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訪れし者を拒む理なる6色の壁。
天に示すは純真なる御心の白。
地に伏すは寛容なる芯堅き黒。
求め来たる者よ!
我に捧げよ!!
理に挑む強き心を!!
更なる勇気を!!
さすれば、道は開かれたり!
その真眼に写りしは異界に繋がりたる新たなる扉なり。
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なんて思わせ振りなセリフを言ってみた魔王です。
言ってみて分かったんだけど・・・、思ってたよりも、コレって恥ずかしいね。
え?
聞いてる方だって恥ずかしい!?
そ・そうなんだ。
ごめんね。
でも、苦情は一切受付無いから!!
だって、一度は言ってみたかったんだもん。
えへん!!
で、結局、何が言いたかったのか解った?
え・・・!
あんなので分かるわけ無いだろう………って酷い。
僕、ほんとは繊細なんだぞ。
はぁ〜、まぁいいや、仕方無い。
あのね実はね、冒険者ギルドに足を踏み入れたぞぉー!!って事を言ってたんだよ!
一応、言っておくけど、僕が足を踏み入れたんだからね。
別の誰かじゃ無いから!!
心が砕け散るかと思った程、過酷だったんだよ。
・・・僕には。
はぁ〜………。
さて、そのギルドの中なんだけどね、至って普通な感じだったよ。
僕としては、今、この事実が一番嬉しい。
中まで“アンナ感じ”だったらどうしよう!って僕、本気で心配してたんだ。
でも僕の予想を良い感じで裏切ってもらえて本当に良かったよ。
んで中はね、木の温もりがい〜っぱいのログハウス風になってるんだよ。
まず入って直ぐ目につくのは“掲示板”って看板掲げた大きい板が何枚か並んでる場所。
その前には多種多様な人達が、いっぱいいっぱいゴチャゴチャになって集まってるんだ。
何が良いのかなぁ〜?
皆一枚の“掲示板”に群がっちゃってて、其処だけキュッキュウで窮屈そう。
他にも空いてる場所があるんだから、ぐいぐいオシクラマンジュウしなくても良いのに〜。
で、そのオシクラマンジュウの人達なんだけど、表情は皆バラバラ。
ヘラヘラ〜ってしてたり、ムスゥゥ…ってしてたり、オデコにムギュって皺作ってたり、ポンッ!!って頭にお花が咲いてそう顔してたりしてて色々なんだよ。
だた見てるだけの僕は楽しんだけどさ・・・何なんだろうね、この空間。
近々、百面相の競技大会でもあるのかな?
どうやって競うんだろう?
それに審査基準が気になる所だよね。
あぁ!!そっか!!
あの“掲示板”に百面相競技大会の色々が書いて有るんだ!!
だから皆、其処に集まってたんだね。
後で僕も見てみよう。
んで、そんな人達を通り過ぎた奥、右側にはテーブルと椅子のセットが幾つか。
反対の左側にこのギルドの窓口がある。
一番手前と次の2つが一般窓口。
そこには、今、くったくたになった緑のローブを着たオッチャンが、手をワタワタ動かしながらズット必死で何か訴えてる。
あー…、受付のお姉さんの笑顔がメチャ引き吊ってるよ。
その隣から3つ分は、依頼受付。
更にその隣の2つが依頼完了報告窓口 兼 売買窓口。
って、書かれたプラプラしてる物が天井からぶら下がってるんだよ。
僕みたいなギルド初心者にも、とぉーっても分かりやすいようになってるんだ。
その並ぶ窓口に筋肉達磨やら理知的眼鏡やらチビッコイのやら、色々並んでる。
手に紙、握り締めて理路整然と並んでる…。
見た目、無法者ぽいのに……誰も暴れない。
皆とってもお利口さん・・・って、お利口さん!!
ちょっと待って!?
これどう言うこと!?
普通、冒険者ギルドって何かしらの問題が必ず起こる場所なんだよ!!
従兄弟が持ってた本にちゃんと書いて有ったんだもん!
必ず出てくる柄の悪い三下冒険者は!?
ギルド名物の殴りあいは!?
高レベルで酒好きの怒らせると、めちゃくちゃ怖い美女冒険者は!?
ギルドの混沌は何処行っちゃったの!!!
って一人悶絶してたら、目が合っちゃいました。
はい。
それは、もうバッチリ。
ボン・キュッ・ボンって吹き出しがポン!って出て来ちゃいそうな綺麗なお姉さんと!
その美女がニコッて、ニコッて微笑まれました…。
はい…大変、美しいでございますデス。
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あのね、スッゴク綺麗なんだよ。
本当に綺麗な微笑みなんだけどね、でも、ひどく怖く感じるのは何故だろう…。