6
さわらぬ
“熊さん”に祟り無し。
これ、とぉーっても重要なキーワードだよ!
テスト問題にしたい位、大事な言葉だからね!!
ちゃんとメモ出来た?
大丈夫?
忘れたらダメだよ。
忘れちゃったら〜、大変な事になっちゃうんだからね。
その時は覚悟してね。
僕?
僕は既に体験済だよ。
それはもう、ナチュラルな動きで調教(教育)されちゃいましたから。
えへへ。
だから不機嫌な“熊さん”の顔を見ただけで、ほぼ条件反射の土下座しちゃいます。
それも脊髄反射だから速いよぉ〜。
土下座スピード・・・。
あは・・・今の僕、魔王として、かなりマズイよね。
もう一族(皆)の前には立てない気がする。
まだ、一度も前に立った事無いけどさ…。
さて、そんなグダグタな魔王(僕)の前には、熊さんと馬車で一緒だった魔族(一族)のお兄さん、それと猫科獣人の女の子が居るんだよ。
何で4人一緒にいるかと言うと、今後の身の振り方を話し合うんだって。
そんなの必要なのかな?
僕としては、勝手にフルフル身体振ってれば良いと思うんだけど。
僕は振らないけどさ。
んで場所はね、僕が待ちぼうけしてた部屋よりも、少し広い部屋に移って来ました!
移動中、ちょっとドキドキしてたんだ。
やっとグレーの部屋から脱出しての新天地だもん。
ワクワクしながら開いたドアの向こうを覗いて、僕、ガッカリしちゃった。
だって、ちょっと広いグレーの部屋だったんだもん!!
あぁ〜、もう!!本当に誰の趣味だよ!?
絶対、僕に喧嘩売ってるでしょ!
ん?
なっ、何でしょうか?
“熊さん”
その無表情が怖いです。
その視線がグサグサ突き刺さって心がズキズキ痛いのですが!?
あぁ!!
もしかして、このグレーの趣味は“熊さん”でしょうか?
そうなんですか?
そうなんですね!!
はあぅっっ!!!
スイマセン!!
スイマセン!!!
魔王(僕)ごときが、ケチ付けてゴメンナサイィー!!!
平に平にお許しを〜!!!!!
しっかり床に額を擦り付けて、ザ・土下座を実演中の僕・・・。
えっ?情けない?
もうそんな事、僕は気にしないよ。
だって走馬灯は一度見れば充分でしょ。
もう二度と、走馬灯(そんな物)見る気は無いのだよ。
ハッハッハ〜!!
おや?何か暗くなった?
ん…やっぱり暗くなったみたいだ。
あれ?そう言えば僕以外にも3人いるはずなのに…此処、とぉーっても静かな感じなんだけど。
気になっちゃって、気になっちゃって僕、落ち着かないからね、少しだけ顔上げて、そぉ〜っと様子を見てみる事にしたんだよ。
そしたらね、
“んんー?お前、何やってるんだ?”
って熊さんの声が!!
いや、何って土下座してます…。
反省の意思を見せていたんだけど、熊さん、気付いていませんでしたか…。
そうですか。
もしかして僕、土下座損ですか?
・・・・・・。
何とも言い難い気分で顔だけ上げたら、至近距離に熊さんの顔が!
ちっ、近い!
熊さん、顔、近すぎ!!!
えっ!何ですか?
ニッ!!って、ニッ!!って
その笑顔は何?
“あぁ。”
って、納得顔…?
“何を必死に隠してる?”
はい?
イエイエイエイエ!!
何も、なぁーんにも隠して無いです。
僕はオープンだよ!
魔王だって事も秘密にしてないもん。
だから、ブンブン目一杯首振って否定したんだよ!僕!!
でも熊さん、一段と良い笑顔でニッって、そんで白い歯がギラッて・・・。
そしたら僕の背中をゾワゾワってして何かが駆け抜けたんだ。
後から分かったんだけど、この時の感覚って“悪寒が走る”って表現するんだって!!
僕には見えなかったけど、悪寒ってどんな生き物なんだろう?
走るんだから、やっぱり足が有るんだと思うんだ。
人間界では余り見掛けないけど妖精種の内の一種かな?
あれ?少し話が反れちゃったかな…。
とにかく、ゾワゾワする感じが治まらないまま、僕は熊さんと合わせた視線を外せずにいたんだ。
そんでね、トン!って、トン!って肩を叩かれたって思ったら、僕、宙に浮いてました。
うわぁぁーー!!
ポーンって軽く放られて、ジタバタジタバタしてる内に熊さんの手元にリターン。
だから僕は、ドサッ!となって、グエッ!!と唸った。
もしかして……僕って、投げやすいのかな?
そう言えば魔王城(お家)の門番にもポーンってされたんだった。
って、ちょっとだけ、現実逃避しようと僕頑張ったんだけどね、ダメだったよ。
現実って厳しい。
熊さんが掴んだ場所はね、僕の服の襟首なんだよ。
この服ってね、僕がぶら下がった位では絶対に破れないんだ。
めちゃくちゃ丈夫に作られた特別製の魔王服。
んで、僕が何を言いたいか分かる?
皆は、もう分かるよね。
でも、“熊さん”はね、気付いてくれないんだよ!
今、僕の首が締まってる事に!!
ググゥって服が首に食い込んでるの!!
足が地に着いてないの!!
だから、苦しんだってば!!
もぉ、勇者でも魔獣でも村人Aでも何でも良いから誰かタスケテ〜。
2回目の走馬灯上映中に僕は助けられました。
“おっと!?スマンスマン、大丈夫か?”
じゃないよ熊さん!!
いくら魔王(僕)だって、今回の調教(教育)は本当に危なかったんだよ!!
もうちょっとで、魔粒子に変換されちゃうところだったんだからね!
プンプカしている僕を何故か熊さんは不思議そうに見てたんだ。
だから、
あっ、あれ?何か違う?って疑問が浮かんだんだよ。
そしたらグワングワン頭を揺さぶられて……撫でられて、
“俺は教育なんてメンドクセー事する柄じゃねーよ!ガハハ!!”
だって・・・。
調教(教育)なんかしてない?
えっ…だって、さっきの部屋で僕に《頭突き》かまして《蹴り》かまして《投げ》つけて《関節》極めてたよ。
これ、調教(教育)だよね?
はい?
違うの?
寝惚けてただけ…!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
えぇっと、つまり、半分寝てた人に僕は負けちゃって、調教(教育)されたんだって勝手に思い込んじゃったって事?
えっ?
そう言う事なの!?
はっ…恥ずかしぃ〜!!!
お願い!!
誰か僕に隠れる穴をください!!




