姫に目をつけていたと言えばいいだろう」

 あえて夏姫の名前を呼ばないのか、それとも紫苑に遠慮しているのか。

 後者だとすれば、紫苑の行動に謎のみが残る。「適合者」として夏姫を扱いたくないのなら、あの自分勝手な養母のそばからさっさと夏姫を引き離して海外にでもやればよかったのだ。

「白銀様……」

 葛葉が不安そうに声をあげた。

「まぁ、私には関係がないがね。これから紅蓮と術式は組んでもらうよ。夏姫は誰かに術を合わせるということがかなり得意なようだ。

 そちらから異存は?」

 誰一人答えない。ならば紅蓮とその「守役」を促して帰るだけである。


 他にも数件用事を済ませて店に戻ると、シャツとジーンズに着替えた夏姫がいた。

「早かったね」

「携帯の解約が出来ないみたいだったから」

「?」

「携帯の名義、十子さんだった。だからあたしじゃ無理なんだって」

 そこまで言うと、夏姫は聖の後ろを見た。

「君としては不本意かもしれないが、これから術式は紅蓮と組んでもらう」

「で、その男の後ろで不機嫌そうな顔をしている男は?」

九条 疾風(くじょう はやて)。紅蓮の『守役』になる。ボディガードのようなものだと思っておけばいい」

 紹介が終わるなり、夏姫は紅蓮と疾風から興味が失せたように、顔をそむけた。

「お前は自分の立場を分かっているのか?」

 紅蓮が不服そうに言う。夏姫はそれすらも無視して、店を出ようとしていた。


 それを当たり前のように疾風が止めた。


「離してもらえませんか?」

「あなたが逃げそうでしたので。紅蓮様の話を聞いていただきましょう」

 疾風が高圧的に夏姫に言った。

「必要ありません。福利厚生は四条院コンツェルンに基づき、今住んでいるマンションは寮扱いで月額二万だけ払えばいいんでしょ?」

「夏姫、その話は誰から聞いた?」

「さっき、藤崎さんの知り合いが教えてくれたから」

 聖の疑問に、夏姫はあっさりと答えた。まさか杏里が出てくるとは。

「病院で会って教えてくれた。携帯のこともその人から聞いた」

「叔父貴が?」

 驚愕した疾風から己の腕を抜き、夏姫は扉へと向かっていく。

「待ちなさい」

 思わず扉を魔術でふさいだ。

「話はまだ終わっていないよ。福利厚生と住まいについてはその通りだが、他の部分も説明させてもらうよ。

 週休二日制、これは以前と変わりない。そして月、水、金に関しては四条院コンツェルンへ行き、紅蓮の秘書をしてもらう。残り二日がここで店番兼、魔術の勉強だ」

「契約内容が最初と違うんだけど」

「気にするのはそこかい?」

「スーツもない」

 相変わらずずれているとしか思えない。

「服のサ……」

 服のサイズを聞こうとした紅蓮が倒れた。おそらく蹴りだろ。

 危険人物と判断した疾風が夏姫を押さえ込んだ。

「変態をこれ以上増やして欲しくないんだけど」

 押さえ込まれてもこの反応とは。聖は思わず笑った。

「スーツは紅蓮が用意してくれるようだ。私から夏姫のサイズは伝えておくよ。来週いっぱいは色々あるから、店の方に来てくれ。再来週から先ほど言った勤務形態になる」

 呪術をあわせるのは、行き当たりばったりでいいだろう。その方が面白い。

「疾風、夏姫を離してもらえるかな? 先ほどの反応は夏姫にとって当然(、、)の反応だ。これから先、その程度で押さえ込まれては困る」

「……善処いたします」

 悔しそうに言う疾風から夏姫は離れた。


 扉が開くのを確認して夏姫は出て行った。


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