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初めまして!!魔王です。
いきなりですが、僕は困っているんです。
魔王城(お家)に帰りたいのに帰れません。
門前払いされました…。
僕は魔王だ!って言ったのに信じてくれないんです。
門番に襟首を摘ままれてポイされました。
シクシクシク……。
思い出しただけで涙が出て来ちゃった。
事の発端はね、僕がコッソリ魔王城(お家)を脱け出した事。
教育係のカイゼール・ドランが、余りにも口煩いから、ちょっと困らせてやろうと思ったんだ。
それに、お家の外に出た事が無かったから見てみたかったし…。
元々、遠くに行くつもりも無かったんだ。
お家の周りをクルリと2・3周お散歩して終わり。
う〜ん、まぁ、ちょっと時間が掛かっちゃったけどね。
だってガチガチ歯を鳴らすどす黒い花や枝を使って根元の雑草を抜く木等々、珍しい物ばかりだったんだから仕方無いよね。
で、満足した魔王(僕)はルンルンで魔王城(お家)に帰った訳なんだけど…。
何って言うか、どぉーも僕って魔王ぽく無いらしい。
威厳とか無いし、姿見たら思わず膝まづいちゃうとかいう魔王オーラ?ってやつも勿論始めから持ってない。
パッと見…いんや、多分じっくり見ても三下、所謂、エキストラにしか思われないんだ。
しかも僕は、前魔王が高齢になってからやっと出来た待望の一粒種だったから、とぉ〜っても大事にされたんだよ。
だから心配性になった前魔王は魔族(一族)達にも僕を見せなかった。
パパが選び出した信頼出来るほんの数人だけと会うことが許される。
と言う徹底ぶりだった。
そう僕は立派な箱入りなんです。
だから、魔王(僕)の顔を知っている者もめちゃくちゃ限られている。
して、勿論、当然の事として、門番は魔王(僕)の顔は知らない。
おかげで、シッシッって犬でも追い払う様な仕草で追い払われました。
流石にチョットだけ腹が立ったから、僕は魔王だぞ!!って言ってやったんだけど、しっかり鼻で笑われた。
門番は面倒臭げな態度で僕の襟首を掴むと、何気無い仕草でポイしてくれました。
人間界へ……。
空間を落ちながら、魔王(僕)は困っています。
魔王(僕)が魔王城(お家)に帰れるのは何時になるのかな?
かっ・帰れるよね?
誰か「帰れる」と言って下さい………シクシクシク……。