第二話 2
白昼堂々とサボりを決めた二人は、個人経営の喫茶店(潰れそうな)に入りコーヒーとメロンソーダを注文する。
もちろん、東雲さんがコーヒーで俺がメロンソーダだ。
・・・俺にコーヒーを飲ますならば角砂糖を三個は用意してもらいたい。もちろんミルクもコーヒーの三倍だ。
二人とマスターだけの重苦しい雰囲気の中、彼女は一口コーヒーを含むとゆっくりとまずは家と自分の事について話始めた。
東雲家は有名な寺社ではないものの生まれる家系には特殊な力を宿す者が多い。
その血を狙う多くの者たちがいる。
そんな東雲さんの血の力は、死んだものを受け入れ成仏していなければ本人と入れ替われる事らしい。除霊師や陰陽師などのように一時的に降ろしたり、使役したりするのではなくそれこそ本人になる能力。
イタコなどのように自分に降ろすのとは違い、言い方を変えるなら死者に体を捧げる能力である。
一族でも稀にしか現れない『使えない』血の力。
それはそうだ。
普通に考えれば死者を蘇らせる事はできるが、陰陽師や除霊師などは死者を扱う事から死と言うものを神聖なものとし、自然の死を尊いものと考える傾向が強い。
不死を研究した者もいるというが、自分の体でというのがほとんどである。
彼女の一族の『使える血』たる遠見の力、未来眼、死の予兆に比べればそんな力は使えない。
昔の人にとっては未来を予測する力の持ち主は神の子であった。その力を持つものは権力者になり、その力は絶対の力として多くの権力者に欲された。
今の世の中であっても未来を知る事は最強の一手となりえる力と言える。
それに比べれば東雲さんの能力は、本人が体を受け渡さない限り相手に体を乗っ取られる事はまずない。そして、一時的に体を貸す程度であれば別にイタコや除霊師などでも言葉を代弁できるので必要とはあまりされない。だから使えない血なのである。
「ここからが本題。」
彼女は唇を噛む。それは辛さからなのか悔しさからなのか俺にはわからない。ただ、自分ではどうしようもない耐えられない問題を抱えている事だけはわかった。
「私は今体を乗っ取られかけているの。」
「・・・どういう事だ?」
「目立つわよね・・・この髪。」
「・・・なにかの儀式に失敗した代償で?」
「いいえ、何も失敗をしてないの。まさか成功するとは思わなかったわ。」
「どういう事だ?」
東雲さんは赤い髪を一本抜く。
「ここまで赤い髪の人間なんて普通に考えていると思う?過去に生きていた幽霊を含めてもね。」